1月の朝雲ニュース

1/29日付

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素顔の東ティモール<14>
小泉 友子
噂に尾ひれ、憎悪拡大
警察組織はもろくも瓦解


ディリ市内で警備に当たるポルトガルの文民警察官(2007年、JICA駐在員夫人の和田佳恵子さん撮影)

■避難民15万人
 耳元で銃声が聞こえるような一夜を過ごした夫たちは、翌日裏道を通って果敢に助けに来てくれた大使館員Oさんと運転手のおかげで窮地を脱することができた。そして4月の騒動は国軍の出動で一時収まったかに見えた。
 ところが5月4日、軍の憲兵隊長であるアルフレッド・レイナドが武器と兵士とともに軍を離脱、警察官の一部も武器を持って離脱した。彼らはアルカティリ前首相や軍の対応に反発し、西部出身兵士を擁護する立場をとって騒乱を拡大した。5月23日には警察本部が襲撃され、あっという間に東ティモールの警察が瓦解したのには、多くの関係者が驚き、新国家の地盤の危うさを身にしみて感じた。
 一方、ディリではアルフレッド一派に攻撃されるのではないかという噂が広まり、市民はつぎつぎと家を出て安全と思われる場所へ逃げた。20万人といわれる首都ディリの人口のうち、IDPと呼ばれる国内避難民の数は最大15万人にも達した。街は全ての店が閉ざされ走る車もなくガランとし、政府は一時閉鎖状態に陥った。外国人の国外退避も始まった。
 多くの人々が避難民化した理由は99年バイオレンスのトラウマによる恐怖への過剰反応ではないかと言われている。と同時に、この時すでに西部対東部のいがみ合いの図式が出来上がっていて、隣人に襲われるかもしれないという身近な恐怖があったからではと考えられる。軍部における東西の対立が市民にまで波及したかどうかは分からないが、東部出身者の家が焼かれた時、やったのは西部出身者だと決めつけ、仕返しに西部出身の家が焼かれたり投石されたりした。それまで仲良く暮らしていた隣人同士に憎悪の感情があっという間に広がってしまった。噂は怖い。通信手段が全くといっていいほどない国で口から口へと尾ひれがついて噂が拡大し、住民の間に疑心暗鬼を生んだのである。(続く)