朝雲寸言2008/7/3付

北朝鮮が核開発に関する申告書を提出し、アメリカはこれを受けて、テロ支援国家指定解除の手続きを開始した。わが国が主張していた拉致問題の実質的進展がないままの「見切り発車」となった。
もともとアメリカにとって、拉致と核のリンクには無理があった。アメリカから見れば、核の拡散は世界秩序にかかわる問題であるのに対し、拉致は、国家による犯罪行為ではあるが、北朝鮮という特異な国家によるローカルな問題に過ぎない。一方、わが国にとっては拉致も核も、国家主権と国民の安全にかかわる重大事だ。
今回の米朝の取り引きは、末期を迎えたブッシュ政権の焦りに起因するという見方があるが、そうだとすれば、北朝鮮の瀬戸際外交の勝利ということになる。あるいは北朝鮮も、食糧やエネルギーの困窮からアメリカなどの援助を必要としていたと見られており、それなら米国外交の成果とも言える。
真実はその中間にあるのだろうが、外交は、時にむき出しの国益による他者の無視と妥協の産物だ。わが国にも、核とは別に、拉致で進展がなければ制裁を解除しないという選択は残されている。
拉致よりも核を選択したアメリカに今さら文句を言っても始まらない。この際大事なことは、核の申告が真正であること、ひいては、核放棄に向けた北朝鮮の意図が真正なものであることの検証だ。以前から繰り返されてきた北朝鮮の「ごね得」をまたも許すわけにはいかない。