創刊70年を越える『朝雲』は自衛隊の活動、安全保障問題全般を伝える
安保・防衛問題の専門紙です

時の焦点<国内>

ミュンヘン会議

米欧の溝埋める役割を果たせ

 自国第一を掲げるトランプ米政権と欧州との距離が広がり、ウクライナを巡る和平交渉の行方も不透明な状況だ。日本は米欧との関係を強化し、双方の溝を埋める努力を続けねばならない。多国間の協力体制の構築にも努める必要がある。

 ドイツで、世界各国の首脳や外相、国防相らが参加する「ミュンヘン安全保障会議」が開かれた。主要なテーマとなったのは、ロシアのウクライナ侵略である。

 ウクライナと米国、ロシアは現在、和平交渉を行っている。安保会議に出席したゼレンスキー大統領は「米国は譲歩をロシアではなく、ウクライナの文脈で語ることが多すぎる」と述べ、和平交渉で譲歩を促す米国へのいらだちを示した。

 米国はウクライナに対し、東部ドンバス地方を非武装化するよう求めている。ドンバス地方を「自由経済圏」とする構想も浮上しているが、ウクライナとロシアのどちらの法制度に基づく経済圏なのかは、定かではない。このためウクライナは、領土や主権が脅かされるのではないか、と警戒している。

 侵略した側のロシアに「戦果」を与えるようなことがあってはならない。国際社会全体で、「力による支配」を許さないよう、ロシアへの圧力をかけ続けることが重要だ。

 日本は近く、北大西洋条約機構(NATO)によるウクライナ支援の枠組みに参加するという。米国製兵器や防衛装備品を購入し、ウクライナに供与することを検討中だ。日本が拠出する資金は、殺傷能力のない装備品の購入に限定される見通しだ。

 欧米には、ウクライナへの「支援疲れ」が広がっている。そうした中で日本が支援を強化することは理解できる。日本は、殺傷能力のある防衛装備品の完成品は輸出できないが、侵略を受けている国への装備品の供与は平和国家の理念と矛盾しない。迎撃ミサイルなどの輸出は検討に値しよう。

 一方、会議では米欧間の不協和音も目立った。昨年の会議では、バンス米副大統領が欧州のSNS規制を「検閲」などと批判。これに対し、今回、フランスのマクロン大統領は「子供たちの心や脳をアルゴリズムに委ねることが言論の自由なのか」とけん制した。

 ドイツのメルツ首相は、米国が主導した秩序は「もはや存在しない」と述べた。その上で日本や、インドなど新興国との協力を強化し、国際社会の安定を目指す考えを示した。

 日本と欧州との間では、英国、イタリアとの次期戦闘機の開発が進んでいる。こうした協力関係を広げていくことが大切だ。

 安保会議では、中国の王毅外相が、高市首相の台湾有事を巡る昨年の国会答弁に触れ、「中国の主権への直接的な挑戦だ」と日本批判を展開した。言いがかりにも程がある。茂木敏充外相が現地で即座に否定したのは当然だ。

夏川明雄(政治評論家)

(2026年2月26日付『朝雲』より)

最新ニュースLATEST NEWS