『朝雲』は自衛隊の活動、安全保障問題全般を伝える安保・防衛問題の専門紙です。
朝雲寸言
防衛省が所在する市ヶ谷台の片隅に小さな石碑がある。その石碑に刻まれているのは「東京オリンピック支援集団司令部跡」の文字。1964年、7000人を超える自衛官が集められ、東京オリンピックを支援する部隊が編成された。
開会式で各国選手団を先導した防衛大学校の学生、国歌、ファンファーレを演奏した陸海空の音楽隊、そして上空に五輪のマークを描いたブルーインパルスは今でも多くの人の記憶に残っている。しかし、選手村の運営、ヨット競技、マラソンや自転車競技など、国民の見えない所で多くの自衛官が全面的に支援していたことはあまり知られていない。その細部については、渡邉陽子氏の『オリンピックと自衛隊』に詳しい。
1950年、警察予備隊が創設され、1954年に防衛庁・自衛隊となってからまだ日が浅い当時、多くの関係者が何とかして自衛隊を国民に愛される存在にしようと前向きに努力していたことが伝わってくる。その後1972年の札幌冬季五輪、1998年の長野冬季五輪と、自衛隊はオリンピックなどの国家行事を支えてきた。
スポンサーとボランティア全盛の現代のスポーツ大会において、自衛隊でなければ支援できない競技は少なくなった。一方でテロやドローン対策など自衛隊でなければできない分野の支援は拡大している。
2020年、半世紀ぶりの東京でのオリンピック。その日まであと530日余りである。
(2019年2月14日付『朝雲』より)
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