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朝雲寸言

 

 現在、人類が直面している百年に一度というパンデミックは今後の世界の在り方を大きく変えるだろうと指摘されている。

 変化のひとつは「神の不在」であるという。今般の災禍の原因を神の怒りや祟(たた)りに求める人は誰もいない。コロナウイルスは世界の研究者と医療従事者と一般市民にとって合理的な原因と結果が明らかな克服できる事象に過ぎない。それ故に多くの国でパニックは起きず、粛々とワクチン接種が進んだ。信頼できる科学的情報を広く共有することが重要であると理解したのである。

 もうひとつの変化は、緊急事態における「私権の制限」である。今般のようなパンデミックを防ぐためには個人の行動を一部制限する必要があると多くの人が論じている。ごく少数のルール無視、迷惑行為こそが感染を拡大させていると感じているからだ。緊急事態における私権の制限はこれまでの我が国において議論が避けられてきた課題だった。結論はともかく、少なくとも議論は始まることだろう。

 三つ目の変化は、静かなる「孤立主義」の台頭である。コロナパンデミックを過度のグローバル化への警鐘と捉える人は多い。最大のコロナウイルスの感染者数を記録した米国では社会の分裂が進み、孤立化が深刻化している。その他の国家も自国優先の施策が採られ、国連もWHO(世界保健機関)も主導権を発揮できないでいる。

 相互不信と対立の中、世界は緩やかな下り坂に向かっているのである。

(2021年10月28日付『朝雲』より)

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