時の焦点 <国内>2008/6/26付
余りに寂しい派遣実績
南風 太郎(政治評論家)

自衛隊の国際協力
 福田政権は、「平和協力国家」を標榜している。それなら、世界各地の紛争地域で、日本はどんな貢献をしていくのか。京都で開かれているG8外相会合や、来週に迫った北海道洞爺湖サミットで、新味のあるメッセージを発信してほしい。
 今年、国連の平和維持活動(PKO)は60周年を迎えた。1948年、イスラエルと周辺アラブ諸国の休戦協定を監視するため、パレスチナに展開された非武装の軍事監視団「国連休戦監視機構」がPKOの始まりだ。
 現在、国連により、17のPKOと、20の政治・平和構築派遣団が、世界各地に展開中だ。120カ国近くから約11万人が参加している。
 PKO予算は年間約68億ドル。国連の通常予算の3倍以上に膨れあがった。日本は、このPKO予算の16・6%を負担している。財政面では、米国に次ぐ世界第2位の貢献である。
 しかし、5月末時点でPKO、政治・平和構築派遣団に参加している軍人、警察官の人数は、国連統計では、中東のゴラン高原とネパールの計36人、世界第82位だ。G8と中韓両国を含めた10カ国中では、最下位である。
 日本のPKOへの参加も、遅ればせながら、1992年の国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)以来、16年目に入った。36人とは、やはり寂しい数字ではないか。
 武器使用など日本独自の制約はある。
 だが、危険の比較的少ない司令部要員でもいいから、数多くのPKOに参加していくことが、自衛隊が他国軍隊と連携する経験を積むために役立つのではないか。内外に日本の存在を示すことにもつながる。
 冷戦後、民族や宗教の対立を背景にした内戦や紛争が増え、国連PKOでも、紛争後の平和構築支援が重要な任務になっている。伝統的な停戦監視任務に加え、難民帰還、人道支援、兵士の武装解除、現地警察の訓練、選挙実施や復興開発、行政制度の構築など幅広い支援が求められている。
 自衛隊も、こうした視点を持ち、PKOへの協力をどう拡充していくか、考えてもらいたい。
 自衛隊の国際平和協力活動は昨年1月、本来任務に格上げされた。
 自衛隊には、食住や通信、医療を確保し、紛争終了直後から現地で動ける自己完結性がある。
 カンボジアで発揮した施設部隊による橋や道路の復旧能力などは、今なおPKOの現場で求められている。国内の災害派遣で評価されている人道支援能力も、海外で存分に発揮してほしい。
 PKOでは、国連職員や国連ボランティアなど文民と一体となった活動も増えている。連携をどうとっていくか。
 ノウハウを蓄積する観点からも、アジアやアフリカの国連PKO訓練センターへの教官派遣などは、前向きに検討していいのではないか。

時の焦点 <海外>2008/6/26付
サミットで処方箋描け
伊藤 努(外交評論家)

原油・穀物価格高騰
 原油価格が1バレル=140ドルに迫り、史上最高値を更新するなど、エネルギー価格やコメなど穀物相場の高騰に歯止めが掛からない。原油高騰はガソリン値上げによる輸送コスト上昇にとどまらず、欧州各地では漁民の激しい抗議行動などさまざまな分野に波及。また、穀物価格の高騰を受けて、ベトナムやインドといったコメ輸出国が国内消費用のコメを確保するため輸出規制に踏み切るなど、世界的な食糧危機を招きかねない状況を引き起こしている。7月に迫った洞爺湖サミットでは、地球温暖化対策やアフリカ支援といった主要議題に加え、エネルギー・穀物価格高騰によるインフレの抑制や食糧問題が大きな焦点に浮上してきた。
 6月初め、ローマで開かれた国連食糧農業機関(FAO)主催の「食糧サミット」では、食糧危機克服に向けた指針を盛り込んだ宣言を採択し、影響を受けやすい途上国への緊急援助拡大で合意した。しかし、大生産国による輸出規制については、規制の自粛・撤廃を求める日米など先進国側の主張とは平行線をたどった。反対派の急先鋒はインドで、総選挙を控えるシン現政権にとっては、年率で7%を超えたインフレ抑制と国内産のコメや小麦など食料品の安定供給が最優先課題となっている。
 6月半ばに韓国の済州島で開かれたアジア欧州会議(ASEM)財務相会議でも、エネルギーと食糧の価格高騰によるインフレ圧力の増大が主要テーマとなったが、インフレへの懸念を共有しただけで、具体策は提示できなかった。「外交は内政の延長」とは、国際政治の基本原則の一つだが、ベトナムやインドのように、国内的に優先すべき政治課題があれば、外交の場で安易に妥協はできない。
 世界的な穀物価格急騰の背景には、種々の要因が複雑に絡む。穀物の大供給国である米国では石油など化石燃料に代わるバイオ燃料生産のため、食糧用のトウモロコシや大豆といった穀物がエネルギー生産に振り向けられ、生産が減少した需給関係の悪化がある。人口が増加し、経済成長も続くインドなど途上国を中心とした需要拡大や、自然災害による生産減少といった要因も重なった結果、「将来も安定的に供給される保証はない」といった不安心理が価格をさらにつり上げる。原油高騰の「犯人」と指弾される投機資金が商品市場に流れ込み、価格上昇に弾みをつけている事情も看過できない。
 サミットは本来、経済問題を討議する場だった。すぐれて経済的問題と言えるエネルギー・食糧高騰問題に真っ向から切り込み、解決の処方箋を提示できないようであれば、サミットの存在意義も厳しく問い直されよう。議長国・日本の責任は重い。