10/29日付
風雨の中…相模湾で「2009観艦式」 艦艇群 威風堂々の航行 菅副首相「ひゅうが」に関心 防衛相らも立ち続け観閲 政権交代後の初の自衛隊観艦式。最高指揮官の鳩山首相はASEAN諸国首脳会議に出席のため菅直人首相臨時代理が務めたが、内外の新政権に対する“自衛隊観”にも関心が集まった。威風堂々の艦艇群の縦列航行、編隊で航過する航空機。あいにくの風雨の中、相模湾で展開された一大ページェント「2009観艦式」は――。 観艦式が始まる前、護衛艦「くらま」の観閲台で談笑する菅副首相(右)と北沢防衛大臣(10月25日) イージス艦「こんごう」甲板から3機編隊で飛来したP3C哨戒機を見上げる招待者(10月25日、相模湾で) 受閲部隊の航行、飛行を注視する外国武官、関係者ら(10月25日、「いなづま」飛行甲板で) 新政権下…外国武官、メディアが注視 正午からの観艦式開始を前に、強風が吹きつける「くらま」艦橋上の観閲台に菅直人副首相以下、北沢防衛大臣、榛葉副大臣、赤星海幕長らが姿を現した。 椅子に腰掛けた菅副首相は、双眼鏡で前方から単縦陣で直進してくる受閲部隊を見つめ、「あの後ろの大きいフネは何かね」と質問。すかさず横に立つ杉本自艦隊司令官が「護衛艦『ひゅうが』です」などと説明。 やがて受閲部隊の旗艦「あしがら」が近づくと、菅副首相らは立ち上がり、艦左舷にずらり並んで登舷礼式で観閲官に対する隊員を見つめる。ラッパ音が響き渡り、隊員の敬礼に副首相らもシルクハットを胸に当てて答礼。強い北風で艦が動揺するため、副首相らは左手で手すりを握り身体を支え、観閲を続けた。 この日は海保庁の巡視船「やしま」まで8群20隻、さらに受閲航空部隊の各種航空機の編隊が航過するまで約20分間、菅副首相は小雨降る観閲台に立ち続け、最高指揮官の代役を務めた。 呉音の演奏も楽しむ 観閲部隊先導艦を務めた護衛艦「いなづま」には各国武官も乗艦、海自艦艇・航空部隊の航行、訓練展示を見守った。 約20カ国35人の外国武官が参加し「いなづま」に乗艦した。武官らは飛行甲板などで式の様子を熱心に見学。カメラで艦艇を撮影したり、海自隊員から説明を受けたりする姿が見られたが、武官団の互いに交わす会話に、民主党の外交・安保政策に関心が及んだことは想像できる。 武官らは観閲の終了後、ヘリ格納庫で行われた呉音楽隊(竹内弘美1尉以下34人)の計9曲の軽快な演奏を楽しんだ。 一方「いなづま」には、国内メディアの記者とともにAP通信(米)など外国メディアの記者11社12人も乗艦、観艦式への関心の大きさをうかがわせた。 記者たちは雨が降り、立っていられないほどの強風が吹く悪天候の中、2階甲板に設けられた取材エリアで新鋭艦「ひゅうが」をはじめ海自艦艇のすべてをターゲットに盛んにシャッターを切っていた。 下士官集団誇らしく 自衛隊の組織を引き締める下士官集団。3自衛隊の准・曹最先任がこの日、観閲艦「くらま」に一緒に乗り組み、観艦式をそれぞれの立場から見つめた。 ホストを務めた海自先任伍長の畑中一泰海曹長は、「これまで陸空の最先任が観艦式を見る機会はなかったので、きょうは海自の伝統行事を間近に見てもらえてよかった。一番うれしかったのは、このフネは28年もたつ艦なのに、『就役して5、6年か』と言われたこと。それほどきれいに整備されていることに、2人とも乗員の質の高さを褒めていた。