時の焦点 <国内>2008/7/31付
政治日程で与党内異論
平木 公二(政治評論家)

いつやる内閣改造
 政変の兆候なのか。次期臨時国会の召集時期、法案審議など国会運営をめぐる与党内調整が難航している。福田首相がこのまま内閣改造・自民党人事に踏み切れば、混乱は避けられない。
 与党内の足並みがそろわないのは、09年1月に期限が切れる新テロ対策特別措置法を延長する改正案、原油高対策などを盛り込む08年度補正予算案など、臨時国会で成立を図るべき案件が定まっていないからだ。
 新テロ法改正案の成立を重視する自民党の伊吹幹事長、大島理森国会対策委員長らは、衆院での再可決に2カ月を要するとし、6月当時から、8月下旬召集を主張してきた。福田首相もこれに同調し、公明党の太田代表も理解を示していた。
 これに対し、自民党の古賀選挙対策委員長は7月23日、都内で講演し、「新テロ法改正案(の再可決)には与党内にも温度差があり、国民の考えも支持と不支持で二分している。成立から逆算して臨時国会の開会を決めることには少し慎重であるべきだ」と述べ、伊吹氏らに真っ向から異議を唱えた。
 公明党の北側幹事長は24日の記者会見で、「私と伊吹幹事長との間では8月下旬(召集)という話は一度も出ていない」と述べ、自公両党内にそれぞれ異論があることが公然となった。
 伊吹氏は24日の大阪市内での講演で、新テロ法改正案について、「民主党が反対するという前提でリスク管理しておかねばならない」と反論したが、公明党の木庭参院幹事長は同日の衛星放送の番組収録で、「本当に臨時国会でやらないといけないのか」と牽制した。
 公明党は、民主党などに、創価学会と訴訟になっている矢野絢也・元公明党委員長を国会招致する動きがあることにも神経を尖らせている。
 さらに、原油高や食料品高騰を受け、参院自民党の青木前議員会長、尾辻議員会長らは「早期召集は野党に政府追及の場を与えるだけだ」との考えから、9月後半への先送りを求めている。
 このため、08年度補正予算案の国会提出についても、通常国会冒頭への先送り論もあって、調整がついてない。
 首相にとっては、臨時国会の戦略が決まらないと、内閣改造の展望も開けないことになる。
 豪州訪問中の大島氏は25日、「首相は『7月末までには政策課題を決めなくてはならない』と言っていたが、7月末が来る。改造をやるかやらないか、話はそこからだ」と記者団に語った。
 内閣改造は、次期衆院選の戦略にも直結する。
 古賀氏は自身が選対委員長を引く意向を示し、後任には麻生前幹事長を推す考えだ。選挙区調整はほぼ終了しており、今後は麻生氏を「選挙遊説委員長」として活用する作戦だという。
 さまざまな思惑が渦巻く中、首相の決断時期が迫っている。首相が何をしたいのか、人事がそれを物語るはずだ。

時の焦点 <海外>2008/7/31付
メディアで巧みな演出
伊藤 努(外交評論家)

オバマ候補の外遊
 米大統領選で民主党候補指名が確定しているオバマ上院議員が7月中旬から下旬にかけて中東と欧州を駆け足で歴訪し、不慣れと指摘されている安全保障・外交分野でもオバマ氏の持ち味である「そつのなさ」を見せ付けた。イラクやドイツを含む各国首脳と渡り合い、歴訪のハイライトとなったベルリン中心部での演説には20万人の市民が集まるなど、海外で好意的に受け入れられる指導者像を見事に演じた。共和党候補に内定しているマケイン上院議員は「私は欧州の指導者といい関係を築いており、中東の指導者ともすでに会っている」とオバマ氏への対抗心をあらわにしているが、11月の本選挙に向け、民主、共和両候補の舌戦はボルテージを上げていきそうだ。
 オバマ氏外遊の狙いは誰の目にも明らかだろう。政治家の経験が少ないことに伴う未熟さや外交に弱いといった見方を払拭すると同時に、アフガニスタン、イラク訪問が物語るように、対テロ戦争、軍事政策でも指導力を発揮できることを示すためだ。また、ドイツを含む欧州主要3カ国訪問は、ブッシュ大統領時代の単独行動主義との決別や積極的な協調外交を進める立場を印象づけるのが主眼だった。
 イラク訪問時にバグダッド上空のヘリコプターの中でペトレアス駐留軍司令官の戦況報告を受けるオバマ氏、あるいはロケット弾がしばしば撃ち込まれるパレスチナ自治区ガザに近いイスラエル南部の小さな町で記者会見に臨むオバマ氏といった具合に、外遊先での動静は米メディアが逐一伝えた。紹介した二つのシーンは、共和党陣営が軍歴のないオバマ氏を「弱虫」呼ばわりしていることを念頭に、「米軍最高司令官」を務めるにふさわしい度胸があることをさりげなく米国民にアピールする演出でもあろう。
 米メディアの目を意識したパフォーマンスが多かった今回の外遊は、オバマ氏の選挙戦略を仕切る同氏子飼いの側近集団がお膳立てし、ワシントン・ポスト紙が書いたように、「大勝利」に終わった。ただ、各国首脳との会談では、大統領候補ということで、イラク情勢や中東和平など重要な問題で踏み込んだ発言はなく、抽象論に終始した。
 大統領選では、昨年夏以降のサブプライムローン問題を引き金とする米景気減速で「経済」が最大の争点に浮上しており、駐留米軍撤退をめぐる「イラク」の関心は低下気味だ。それでも、今回の外交デビューはオバマ氏にとって大きな得点となった。本選挙を3カ月後に控えた現時点では、支持率でオバマ氏が数ポイントリードしているとはいえ、マケイン氏にも勝算はある。メディア戦略の優劣が選挙戦を左右するのではないか。