5月の朝雲ニュース

5/28日付

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護衛艦「あたご」と漁船「清徳丸」の衝突事故について
(艦船事故調査委員会による調査結果・要旨)
5月22日 防衛省

 1 事故当時の状況

 (1)「あたご」に対する教育・訓練等
 ○「あたご」は、就役後の訓練査閲において、総合判定は合格したものの、視界不良時の当直士官の見張りへの指示不十分、CICの活用不十分等が指摘されていた。
 ○艦長は、指摘について随時指導を行い、改善できたと考えていた。
 (2)当直体制
 ○基本的に4直体制であったが、乗員に装備認定試験の報告を作成する時間を与えるため、今回の航行中は5直体制だった。
 (3)艦橋における見張り当直員の配置
 ○第1直当直士官は、周囲の状況、見張り当直員の体調を考慮し、艦橋ウィングの見張り員を艦橋内に配置させる旨指示。
 ○第2直当直士官は、申し継ぎ時、艦橋内にいた見張り員をウィングに出そうと思っていたが、その後失念し、第2直においても見張り員は艦橋内で立直。
 (4)CIC当直員の減員
 ○電測員長は、船務長に無断で、第2直を除く各当直員先任者に対し、夜間には交代しながら立直して良いと指示。各当直員先任者は、それぞれ当直員を減員。
 ○事故当日の第1直(2時〜4時)は、前半の1時間は3名、後半の1時間は4名が立直。
 (5)自動衝突予防援助機能(ARPA機能)の設定・作動状況
 ○艦橋はCPA100ヤード、TCPA1分(※)で設定。
 ○CICはCPA0ヤード、TCPA0分で設定。事前に警報機能が作動する設定になっておらず。
 ○事故当時、レーダー画面に「清徳丸」のシンボルは入力されておらず、艦橋で警報機能は作動せず。
 ※シンボルを作成し追尾中である目標のCPA(自艦との最接近距離)が100ヤード(約90m)以内であり、かつ当該目標が1分以内にCPAに到達すると予測された場合に警報機能が作動する設定

 2 艦橋における目標の認識状況
 ○第1直当直士官は、見張りを適切に行っておらず、誤った内容を申し継いだ。
 ○第2直当直士官は、継続的な見張りを行っておらず、CICとの連携を図らなかった。
 3時40分頃〜3時47分頃:第1直当直士官は、右30度〜50度に3隻の白灯を視認するとともに、レーダーでも確認。レーダー画面上でシンボルを作成し、針路・速力を測定した結果、危険がない目標と判断し、3時45分頃から3時47分頃にかけて、作成したシンボルを消去。
 3時50分頃〜3時55分頃:第1直、第2直の当直士官が申し継ぎを実施。右前方の漁船群は「方位が落ちるので危険性なし」と申し継がれた。
 3時52分頃〜3時53分頃:第1直、第2直の信号員が申し継ぎを実施。第2直信号員Aは、申し継ぎ時、右約20度〜約50度、7000m〜8000mに目標を4隻視認。
 3時59分頃〜4時2分頃:第2直当直士官は、目視で、2隻の目標(レーダーでも確認)の方位が上り、3隻〜4隻の目標(うち1隻は、レーダーでも確認)の方位が落ちていることを確認。
 4時3分頃:第2直信号員Aは、視認している4隻のうち1隻の方位が上ることを確認し、第2直当直士官に報告したが、ほかの3隻は方位が落ちていると認識し、報告を行わず。その後、方位が落ちると認識していた3隻の目標のうち、一番右の目標の左舷灯より少し左斜め上方に、薄い緑の光が2、3回見え隠れしているのを視認。
 4時4分頃〜4時5分頃:第2直当直士官は、右約70度に2隻〜3隻の目標を視認し、距離が近いと認識したが、方位が落ちており衝突のおそれはないと判断。また、当該目標をレーダーで捜索したが、映像を確認できなかった。
 4時6分頃:第2直信号員Aは、右70度〜80度、200m〜300mに「清徳丸」を視認し第2直当直士官に報告。第2直当直士官は、当初、艦首方向の別の目標に関する報告と認識。
 4時6分少し過ぎ:第2直当直士官は、第2直信号員Aが「近い、近い、近い」と連呼しつつ右舷ウィングに移動したため右方向を確認し、右70度約100ヤードに「清徳丸」を視認。当初、この目標を新たな追い越しの漁船と認識し、目標を先に行かせるため「両舷停止、自動操舵やめ」を下令。
 その直後、第2直当直士官は「清徳丸」が「あたご」の艦首に向かっているのを確認して衝突の危険を感じ、汽笛短音6回を吹鳴、同時に「後進一杯」を下令。
 4時7分少し前:「あたご」と「清徳丸」が衝突。