鬼軍曹と呼ばれる最先任たちの言葉だけに、私も改めて海自曹士隊員を誇らしく思った」と語る。 初めて観艦式を見たという空自准曹士先任の作山委久夫准空尉も「式の仕方は3自で異なるが、曹士が一つにまとまり、しっかりと役割を果たしている姿は同じだと思った。統合運用の時代、3自の曹士も今後は海外任務、災害派遣といろいろな場で一緒に働くことになるので、互いの仕事内容を知り切磋琢磨すると同時に、お互いを補っていくことが大事だ」と話す。 陸自最先任上級曹長の下浅勝雄准陸尉も「われわれも中央式典に参列できるようになり『いつか自分もあの場所に立ちたい』と全国の中堅陸曹隊員に夢や希望を与えることができるようになった。昨年は空、今年は海の中央式典を見て、改めて来年の陸自観閲式をこれまで以上に素晴らしい式典にしたいと思った。3自の下士官は制服が違っても機敏さや能力の高さは同じ。このことを全国の陸曹たちに伝えていきたい」。 招待者560人乗艦 観閲艦「くらま」のすぐ後ろで観閲部隊の随伴艦を務めたイージス艦「こんごう」には、全国から海自将官OBや企業トップら560人の招待者が乗艦した。 午前7時すぎ、出港場所の横浜・大桟橋には続々と招待者が詰め掛けた。同艦は午前8時半に出港、ベイブリッジをくぐって威風堂々と前進。相模湾の式典海域に到着するまでの間、招待者は乗員の案内で弾道弾迎撃ミサイルSM3など各装備品の説明を受けた。 出港後、しだいに風雨と寒さが強まり、甲板では激しい揺れと全身をたたきつける風雨、波しぶきで立っていられないほどに。 それでも招待者はレインコートの上から毛布を体に巻きつけて〓完全防備〓で甲板に用意されたいすに座ったり、後甲板や左舷に繰り出して熱心にカメラやビデオを回して式典を観覧した。 横浜までの帰路では、防火衣を着て非常用呼吸器(OBA)を装着した乗員が艦内を回って防火対策の一端を紹介するなど、艦艇のPRが行われた。 予行訓練展示も迫力 21日に行われた観艦式の予行では、招待者らの乗艦場所となった海自横須賀基地の入り口付近で手荷物検査など万全のセキュリティー体制が取られた。 手荷物検査では、約10人の隊員が「恐れ入りますが、手荷物検査へのご協力をお願いします」と招待者らに声をかけ、かばんやリュックサックなどの中身をチェック。また、招待券には、乗艦者の住所、氏名、電話番号の明記が求められ、艦艇の脇に張られたテント内で、隊員が乗艦と退艦時にそれぞれ、招待券の上下に付いている半券を切って、乗艦者数の確認作業をしていた。 観閲艦「くらま」は定刻通りに吉倉桟橋を出港、強い日差しが甲板に照りつけるほどの快晴の中、招待者は「風が気持ちいい」「遠くまでよく見える!」などと訓練海域に到着するまで“東京湾クルーズ”を楽しんだ。 本番と同様に観閲式典、訓練展示が時程どおりに行われ、実際に観閲官役を乗せたヘリが「くらま」の後部飛行甲板に着艦。招待者からは「迫力ある」「すごい!」と歓声が上がった。 甲板左舷では、ずらりと座った招待者らに「これからフレアーが発射されます」「あの辺りに潜水艦が浮上するはずです」と、案内の隊員が訓練展示の模様を解説するなど、3年に1度の観艦式を盛り上げていた。 一連の日程が終了後、約2時間の航海で横須賀に帰港。退艦時にも乗艦者の確認作業が一人ひとり入念に行われ、退艦時に半券を持っていなかった報道関係者が“拘束”される一幕もあったが、特に目立ったトラブルもなく観艦式の予行を終えた。