近代化を誇示した中国軍事パレード
建国60周年
国産新兵器52種に
機械化進展、情報化も着手
拓殖大学名誉教授 茅原 郁生
中国・北京でさる10月1日に建国60周年の盛大な国慶節パレードが催され、軍閲兵式や10万市民による行進で山車60台が繰り出された。そこでは民族団結や経済発展の成果が誇示され、還暦を迎える共産党執政の正統性を称える派手なパフォーマンスが目立った。
今次、観閲式では解放軍の近代化の成果を国際社会に誇示するほかに、軍の威容を示すことで国内のナショナリズムを満足させ、さらに国内不安に対応する強権力を見せつける狙いも覗かせていた。閲兵式の目的について軍の機関紙『解放軍報』が「国威・軍威の発揚、民族精神の高振、愛国情熱の発露」と伝えたゆえんである。
実際、国家統合に向けた民族宥和の配慮が市民の山車などで強く前面に出された一方、閲兵式では鎮圧用の強権力や国民の国防教育の成果が誇示された。具体的には、9・11テロのような非伝統的な脅威や四川大地震のような大規模災害対処、チベット族やウイグル族の独立運動など新事態に対する、非対称戦用の兵器や部隊が姿を見せていた。
現に暴動対処用の散弾銃や「雪豹」装甲車を備えた武装警察部隊や特殊部隊が行進に参加し、さらに兵站関連の梯隊では野戦用の手術車、炊事車、給油車などの後方装備が初出現し、防災対処や民生支援能力をアピールした。加えて予備役部隊の行進や深紅の制服の女性民兵隊など、国防教育や動員体制の成果も披露された。
軍パレードは、1999年の50周年記念観閲式に比べて、陸軍部隊が減って海・空・第2砲兵(戦略核ミサイル)軍が増え、徒歩部隊14個梯隊に対して兵器・装備は30個梯隊と12個空中編隊となり、52種の国産新兵器の登場などの特色があった。それも前回の観閲式では火力や機動力の強化などいわゆる「機械化」の達成度が注目点であったが、60周年観閲式では「機械化」の進展だけでなく無人偵察機や宇宙通信システムなど情報戦を中心とする新しい「情報化」への着手が見られ、10年間の近代化の進展ぶりが注目された。
国防近代化の成果としては、行進順で陸軍装備では99式戦車、05式水陸両用突撃戦車、空挺降下用装甲戦闘車、野戦用防空ミサイル等が目を引いた。さらに海軍では、既に4月の創設60周年記念観艦式で新鋭艦が披露されたが、今回は米空母を狙う新型巡航ミサイルや「海紅旗」対艦ミサイルが車載で出現し注目された。空軍では、後述の空中パレードのほかに防空ミサイル「鷹撃」、さらに機動レーダーなどに関心が集まった。
続いて第2砲兵軍の5個梯隊では実戦配備ミサイルの全系列108基が見られた。特に米本土を射程内に収めるよう1万キロメートルに延伸した大陸間弾道ミサイル東風31A号が大型車載で初出現し、同型の東風21C号や東海―10巡航ミサイルなど米国を威嚇できるミサイルの登場が注目された。また台湾正面の東風11、15号の改良型などの短距離ミサイルが威圧感を示した。
地上行進後に空中パレードが続き、航空機など150機が12個編隊で飛来した。まず空軍関係では、J―7戦闘機を伴った空警―2000早期警戒管制機(AWACS、07年に墜落事故)が初出場して関心を集めた。次いでJ―11戦闘機(ロシア製スホイ型の国内ライセンス生産)を伴った別型のAWACS機の外に偵察機・電子機編隊など情報戦能力の片鱗を覗かせた。また6機の「轟6」空中給油機が飛行し、その先頭機は2機のJ―10戦闘機への給油態勢で飛び操縦技術の練度を披露した。さらにH―6改爆撃機編隊に続いて戦闘機群としては「新飛豹」戦闘爆撃機編隊や国産J―10、J―11の2種の戦闘機約40機などの3個編隊が続いた。
ヘリコプター部隊としては海軍の直―8ヘリ、陸軍の直―9武装ヘリなど観閲式では最大規模の40機が飛行した。最後は女性パイロットが操縦する16機の教―8高等練習機が煙幕を張りながら飛行して幕を閉じた。
これら観閲パレードで中国は国防近代化の着実な成果を見せつけたが、それは国防費2ケタの増額を21年間も続けてきた成果でもあって、今日もなお防衛力整備を続ける必要性を示唆している。同時に中国では、国内に貧富の格差拡大などで国民の不満が鬱積する中で、なぜこのように国防近代化が優先されるのかという疑念も浮上する。テロや海賊対策など世界の安全保障環境の変化にもかかわらず、中国が国防強化を推進する意図や目標などで透明性を高めない限り、アジア諸国の懸念や不安感の払拭は難しいであろう。