島嶼防衛の態勢強化 南西諸島 空白域の解消目指す
沖縄県・尖閣諸島沖で起きた中国漁船衝突事件をめぐって9月30日、衆院予算委員会で閉会中の集中審議が行われ、この中で北沢防衛相は南西諸島の防衛態勢に触れ、「先島への配備を検討、調査費を予算要求している」と述べ、島嶼防衛の態勢整備に本格的に取り組む姿勢を明らかにした。
「尖閣沖事件」で集中審議 衆院
中国漁船衝突事件をめぐって中国政府は、わが国の尖閣諸島を自国の領土と主張、外交、貿易面で強硬姿勢をとり続けているが、30日の集中審議でみんなの党の浅尾慶一郎氏が南西諸島の防衛態勢について、「与那国島に自衛隊を駐屯させていくことは、かつて政府が決めていたが、これを進めていくことも一つの抑止につながる。併せて潜水艦の耐用年数を増やすことで、抑止的効果が出るのではないか」と質した。
これに対し北沢防衛相は、「潜水艦については16大綱で16隻と決まっている。今後、見直しに当たり耐用年数を延長することで体制を新たにするということは一つの考え方として検討させてもらう。与那国への(自衛隊)配備は、先島(諸島)についていま検討しており、調査費という形で予算要求している」と述べた。
南西諸島方面には、空自レーダーサイトが所在する宮古島以西には部隊が配備されていないため、防衛上の空白地域となっている。
このため防衛省は23年度予算の概算要求で、島嶼部の各種事態への対応として、防衛上の空白域を埋めるため先島諸島への陸自部隊の配備調査費と、空自移動警戒隊の円滑な運用のための電波環境技術調査費を計上。また、南西地域での統合実動演習や陸自西部方面隊による離島侵攻対処の実動演習、陸自と米海兵隊の実動演習などを予定。さらに西方部隊の機動力向上のため多用途ヘリコプターの整備を盛り込んでいる。
南西諸島の防衛態勢強化の背景には近年の中国海軍の活発な動きがある。平成16年11月に多良間島と石垣島の周辺を中国の原子力潜水艦が潜没航行して領海を侵犯、防衛大臣が海上警備行動を発令する事態があったが、その後もさらに動きを活発化させている。
20年10月には中国海軍のミサイル駆逐艦など4隻が日本海側から津軽海峡を通峡、日本列島を周回して南西諸島を通り東シナ海へ。同年11月にも駆逐艦など4隻が南西諸島を抜けて太平洋に進出。同12月には海洋調査船2隻が尖閣諸島周辺のわが国領海内に侵入し漂泊。
21年6月には駆逐艦など5隻が沖ノ鳥島北東海域で行動し、今年3月には駆逐艦など6隻が太平洋に進出したほか、4月にはキロ級潜水艦、ミサイル駆逐艦など10隻が東シナ海から南西諸島の海峡を通過、沖ノ鳥島西方海域に進出して訓練し、監視中の海自護衛艦に対して艦載ヘリが接近して示威行動を行っている。
中国海軍のこうした行動は規模も態様も年々大胆になってきており、南西諸島方面の防衛態勢強化は差し迫った課題となっている。
中国漁船衝突事件
9月7日、尖閣諸島沖のわが国領海内で違法に操業していた中国漁船(船長以下中国人16人乗り組み、166トン)を海上保安庁の巡視船が発見、立ち入り検査のため停船を命じたが従わず、逃走しながら巡視船「みずき」の右舷中央付近に衝突。船長は公務執行妨害罪で逮捕、送検された。船員と漁船は送還された。中国政府は、尖閣諸島は中国の領土だとして船長の釈放を要求。那覇地検は21日未明に船長を釈放した。
菅首相は10月1日の所信表明演説で「尖閣諸島は、歴史的にも国際法的にもわが国固有の領土。先般の事件はわが国の国内法に則り粛々と処理したもの。中国には国際社会の責任ある一員として、適切な役割と言動を期待する」と述べた。