陸中音隊長の武田1佐、米陸軍軍楽隊定演でタクト
“日本の旋律”伝える 「演奏指揮、心から満足」
陸自中央音楽隊(朝霞)隊長の武田晃1佐(52)=武蔵野音大卒=が10月末、米ワシントン近郊のアレクサンドリア市内で開かれた米陸軍軍楽隊(隊長・トーマス・ロタンディ大佐)の定期演奏会に招かれ、「君が代」や「八木節」など日本の曲目を演奏する同軍楽隊を指揮、そのタクト・ワークが注目を集めた。陸中音の隊長が米国で陸軍軍楽隊を指揮するのは初めてということもあり、藤崎一郎駐米大使もダイク元在日米陸軍司令官とともに武田1佐の演奏指揮を見守った。

米陸軍軍楽隊の指揮を終え、両手を広げてロタンディ隊長と祝福し合う武田中音隊長(右)(10月25日、米・バージニア州で)
10月25日午後3時(現地時間、以下同)、米国バージニア州のR・M・シュレジンガー・コンサートホールで米陸軍軍楽隊の定期演奏会が開幕した。日米の国旗が横に掲げられ、65人の軍楽隊員が待機したステージの指揮台に武田隊長が立った。武田隊長は「君が代」、行進曲「凱旋」など日本に関係した4曲を指揮後、ロタンディ隊長と交代。アンコールでは単独で「八木節」、ロタンディ隊長と「星条旗よ永遠なれ」を指揮し、客席から盛大な拍手を浴びた。
今回の武田隊長の訪米は、中音が技術向上のため海外演奏を企画中、米軍楽隊から合同演奏の招待を受けたのがきっかけ。中音では当初、演奏隊員数人の派遣を提案したが、演奏会の性格や米側の要望もあり、武田隊長の指揮で米軍楽隊が日本の曲を演奏することになった。
訪米に当たって武田隊長は「自分の指揮で演奏水準が下がったり、リハーサルがスムーズに進まなかったりしては申し訳ない」と、日本独特のリズムや旋律の表現法を英語で軍楽隊員にどうやって伝えるかに時間をかけて検討。そんな折、キャンプ座間の米軍楽隊長が着任あいさつに訪れた。スティーブン・キャンベル隊長にアドバイスを求め演奏指導に必要な表現を30近く想定して文案を作成する一方、演奏に使う鉦(かね)など和楽器の奏法をビデオで送り予習依頼するなど、“日本の旋律”のイメージづくりに知恵を絞った。10月18日、演奏班長の加藤良幸1尉とワシントン入りした。
翌日からのリハーサルでは自分の身長や持参した英語のカンニングペーパーを“ネタ”にしたジョークで隊員たちの気分をほぐし、「凱旋」で練習開始。指揮台から聞く軍楽隊の音は繊細だった。パワフルな感じはあるものの、近くで聞いてもうるささがなく、遠くまで音が響く理想的な奏法で、「隊員たちは和音を聞き取る能力が非常に高い」ものを持っていた。
音楽表現の練習では、軍楽隊員たちは休憩時間も楽器を手に武田隊長の脇に来て表現法を何度も確認するなど熱心に取り組んでいたという。
そして25日の本番を迎えた。軍楽隊員は武田隊長の求めていた日本的なメロディーをみごと表現。米国の聴衆は軍楽隊とともに武田隊長の指揮ぶりに惜しみない拍手を送った。
武田隊長は「心から満足できる指揮だった。機会があればもっと日本的な『静』の世界の表現にも挑戦してみたい。中音もさらに演奏技術の向上に努め、国、陸自を代表する音楽使節としての使命を果たしたい」と話した。