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朝雲寸言2007/5/24付
イギリスのヘンリー王子は、陸軍の近衛騎兵連隊に所属している。この部隊は既にイラク南部で任務に就いている。王子も部隊の一員としてイラクへの配属を志願したが、現地の治安情勢を憂慮した国防省の判断で派遣が断念されることになった。
国防省では、アルカイダやシーア派民兵が王子を標的にするため、王子だけでなく、同行する部隊も危険が高まると説明している。この決定に対して、英軍関係者が「軍事的には当然」と評価しているのに対し、イラクで戦死した兵士の遺族は、王子の命は戦死者150人の命より重いのか、と不満を述べている由。
もともと、英国軍の最高指揮官は国王であり、王室の男子は士官学校に入り、場合によっては率先して戦場に赴く伝統がある。王室の権威の根源は、国家の安全確保であるとする歴史を踏まえたものだ。今や統治者ではなく君臨するのみとなった国王にも、国民を上回る高い義務感が要求されている。
翻ってわが国では、かつて天皇は主権者であり軍の統帥者であって、皇族男子も軍務につくことが当然視されていた。主権者であることにはそれだけの義務が伴う。
今日のわが国でその義務を負うのは、主権者である国民の代表たる国会議員であり、自衛隊の最高指揮官である総理大臣だ。集団的自衛権や自衛隊の海外派遣を巡って議論が盛んだが、現代の政治家に自分の子息を前線に送る覚悟はあるだろうか。
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