航空機整備で新管理体制
「過誤」を分析、教育
空自1術校 指導員養成コースを開設
ヒューマンエラーを防げ!

第1回「作業品質訓練指導員養成講習」を受講する全国の品質管理担当部署の隊員(5月27日、浜松1術校で)
空自は21年度から、「人的過誤(ヒューマンエラー)」に起因する事故を防止するため、人間の能力と行動特性に着目した「人的要因(ヒューマンファクター)」の考え方に基づく教育訓練やエラー分析手法などを取り入れた新たな品質管理体制の確立に着手、他に先駆けて航空機の整備の分野で試行を開始した。空自の航空機整備の教育を担う1術校(浜松)では5月26日から同29日まで、全国部隊から活動の中核となる品質管理担当部署の隊員22人が参加して第1回「作業品質訓練指導員養成講習」が開かれ、部隊と教育集団が一体となって試行を推進。今後はこの試行を踏まえ、地対空誘導弾、警戒管制レーダーなど航空機以外の整備でも同手法の導入を検討、将来的には空自の全整備職域で具体的なヒューマンエラー防止施策が展開される予定だ。
エラーの情報は共有
空自では航空分野における事故や事故に至る可能性があった事案(インシデント)の原因の中で、操縦士、航空士、航空交通管制官による運航面と、整備士による整備面で発生するヒューマンエラーに着目。平成14年度からはヒューマンエラーに起因する事故防止に焦点を当て、個人の能力を向上させる教育に取り組んできたものの、人間の能力と行動特性に着目した具体的施策が不十分だった。
このため、ヒューマンエラーに起因する事故の再発防止に向けた管理体制の強化に本格的に着手、19、20年度、1術校が主体となって品質管理担当者を対象にした部隊巡回教導や整備エラー調査分析講習、全整備員課程での教育などを試行的に実施。「エラーは環境により誘発され誰にでも起きる可能性がある」というヒューマンファクターの考え方に基づいたエラー調査分析手法や基礎知識を普及するとともに、新たな品質管理体制の土台作りに取り組んできた。
こうした流れを受けて、今年度から中央施策として航空機の整備分野で本格的にヒューマンファクターに関する教育訓練やエラー情報共有化のための体制作りがスタートした。
「作業品質管理」として新たに導入された品質管理体制は、「作業品質訓練」と「作業品質情報管理」からなり、「作業品質訓練」はさらに「ヒューマンファクター訓練」と「ベーシックマナー訓練」に分けられる。
このうち「ヒューマンファクター訓練」では、1術校に新設された指導員養成コースを履修した隊員の指導で、「人間の能力と限界に関する一般知識」などについて学ぶほか、コミュニケーションエラーや、第一印象や経験に伴う先入観の違いから生起するものの見方の差異などを体験する。隊員は知識の確認と意識高揚のため最低3年に1度、この訓練を受け、チームワークやリーダーシップ、状況認識などについてさらに知識を深める。
「ベーシックマナー訓練」は、部隊の各級指揮官等がチャートなどを用いて適宜、OJT的に現場で整備員を教育するもので、事故例などを用いて確実な動作や防護具の使用といった文字通り“基本動作”が“しつけ事項”として叩き込まれる。
一方、「作業品質情報管理」とは、エラー発生→調査・インタビュー→分析→対策立案・処置に至る一連の活動で得られた情報を他部隊と共有することで、同様なエラーの発生を防止することを目的としている。
これらの情報は1術校に集約され、再発防止に向けて有効活用できるよう再編集され、各部隊に配信される仕組みだが、この時、個々の事案の発生部隊名や個人名などのプライバシーに関する事項は含まれない。受信した部隊は事故の再発防止に向けてこれらの情報の有効活用を図る。
誘導弾などにも導入
「作業品質管理」の体制構築のため、1術校では現在、部隊の指導員や調査分析の中核となるインタビュアーを養成する指導員養成コースを開設、今年度は5月の講習を皮切りに2回目が8月、3回目が10月、4回目が来年2月にそれぞれ約20人の規模で4日間の日程で行われる予定。「作業品質管理」体制は今後、地対空誘導弾、警戒管制レーダーなど航空機以外の整備分野にも導入され、空自の2、3、4、5術校での導入も検討され始めている。
現在、航空機整備の現場では、F2戦闘機やE767早期警戒管制機など高度なシステムを持つ機体の導入で、整備員にはこれまで以上に幅広い知識と高度な技量が要求され、整備作業量の増加や精神的なストレスなども加わってヒューマンエラーの誘発要因が増大する傾向にある。
さらに、部隊新設や予算削減に伴う人員削減や器材等の再配分で過度のストレスが隊員にかかり、ヒューマンエラーの誘発要因は将来的にも増大することが指摘されている。
空幕整備課では、「エラーの調査分析は誰が起こしたかは問題ではなく、なぜ起こったのかを深く掘り下げてエラーの誘因を見い出し、有効な対策をとることが重要。1年間の試行を通じて、作業品質管理の体制の確立と22年度以降の正規化、航空機以外の装備品等の整備分野への導入に向けて取り組んでいきたい」と話している。