朝雲寸言2007/4/19付

温家宝・中国首相の訪日は、おおむね好評だった。これは、市民と気さくに交流する同首相のキャラクターにもよるが、何と言っても、9年前の江沢民国家主席の「けんか腰」外交の記憶があまりにも鮮明で、それに比べると、今回の温首相の方が常識的だったということだろう。
江沢民氏は訪日に際して、日本側から日中戦争への謝罪の表明がないことを不満として「日本軍国主義」批判を言いまくった。一方、温家宝氏は、国会における演説で、日本が何度も反省と謝罪を表明してきたことを積極的に評価するとともに、日中の共通の利益を強調して未来志向の関係構築に意欲を示した。
とくに、中国にも生中継されたこの演説で、今日の中国の経済発展の陰に日本の支援があったことにも触れ、日本への「感謝」を示した。ただ、温家宝演説も、基調においては、「中国にとって歴史と台湾問題は避けることのできない中心課題」という江沢民演説と完全に一致している。
その証拠に、演説の前半は、過去の歴史の教訓をくみ取ることの重要性にあてられ、演説の後半では、台湾問題が中国の核心的利益に関わることを強調する一方、「戦後日本の平和的発展」に触れた部分は、原稿をなぜか「読み落とし」ている。
総じて言えば、日中には、共通の利益や協力すべき分野が増大しているが、両国の間に共通するものは警戒感であって、信頼ではないということだろう。