朝雲寸言2008/3/27付

イージス情報の漏洩、護衛艦「しらね」の火災、護衛艦「あたご」の衝突事故という一連の不祥事について、調査報告と処分が発表された。形の上では一区切りだが、直後に「あたご」の事故当時の当直員が自殺を図るというショッキングなニュースがあった。負の連鎖を断ち切るのは容易ではない。
「あたご」の中間報告では、艦橋に11人の当直員がいたが、衝突直前まで相手漁船に気がつかなかった様子が見て取れる。11人もいながらなぜ、という見方があるが、一方、11人が見ているということは、誰かが見ているだろうという落とし穴にも通じる。
「伝統墨守、唯我独尊」という海自の「体質」を批判する声もある。だが、どんな小さい目標も見逃さない「職人技」は、誇り高いシーマンシップの一環として、旧海軍以来受け継がれてきたものだ。その技の伝承があるから、海自には「伝統墨守」の美風がある。
自殺を図った当直員も、まじめな青年であることがわかる。問題は、そのまじめな若者に、シーマンとしての「伝統」を受け継がせるべき組織体制が風化してはいないか、ということだ。受け継ぐべき「伝統」を失ったなら、海自の気風は「唯我独尊」しか残らない。
伝統を見失うという点では、日本社会全体の病根と同じだ。かつて自衛隊は、「落ちこぼれ」の若者を一人前の防人に育ててきた。今、自衛隊は、社会の病根に負けるかどうかの瀬戸際にいる。