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秩序維持への覚悟示した
広島サミット
世界が直面するさまざまな課題を克服するため、日米欧が先頭に立ち、国際秩序を取り戻さねばならない。新興国とも協力を深め、着実に合意を遂行する必要がある。
広島市で開催された先進7カ国首脳会議(G7サミット)は3日間の日程を終え、閉幕した。
日本での開催は2016年の伊勢志摩サミット以来、7回目だ。最終日には、ウクライナのゼレンスキー大統領が対面で参加し、世界的に注目を集める会議となった。
採択された首脳声明では、「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序」を守り抜く決意を強調した。ロシアから侵略を受けるウクライナに対し、「平和をもたらすために必要とされる限り、支援する」と表明した。
G7首脳らがゼレンスキー氏を交え、揺るぎない連帯を確認した意義は大きい。各国に支援疲れが見える中、G7が支援継続への決意を示したことは、今後の戦局にも影響しよう。
戦後の国際秩序は、大きな岐路にある。国連常任理事国であるロシアが侵略に手を染め、国際社会は十分な制裁を講じられないままだ。こうした状況を放置すれば、秩序は失われ、それぞれの地域の安全保障に深刻な影響を及ぼしかねない。
ゼレンスキー氏は広島市で記者会見し、「ロシアが占領する領土の一部でも保持することを許されるなら、国際法は二度と適用されなくなる」と指摘した。当事国の言葉を、世界は重く受け止める必要がある。
戦争を終結させるためにはウクライナへの支援継続とともに、ロシアの戦争遂行能力を低下させることが不可欠だ。
ロシアに武器などを供給している第三国に対して、即時停止を求め、経済制裁の抜け穴を防がなければならない。
被爆地・広島でサミットが開催されたことは歴史的な意義があった。
初日には、核保有国の英米仏を含め、G7首脳がそろって広島平和記念資料館を視察した。
ゼレンスキー氏も資料館を訪れ、母国と広島を重ね合わせ、「ウクライナの街は資料館で見た写真の風景とよく似ている。街に残されたのは灰とがれきだ」と語った。
核兵器がひとたび使われば、凄惨な被害をもたらし、長く人々を苦しめる。核兵器の深刻な脅威と核軍縮の必要性が、各国指導者に改めて認識されたのではないか。
ロシアが核の威嚇を繰り返していることは、断じて許されない。核拡散防止条約(NPT)体制を堅持し、軍縮・不拡散の取り組みを強化していくことが不可欠だ。
G7首脳声明は、「グローバル・サウス」と呼ばれる新興国や途上国との関係強化も掲げた。
ウクライナ危機が長期化したことで、アフリカや中東などでは食糧難に直面している国が少なくない。食料や経済の安全保障の観点から、基盤が脆弱な国への支援を強化していきたい。
藤原 志郎(政治評論家)
(2023年5月25日付『朝雲』より)