 3 CICにおける目標の認識状況
 ○CICにおいては、レーダーで危険な目標を認識しておらず、また、目標に関する艦橋との連携が取れていなかった。
 ○CIC第1直後半のOPA―3F員(※)は、25海里レンジを主用してレーダー見張りを実施していたが、「あたご」に近づくような目標はなかった。また、CIC第1直後半の当直員の立直中、艦橋見張りからの目標に関する報告はなかった。
 ※OPAー3F、OPAー6E:レーダー指示機(レーダーの表示装置)の名称。
 このうちOPAー6Eは、艦橋のレーダー指示機OPAー6Eと連接されており、レーダー情報の共有が可能。また、OPAー6EはARPA機能を有している。
 ○第2直当直員は、周囲に危険な目標はない旨の申し継ぎを受けていた。
 ○3時58分頃、OPAー6E員は、レーダー画面上で新たに4つの目標のシンボルを作成した。その後、艦首を右から左へ横切る目標については認識し、艦橋と確認作業を実施していたところ、漁船と衝突した旨の艦内放送が流れた。

 4 事故の要因
 (1)直接的要因
 ○第2直当直士官の見張り指揮及び見張り並びに判断、処置不適切等
 ・CIC、見張り員等に関し、適切な捜索・測的指示や動静監視等の見張り指揮を行っていなかった。
 ・視認した漁船の方位が落ちることをもって衝突のおそれがないと安易に判断し、継続的な見張りを行わなかった。
 ・右前方の漁船が方位が落ちることのみをもって衝突のおそれがないと安易に判断し、艦長への報告や避航措置等の具体的な措置を採らずに航行した。
 ・艦内各部を適切に指揮することにより目標情報を共有し、各部の連携を図って目標の動静監視をする着意がなかった。
 ○艦橋・CICの連携不十分(第2直)
 (2)間接的要因
 ○第1直当直士官の見張り等の不適切
 ・レーダーで確認した目標について、短時間の測的により危険はない目標と判断し、作成したシンボルを消去した。また、その後、目標の方位を窓枠との相対位置で測り、衝突のおそれがない目標であると安易に判断した。
 さらに、当該目標について、見張り員等に対する継続監視の指示及びCICに対する目標の測的指示を行わなかった。
 ・第2直当直士官への申し継ぎの際、右前方の目標は停止しており危険な目標ではない、と誤った内容を申し継いだ。また、これらの目標をレーダーで探知し、シンボルを作成したが、危険はない目標と安易に判断し、CPA通過前にレーダー画面から消去した上で申し継ぎを行った。 等
 ○隊司令の指導監督不十分
 ○艦長の運航に関する指導不十分
 ○副長の艦長指揮補佐不十分
 ○船務長の電測員に対する運航補佐態勢及び当直体制に関する指導不十分
 ○CIC第1直先任者の艦橋との連携不十分及びレーダー捜索要領不適切
 ○CIC当直員の減員

 5 再発防止策
 1.見張り及び報告・通報態勢の強化
 報告・通報を含む見張り能力の向上、見張り指揮の徹底
 2.運航安全に係るチームワークの強化
 チームワーク強化策の実践、通常航海における各当直員の勤務要領の明確化
 3.運航関係者の能力向上による運航態勢の強化
 当直士官候補者に対する運航上の判断・処理能力の強化、当直士官等に対する練度評価(海技技能練度評定)の充実、集中基礎訓練の充実、艦艇長講習の充実
 4.隊司令による指導の徹底
 隷下部隊に対する運航態勢の評価、艦長に対する指導監督の徹底
 5.その他(既に実施されている再発防止策)
 自動操舵装置使用に関する措置要領の策定、簡易型艦橋音響等記録装置等の整備、報告・通報の適正化