2009年新春インタビュー 浜田靖一大臣に聞く
国防の原点に立ちかえろう
今年1年「信」を大事に
信頼回復に向けて
思想信条は自由でも自らの責務こそ第一
世界を覆う経済不安、先の見えない「テロとの闘い」など、不透明感の中で幕を明けた2009年。防衛省・自衛隊にとっても今年は、外にあって国際平和へのさらなる取り組みや、内にあっては不祥事の連鎖との決別など、重要課題に立ち向かい、健全にして精強な組織を確立する節目の年となる。こうしたときこそ隊員は「自衛隊の使命の自覚」という原点に立ち返るべき、と説く浜田靖一防衛大臣に、年頭の抱負を聞いた。(聞き手は中島毅一郎朝雲新聞社社長)
「国家をどのように守るか、そのために何ができるかという原点に立ちかえることが信頼回復への道」と語る浜田靖一防衛大臣(防衛省で)
イラク派遣部隊帰国しひと安心
中島毅一郎朝雲新聞社社長 昨年末に5年に及んだイラク復興支援活動が終了しました。大きな事故もなく各国からも高い評価を得ました。大臣のご感想を。
浜田靖一防衛大臣 今回、航空自衛隊が輸送支援活動を無事に終了して戻ってきました。隊員一人ひとりが自分の任務を全うしてくれたお陰だと思っています。また、国民の皆さん方をはじめ、大変なご支援をいただきました。特に隊員の家族の皆さん方に、いろいろなご苦労を乗り越えて支えていただいたお陰です。ちょうど副長官時代、陸上自衛隊を含めて最初の時の送り出しを石破長官に代わって、自分自身でやったものですから、そして家族の皆様方や隊員と一緒に写真を撮ったりしましたので、その時の緊張感が未だに忘れられません。イラクにおける自衛隊の活動が無事終わったということで、大変、ホッとしているところです。
中島 ゴラン高原では今もPKO活動が続いていますが、他にもスーダン、アフガニスタン、ソマリアの海賊対処などへの部隊派遣の是非が議論されています。大臣のお考えは。
浜田大臣 本来任務の中に国際協力活動が入っているので、その意味では多種多様な国際協力のお話があるわけで、我々としても当然、世界の中の日本として協力できるものは果たしていくべきだと思っています。
今、スーダンPKOに2名の司令部要員を出していますが、今のところ部隊の派遣は考えておりませんし、そういう状況にまだ至っていないということです。アフガニスタンについては、我々は既に今、補給支援活動をインド洋でやっており、補給支援特措法改正案も年末に成立しましたから、引き続き活動を継続します。陸上に関してはいろいろなご意見がありますけれども、今のところ、出て行くとなれば要件やニーズなどを十分に検討する必要もありますし、これからどうなるかは分かりませんが、今のところ法案も含めて方針を決めたことはない、ということです。
ソマリアの方は確かに、日本の船、特に日本のタンカー等の往来が激しくて、かなり危険な状態というのを船主協会の皆さん方もおっしゃっており、ニーズがあることは十分に承知していますが、今、総合海洋政策本部の方で政府全体としてどのように取り組むかということを議論している最中ですので、我々としてはそれを待たざるを得ないし、我々も検討に加わって一緒にやらせていただいているところです。いずれにしても日本の国益というものを考え、我々として出来る限りの努力をしていきたいと思っているところです。
中島 自衛隊によるこうした国際平和協力活動を本来任務として続けていくためには、やはり一般法の制定が不可欠と思われますが、見通しはいかがですか。
浜田大臣 国際貢献をする場合、いろいろな要請があったときに、一つずつ特措法をつくっていくというのは時間のかかる話ですし、そういう意味では一般法が存在すればいい。我々としては、一般法は重要だと思っております。ただ、国会の状況を見ますと難しいところもあるのかなと。党の議論の中では石破さんが素案を作られ、そこで議論させていただきましたが、残念ながら事後のPTではなかなか話が進みませんでした。やはり政治の場で議論していただいて、我々もそれに対して説明責任を果たしていくことが必要だと思っています。
中島 不祥事に関連して防衛省・自衛隊の信頼回復が至上命題となっていますが、どのように対処していかれますか。
浜田大臣 これは今、対策会議で再発を防ぐための手立てを考えているところです。それをしっかりと実行していくことが重要だと思っていますが、要するに、服務の宣誓をして自衛隊に入ってきた、その原点に一度かえっていただいて、そもそも、服務の本旨とは何か、任務とは何かということを改めて認識をしてもらわない限り、いくら手立てをしてもうまくいかないと思っているんです。
防衛省・自衛隊として一体感がなきゃいかん。それには目的を明確にするということが大変重要で、本来、我々の役割というのは、この国の安全保障、いわゆる安心・安全、また国家というものをどのように守っていくのか、そのために一体何をするのかということを考えれば、他のことを考えている暇はないはずなんですよ。ですから原点といえばそこに集約されるのかなと思います。責務の完遂を含む宣誓で、覚悟と目的を書いてあるわけですから、それを自衛隊員の皆さんにしっかりと、もう一度認識してもらう。そして、その責任は我々政治家がしっかりと果たしていく。
