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時の焦点<海外>

苦境のキューバ

「同盟国」はどこへ?

 支援が必要なこの時に同盟諸国はどこへ行ったのか? 現在、キューバ政府の胸中はこんな感じだろう。同国に石油を供給しようとする国には関税を発動する(1月29日・トランプ米大統領が大統領令に署名)という圧力など、トランプ政権の対キューバ政策が狙い通りに効いてきたのだ。

 同国の石油不足は深刻で、インフラの崩壊も進む。学校の授業も病院の手術もキャンセル。ホテルも閉鎖され、国際ビジネスや大使館は人々に早期出国か電気と水のない生活が長期間続く事態に備えるよう警告している。

 しかし、出国についてはそう容易ではないのが現状のようだ。政府は飛行家に対して、国内9カ所の飛行場で航空機の燃料補給はできない旨を公式に通告。その結果、主要航空会社のフライト削減やキャンセルに発展し、旅行客が取り残されるなどの混乱が起きている。

 例えば、カナダの航空最大手エア・カナダは2月9日からキューバ便の運航を停止する一方、キューバで立ち往生のカナダ人約3000人の出国のために“カラの便”を飛ばす。また、スペイン第3の航空会社エア・ヨーロッパは、マドリード―ハバナ便のルートに燃料補給のためドミニカを寄航地に加えた。

 興味深いのは、キューバの同盟国が実に素早く手を引いた事実。内心では手を引いていないのかもしれないが、土砂降りの雨の中で傘ひとつ差し伸べない同盟国というのも果たしてどうか。

 最近の動きの一つが、グアテマラはキューバの強制労働プログラムにはもう参加しない。同プログラムは、キューバが他国に医者や専門家を派遣し、現地の人々を使った後、そこでの収入は自分の懐にという具合で、奴隷労働と紙一重だ。

 保健協力協定もあったが、グアテマラ外務省は27年間続いた同協定を2026年で更新しないと発表した。

 ニカラグアのオルテガ大統領は中南米の「反米クラブ」の終身会員的な人物だ。キューバとは親密だったが、同国もキューバ人をビザなしで受け入れ米国などへ送り出す便宜を図ったエア・ブリッジ(空輸連絡路)を閉鎖。ベネズエラでさえ、フラッグキャリアのコンビアサ航空が、ジェット燃料の不足のため、首都カラカス―ハバナ―マナグア(ニカラグア)の飛行ルートを停止した。

 メキシコもキューバへの「人道的」な石油の供給停止を続けている。海軍は数トンの食糧と衛生用品を送ったが、豆と粉ミルクでは飛行機は飛ばず、発電の足しにもならないのが難ではある。

 一体、誰がキューバを苦境から救い出すのだろう。ロシアは「可能な援助に関しキューバと協議中」とし、中国も「キューバの主権を支援する」との態度を示した。

 だが、現実にはいかなる支援もまだない。石油タンカーはカリブ海に向かっていないし、軍事支援も援助資金も届いていない。両国ともトランプ氏の怒りを買うことを望んでいるとは思えない。いわゆる同盟国はキューバを救う態勢にはないということである。

草野 徹(外交評論家)

(2026年2月26日付『朝雲』より)

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