朝雲寸言2007/2/15付

中国の軍と政治を巡って一つの疑念がささやかれている。中国は昨年、米空母を潜水艦で追尾した。年明けには、ミサイルによる人工衛星の破壊実験を行った。これは単なる軍の近代化を越えて、アメリカの軍事的優位を象徴する分野に対する露骨な挑戦だ。
そのアメリカは、イラクを巡って政権の指導力が低下し、イラン、北朝鮮問題では各国の協力を求めざるを得ない。そういうアメリカの弱みにつけ込んで軍事的優位に挑戦するような行為は、一歩間違えば軍事行動を含む強い反発を招きかねない。
経済発展のために安定した国際環境の維持、なかんずく安定的な対米関係を最大の戦略目標としている中国指導部が、意図的にそうした冒険主義的行動を「指示」したとは考えにくい。だが、結果として指導部は軍の行動を「支持」せざるを得ない。中国指導部は軍の動きを掌握していないだけではなく、結果として軍に振り回されているのではないか、という疑念が生じるゆえんだ。
中国人民解放軍は、中国共産党の指導下にある軍隊だ。その政軍関係は、軍に対するシビリアン・コントロール(民主的統制)ではなく、セクタリアン・コントロール(党派的統制)である。党の統制が揺らぐことは、党への忠誠が揺らぐことだ。
かつて「民主主義は戦争をしない」と言われたが、この言葉は中国のためにある。近代的な軍を目指すなら、近代的な統制システムが必要だ。