朝雲寸言2007/3/15付

気になるニュースがある。イラクへの転属を命じられた日系3世の米陸軍中尉が、イラク戦争は憲法に反するとして命令を拒否し、軍法会議で裁かれることになったというニュースだ。
同中尉の言い分は、イラク戦争は、国際法と米国憲法に反しており、米国と米国憲法を守ることを宣誓した軍人として、宣誓に反する違法な命令に従うことはできない、というものだ。
自衛隊の場合も法令遵守義務があり、服務の宣誓でも憲法の遵守がうたわれている。他方、軍人は規律を最も重んじ、一見明白に違法な命令でなければ服従する義務がある。問題は、違法かどうかを誰が判断するかということだが、戦場では、一義的に上官の判断に従うべきで、違法性があれば、後に意見具申するなり、法廷で決着をつけることになろう。
戦場での命令拒否にはどの国でも重い罰則がある。今回は、イラクへの派遣命令の拒否なので、いわば人事異動の拒否だ。米軍法では、有罪なら最高4年の禁固刑になるそうだが、自衛隊法では異動拒否そのものへの罰則はない。
シビリアン・コントロールの下で、戦争の当否は優れて政治の判断事項だ。今回の事件は、その戦争目的の不当性を一兵士が主張したことに特色がある。中尉の政治的背景は不明だが、一兵士が最高指揮官たる大統領に異論を唱え、それをマスコミが冷静に報道する。そこには、アメリカの悩みの深さと伝統の強さが見える。