朝雲寸言2007/6/7付

青森県に漂着した小さな木造の漁船は、各方面に少なからぬショックを与えた。北朝鮮からの脱北者だったが、小さな船で日本海を横断してきたというのは驚きだ。それはまた、取り締まる側の海保にとっても、盲点をつかれた意味で驚きだったに違いない。
一方、これを脱北の手口で見ると、燃料不足の北朝鮮で今回の家族が準備した軽油は年収の16年分にも相当するものだったという。それだけ周到な準備をしたうえでの決死的な逃避行は、北での生活がいかに悲惨なものかが分かる。
従来、脱北と言えば、中朝国境を越えて朝鮮族の中に身を隠すパターンが一般的だったが、中国側の取り締まりが強化された結果、中国から東南アジアに渡って韓国に入るケースも増えているという。今回のように、日本を経由して韓国に行こうとするケースは珍しい。それだけ日本海は大きな障害だった。
わが国危機管理の観点で見れば、今後もこういうケースが出てくることを想定しなければならない。今回は、1隻の小舟で4人だったが、これが1000隻なら4000人になる。
既に韓国には1万人の脱北者がおり、さらに十数万人が中国にいる。これに日本ルートが加われば、脱北はさらに加速する。国を逃れる民がいるということは、それに数倍する餓死、投獄の生き地獄があるのだろう。今回の小船は、金正日体制という巨大な壁が崩壊する蟻の一穴に見えてくる。