時の焦点 <国内>2008/7/24付
一般財源へ自民及び腰
南風 太郎(政治評論家)

どうする「道路」財源
 のど元過ぎれば熱さを忘れる−−。
 自民党のためにあるようなことわざである。
 道路特定財源の一般財源化の進め方を話し合う「与党道路財源問題等協議会」が、ようやく発足した。4月の自公党首会談で設置に合意しておきながら、実に、3カ月遅れてのスタートだ。
 一般財源化は、福田首相が民主党の抵抗でガソリンの暫定税率切れに追い込まれ、巻き返しのために決断した。
 世論の逆風を受け、自民党の道路族議員も、首相に渋々と従った。
 しかし、自民党の大勢は、道路予算の削減につながる一般財源化の議論には、及び腰だ。
 だからこそ、「与野党協議の推移を見極めなければ」などと理由をつけて、与党協議会の発足を先送りしてきた。
 その与野党協議は、5月末を最後に中断したまま。しびれを切らした公明党にせっつかれ、ようやく重い腰を上げた、というのが実態だろう。
 首相は、一般財源化にあたっては、「必要な道路」は整備しつつ、「生活者の目線」で使途を見直すと約束している。
 与党協議会では、その具体化に向けて、▽今後の道路整備計画のあり方▽一般財源化後のガソリン税収などの使途▽暫定税率の扱いと課税の理由付け▽地方に回している特例交付金の存廃−−などを検討するという。
 ところが、7月15日の初会合では、早くも、自民党と公明党との意識のずれが浮かび上がった。
 公明党は、道路予算を削減して社会保障に回すことを求め、「目に見える形で変えないと、国民の期待を裏切ることになる」と迫った。
 これに対し、自民党は、「『必要な道路』というのは、そんなに変わるはずがない」と、削減論をけん制するのに躍起となった。揚げ句の果てに次回協議の日程も決められない始末である。
 次期衆院選をにらんで、公明党は改革姿勢を示す必要に迫られている。
 冬柴前幹事長が国土交通相になってから、道路特定財源のずさんな使い方が次々と発覚し、支持母体の創価学会員の不満が爆発寸前なのだ。
 逆に、自民党は、衆院選を前に地方の道路予算を削られると、公共事業関連企業や地方議員たちから総スカンを食う、とビクビクしている。
 福田内閣の支持率は低迷し、予算や税制の議論が山場を迎える年末の政治情勢は、不透明感を増してきた。
 自民党道路族は、「このまま首相の力が衰えていけば、道路予算の削減に踏み込むことはできないだろう。そもそも福田政権がいつまで続くかわからない」として、しばらく様子見を決め込んでいるように見える。
 道路工事の配分で、選挙勝利に十分な票やカネを集められたのは、もはや過去の話だ。
 自民党は、いつになったら「夢」から覚めるのだろうか。

時の焦点 <海外>2008/7/24付
原則守りつつ冷静対応
吉田 健一(外交評論家)

竹島めぐる日韓関係
 竹島をめぐり、日韓関係がまたぎくしゃくし始めた。文部科学省が公表した中学校社会科の新学習指導要領解説書は竹島について、「固有の領土」との記述を避け、「北方領土と同様にわが国の領土・領域について理解を深めさせる」との表現で明記した。隣国・韓国に配慮しつつも、国家の基本である領土について、しっかりと教育する姿勢を貫く極めて妥当な判断だと思う。韓国政府は日本大使を呼び戻すなど強く反発しているが、日本は原則を守りつつ、関係改善に向け冷静かつ辛抱強く対応していくべきだろう。
 筆者が韓国滞在中の2005年、島根県が「竹島の日」条例を制定し、韓国内では反日ムードが高まった。筆者も酔っ払いに「独島(竹島)はどこの国のものか」と絡まれたりした。歴史教科書や首相の靖国神社参拝問題のとき以上に「反日」を肌で感じたものだ。
 日本人の多くは竹島自体にはそれほどの関心はないだろうが、韓国人にとって独島(竹島)は特別な愛着があるのは事実だ。例えるなら、日本人にとっての富士山みたいなものだろうか。近年、歴史的にやられっ放しの日本から唯一勝ち取ったのが独島であり、民族的プライドの象徴ともなっている。
 こうした韓国人の感情に、できる限りの配慮をすべきだと考える。しかし、日本が独立国家である以上、守るべき一線があることは言うまでもない。自分の国の基本を正しく教育することなしに、世界に通用する人間は育たないだろう。
 今年2月の李明博政権発足で日韓関係は改善に向かい始めたかに見えたが、わずか半年足らずで停滞局面に入ってしまった。「韓国大統領は支持率が落ちると反日に走る」というセオリーが、残念ながら今回も覆らなかった。
 李政権発足時、日韓は「未来志向の関係」をうたったが、これが砂上の楼閣のようにもろいものだったことが浮き彫りとなった。韓国が日本に望む「未来志向」とは、子供たちに竹島のことを教えないことだと言え、日本としては受け入れられないものだ。「国として守るものは守りながら相手国に配慮をする」。これが日本が考える「未来志向」であり、日本はそれを実行している。日本と韓国がそれぞれ考える「未来志向」にはずれがあり、この耳に心地良い言葉に期待を寄せないほうがいい。
 世界的に見ても隣国同士に摩擦は付き物だ。摩擦を抱えながらも、国としての原則を守り、相手と辛抱強く付き合うことが互いの国益に適う。