誰が悪いとか彼が悪いとかではなく、運用官庁としての防衛省・自衛隊というのは、本旨を忘れてはならんという思いがあるので、一体感をもって互いの信頼関係をもう一度築き上げること、これがもう絶対条件だと思っています。
中島 「田母神論文」事案では隊員の一部に混乱も見受けられます。
浜田大臣 今回の事案に関して明確なのは、確かに自衛官にもいろいろな信条、言論の自由があるのは当たり前の話です。今回の件に関していろいろな議論があっていいし、意見があっていいと思っています。ただ、今申し上げたように、自分たちの責務をいったいどのように考えるか。政治信条、自分の意見を持つのはいい。ですが、それは自衛隊員としての目的ではないわけですよ。自分の責務をいかに達成するのか、完遂するのか、日本という国をどうやって守るんだ、ということが目的なんですよ。それをここで明確にしておきたい。今回、別に歴史認識だとかで辞めていただいたわけではなく、まさに閣議決定によって任命された航空幕僚長という、自衛隊におけるトップの地位にある人間が政府の方針に反する意見を発表したのは、我々とすると看過できない。なおかつ、そこまでおっしゃるのならば、自分でお辞めくださいということを言ったが、残念ながら、そうされなかったので、それならば解任させていただいて今回の形になったわけです。歴史認識が間違っているからと自分の意見を述べられるのはいいのですが、しかし立場をわきまえていただかないと。我々とすれば見過ごすわけにいきませんので、私なりに結論を出させていただいたということです。
隊員の皆さん方には、こんなことに左右されずにもう一度、自分たちの目標をしっかりと見定めていただきたい。歴史認識はいろいろな意見があっていいが、自分に与えられた責務はどう果たすのか、日本の安全保障に対して自分たちは何ができるのか、ということです。いいかえれば自衛隊員の皆さん方はこうしたことに振り回されることなく、我々の目的をしっかりと受け止め、今まで通り仕事をしていただきたい。その点で私は、自衛隊員の皆さん方を信頼しています。
心を同じくすれば事は成就する

防衛行政の課題や部内の信頼関係の確立など、年頭に際して抱負を語る浜田大臣と、右は中島朝雲新聞社社長
中島 防衛行政では差し迫った課題として普天間移設、米海兵隊のグアム移転など在日米軍再編にかかわる事業がありますが、今後の展望はいかがですか。米側には2014年までの普天間移設は無理との見方もあるようですが。
浜田大臣 例えばワーキングチームを作って会合をやりましたが、ロードマップで決めたことをひとつずつ着実に進めていくというのが我々の今やり得ることだと思っています。米側の見方というのは、たぶん財政上の話をされたのではないかと思いますが、我々としては財政面も含めて、一生懸命努力しているところです。沖縄の皆さまには基地の問題ではいろいろなご迷惑をかけていますが、その結果、グアム移転の話も出てきているわけですから、課題はありますが、話し合いの中で我々のできることを明確にしながら進めていきたいと思っています。
中島 話は変わりますが、浜田大臣の政治家としての信条や好きな言葉などをお聞かせください。
浜田大臣 故渡辺美智雄先生がよく座右の銘で書かれていた「同心成就」という言葉がありまして、心を同じくすれば事は成就するという、私はこの言葉が好きですね。今、党においても防衛省・自衛隊においても同じことがいえるのかなと。まさに時宜を得た言葉だと思います。みんなが心をひとつにしないと物事は動いていきませんし、そういう意味で大好きな言葉です。政治信条も、難しいことを難しくしゃべるんじゃなくて、易しい言葉で、易しい政治に変えていくのが信条といえば信条なんですかね。大体において政治も政治家も難しくなり過ぎているような気がします。
中島 読書やスポーツは?
浜田大臣 好きな作家では北方謙三さんが好きですね。三国志も書かれましたし、水滸伝や続編の楊令伝というのも書かれていますけれども、北方さんのシリーズは大変好きで読ませていただいています。スポーツは好きですよ。千葉はゴルフ場がたくさんありますので、ゴルフも大変好きです.あとはスポーツ観戦ですか。野球を高校までやっていまして、あとは軟式野球を地域のクラブチームでやっていました。そのほかボウリングもやります。
中島 最後に年頭に当たって全国の隊員にメッセージをひとこと。
浜田大臣 自分を信じることと、お互いを信じること、信頼関係というものをぜひ今年は確立していただきたい。世の中はとかく、自分だけよければという風潮ですが、我々防衛省・自衛隊は「信」という言葉を大事にしながらぜひ今年1年、事故なく、大過なく、一致団結して任務にまい進していただければと思っております。まずその第一歩として、私自身、隊員の皆さんを信じる、ということから始めたい。