朝雲寸言2008/5/22付

10年ほど前に北京を訪れたとき、工事中のビルの多いことに気がついた。驚いたのは、20階建てほどのビルの柱がやけに細い。おまけに壁は筋交いもなく、ブロックを積み上げただけの簡単なものだった。
これでは地震が来たらひとたまりもない。その心配が四川省で現実のものになった。学校や病院など大型の建物が崩壊した姿を見て、北京の工事中のビルと重なった。
実は中国は、世界最大の地震国だ。統計によればマグニチュード5・5以上の地震が毎年平均2・1回起きており、日本の0・8回を遙かに上回る。一方、これを日本の面積当たりに換算すると、中国の地震頻度は0・1回未満で、大地震に遭遇する確率は日本の10分の1ということだ。
今回の地震では、日本などからの緊急援助隊の受け入れが遅れたり、学校の建物で手抜き工事が明らかになるなど、多くの問題が指摘されているが、それでも中国指導部の対応、特にメディアに対する対応は素早かった。未だに被害の全容さえわからないミャンマーや、援助物資の横流しが当然とされる北朝鮮と比べれば、はるかにましだ。
全体主義の国で一番犠牲になるのは人権だ。それは、災害時には人命軽視となって表れる。中国では、ネット上で政府に対する批判の嵐が吹き荒れており、当局も気にせざるを得ないようだ。その意味では、人命を尊重する「普通の国」になりつつあるようにも見える。