3月の朝雲ニュース

3/4日付

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「たかしま」でピリオド 木造艇の強味と温もり
木材高騰、技術の維持も困難 時代はFRP型に

世界最後の木造掃海艇として完成した「たかしま」。1世紀以上にわたり受け継がれてきた木造建造技術は同艇で幕を閉じる

 “世界最後の木造掃海艇”「たかしま」(570トン)が2月26日、就役した。日本が誇る熟練船大工たちがベイマツやケヤキなど最良の木材を使い、“匠の技術”で組み上げた掃海艇だ。次の20年度艇からはすべて強化プラスチック(FRP)製となるため、旧海軍時代から綿々と受け継がれてきた木造掃海艇の歴史は「たかしま」でピリオドを打つ。同艇の就役を機に海自掃海艇の歴史を振り返ってみた。

米海軍の「ブルーバード」級を手本に建造された海自初期の掃海艇「かさど」型3番艇の「かなわ」(昭和34年)

ペルシャ湾に派遣され、クウェート沖で機雷掃討作業を行う掃海艇「さくしま」(平成3年夏)

最後の木造掃海艇「たかしま」の進水を前に、記念写真に収まるユニバーサル造船の“船大工匠(たくみ)衆”(平成20年9月)

「たかしま」部隊章

磁気には反応しない

 掃海艇が木で建造されてきた最大の理由は、磁気に反応しないことによる。鉄製の艦船は強い磁性を持つため、磁気機雷の近くを航行すればたちまち触雷する。感応機雷の中にはさらにエンジン音や水圧に感応するものもあるため、掃海艇は木造だけでなく、エンジン音を小さく、船体を軽くすることが求められた。
 海中や海底に敷設される機雷はドラム缶程度の大きさだが、その威力は絶大だ。日露戦争の旅順攻囲戦では両国の戦艦を含む多数の艦艇が触雷して沈み、また太平洋戦争中は米軍によって日本沿岸は1万個以上の機雷で完全に封鎖された。
 このため、戦後日本の復興は掃海作業から始まったと言っても過言ではない。その中核を担ったのが小さな木造掃海艇で、米国製の高性能機雷による触雷事故も頻発、多くの殉職者を出した。朝鮮戦争が始まると国連軍にも参加し、朝鮮半島沿岸で機雷掃海に従事した。

高級木材ふんだんに

 海上警備隊(海自の前身)が昭和27年4月に創設されると、安全性に優れた掃海艇の建造が本格的に始まった。28年度計画でまず「あただ」型(240トン)2隻と「やしろ」型(230トン)1隻が整備され、米国からも「ブルーバード」級掃海艇(後の「やしま」型)4隻の供与を受け、高性能機雷への対処能力を高めていった。
 30〜41年度に計26隻が建造された「かさど」型(340トン)は一時代を築いた掃海艇で、船体は縦通材にケヤキ、外板内層材にヒノキ、外装板にベイマツなど高級木材をふんだんに使用、エンジンや煙突には非磁性金属を使い、後の海自掃海艇のモデルとなった。42年度からは水中処分員(ダイバー)も乗り組む「たかみ」型(380トン)型が19隻建造された。
 51年度からは自走式の機雷処分具S4を搭載した「はつしま」型(440トン)が登場。同型の「ひこしま」「ゆりしま」「あわしま」「さくしま」は湾岸戦争後の1991年、ペルシャ湾に派遣され、自衛隊初となる海外派遣任務に従事した。

費用や耐久性が難点

 「ひこしま」など4艇は掃海母艦「はやせ」、補給艦「ときわ」とともに片道1万3000キロを走破してペルシャ湾に到着、熱暑のクウェート沖でイタリア製の高性能沈底機雷「マンタ」などを含む34個の機雷を処分、海自木造掃海艇の能力の高さを世界に示した。
 この実戦経験を教訓に、海自は続いて高性能の「うわじま」型(490トン)、「すがしま」型(510トン)、「ひらしま」型(570トン)を順次整備。平成1〜2年度には世界最大級の木造船となる掃海艦「やえやま」型(1000トン)3隻も建造した。
 船体に木材を用いると居住スペースは狭くなるが、木には鉄にはない温もりがあり、木の甲板は足腰への負担が小さいなど、木造艇に愛着を持つ隊員は少なくない。だが、時代は木からプラスチックへと大回頭しており、1990年代には米「オスプレイ」級、英「サンダウン」級などFRP艇が出現、仏、伊、蘭、豪など各国海軍もこれに続いた。
 FRPは最初に成型用の型を作れば量産が可能で、耐久性があり、整備・補修の手間も少ない。海自は技術維持のため木造艇にこだわってきたが、船大工の減少や高齢化、木材の高騰などから、ついにFRP艇へと舵を切った。

24年度からFRP艇

 「木造艇は16年しかもたないが、FRP艇は寿命が約2倍の30年に延びる。建造費は1割ほど高くなるが、ライフサイクルコストは大幅に下がる」(防衛省)こともFRP化の理由だ。
 20年度艇(570トン)はプラスチック内部にガラス繊維を加えた高強度の「GFRP」製で、すでにユニバーサル造船で建造が進められており、来年秋に進水、24年度末に就役の予定だ。
 木造艇「たかしま」船務長の立石貴大1尉は「これまで掃海艇は古くなると木の継ぎ目から水が入り、腐食して雨漏りが発生するようなこともあった。海自掃海艇はずっと木造で来たので、もう建造されないと聞くと寂しいが、世界で最後の木造艇となるので、FRP艇に負けないよう頑張りたい」と話している。