時の焦点 <国内>2008/8/14付
新テロ法案でなお対立
平木 公二(政治評論家)

臨時国会召集はいつ
 臨時国会のテーマや衆院解散時期など福田政権の運営方針をめぐって、与党内では、イヌの胴体(自民党)がシッポ(公明党)に振り回される事態になっている。
 公明党は、福田政権に「半身」の態勢を取っただけではない。自民党に選挙協力する立場を利用し、衆院の早期解散を求めた。公明党・創価学会にとって、09年7月に予定されている東京都議選は全国から選挙応援に入らせるほど重要な選挙だけに、次期衆院選から半年は離したいというのが譲れない一線らしい。
 公明党が政権入りして9年。昨今は「当初の与党効果も薄れ、福田政権は何をしているのかという不満が出ている」(創価学会筋)。内閣改造に後ろ向きだったのも、支持率が低迷する福田首相の手で衆院解散という流れができるのを嫌ったためだったとされる。
 しかし、首相が8月1日、内閣改造・党役員人事を断行し、麻生幹事長に象徴される「選挙シフト」を敷くと、公明党は一転、この人事に高い評価を与えた。太田代表は国会内で記者団に満面に笑みを浮かべ、タレントのエド・はるみをまねて両手の親指を突き出し、「グー! グー! グー!」と巨体を2回転させて見せたほどだ。
 太田氏は福田首相とウマが合うが、北側氏は、伊吹前幹事長(財務相)とソリが合わなかったこともあり、麻生氏なら、「話ができる」と歓迎している。しかし、麻生氏は、同じ時期に政調会長を務めた北側幹事長を除けば、公明党・創価学会に太いパイプがあるわけではない。
 しかも麻生氏は幹事長就任時に「国際世論は総じてイラクから撤収し、アフガニスタンへ増派という流れにある。日本だけ撤退というのはいかがなものか」という立場から海自のインド洋での給油活動継続の必要性を強調し、新テロ対策特別措置法改正案を成立させるため、臨時国会の召集は8月下旬が望ましいとの見解を示した。
 北側氏は、臨時国会は9月下旬の召集が望ましく、政府が検討する新テロ改正法案は提出−再議決を見送り、遅くとも09年の通常国会冒頭までに衆院を解散すべきだ、などと「内向きの論理」を一貫して主張している。これと、麻生氏の考えには齟齬がある。
 自民、公明両党は8月6日、幹事長、国会対策委員長らが都内のホテルで会談したが、臨時国会の召集時期などについては、結論を盆明けに持ち越した。臨時国会のテーマは、補正予算案の編成−提出問題を含め、いまだに定まらない。
 公明党は、矢野絢也・元公明党委員長が5月に創価学会を相手に名誉毀損に基づく損害賠償請求訴訟を起こし、その後、民主党などに国会招致を求められれば出席する意向を示していることに警戒感を募らせている。
 公明党が臨時国会の会期をできるだけ短くしたい本音は「矢野問題」に潜んでいるのだろう。

時の焦点 <海外>2008/8/14付
先鋭化する分離独立派
吉田 健一(外交評論家)

新疆・グルジア問題
 「平和の祭典」オリンピックが北京で開催されている最中、二つの流血事態が起きた。中国新疆ウイグル自治区クチャ県の連続爆発と、南オセチアをめぐるグルジアとロシアの戦闘。いずれも少数民族の分離独立問題の根深さを浮き彫りにしている。
 クチャ県では8月10日、県公安局に爆発物を乗せた車が突っ込むなど12カ所で爆発があり、警官も銃で応戦、警備員1人と容疑者7人が死亡した。4日に同自治区カシュガルで警察官16人が殺される事件が起きたばかりで、クチャの事件も北京五輪妨害を狙ったウイグル独立派のテロとみられている。
 雲南省昆明で7月下旬に起きたバス連続爆破事件の犯行を認めた「トルキスタン・イスラム党」を名乗る組織は五輪開幕直前、新たなテロを示唆するビデオ声明を出した。新疆当局は「独立派の動向をつかんでいる」と自信を示していたが、テロを防止できなかった。独立急進派にはイスラム聖戦思想が浸透しているとみられ、中国は今後も自爆テロという新たな敵に苦しめられそうだ。
 一方、グルジアからの分離・独立を目指す南オセチア自治州では7日、グルジア軍が州都ツヒンバリに進攻。ロシアが軍事介入し、グルジアの首都トビリシ近郊の空軍施設などを空爆、ツヒンバリの大部分を支配下に収めた。ロシア側によると、7日以降2000人が死亡した。分離・独立の動きはアブハジア自治共和国にも飛び火し、グルジア側が実効支配するコドリ渓谷に分離派側部隊約1000人が侵攻した。
 南オセチア問題はソ連崩壊前後の1991年末に表面化した。独立宣言したグルジアに対し、南オセチアはロシア領への編入を求め、武力衝突が勃発。1年半で2000―4000人が命を落とした。
 ロシアはその後、住民にロシア市民権を与えるなど南オセチア、アブハジア分離派との関係を強化した。今年2月のセルビア・コソボ自治州独立宣言は、両地域の分離独立への動きを先鋭化させた。これに対し、親欧米派のサーカシビリ・グルジア大統領は両地域の再統合を最重要課題としていた。
 分離派問題の背後には米国とロシアの勢力争いもある。米国は、ウクライナとともにグルジアを北大西洋条約機構(NATO)に取り込み、旧ソ連圏切り崩しの突破口としたい。ロシアは「国境にNATOが迫るのは安全保障上の脅威だ」(プーチン大統領=現首相)と猛反発している。グルジアの分離派問題が軍事衝突に発展したことで、米露は、米ミサイル防衛東欧配備問題に続く、新たな火種を抱え込んだ。