林芳正防衛相着任訓示
改革実現し本来任務へ
着任の初訓示で「一日も早く防衛省改革を実現し、本来任務に邁進を」と述べる林芳正防衛相(8月4日、防衛省講堂で)
このたび防衛大臣を拝命致しました林芳正です。国の防衛という国家存立の基本にかかわる崇高な任務を担うこととなり、光栄に感じるとともに、その使命と責任の重みを痛感しております。我が国の平和と独立を守り、さらには我が国が国際社会で求められている責任と役割を果たし、国民の負託に応えるため、全力で取り組んでまいる所存であります。
今般の防衛大臣着任に当たりましては、福田内閣総理大臣から職務遂行にかかる基本的な方針を指示されており、以下、この指示を踏まえた重点課題について申し述べることと致します。
まず、はじめに申し上げなければならないのは、現在の防衛省をめぐる喫緊の課題である防衛省改革であります。昨年来、明らかになった様々な不祥事や事故により、防衛省・自衛隊に対する国民の信頼が大きく損なわれていることは極めて深刻な事態であります。また、同時に、隊員諸官にあっても、同じ組織の一員として、大変つらい思いをしたのではないかと考えます。
これまでも官邸に設置された防衛省改革会議において検討が進められ、去る7月15日には、防衛省改革会議としての報告書が取りまとめられ、防衛省・自衛隊を再生させるための基本的方向性をお示しいただきましたが、私としては、防衛省・自衛隊に対する国民の信頼を回復するため、この報告書に盛り込まれた施策を一日でも早く実現するべく、全力を尽くしてまいる所存であります。
総理からも、不祥事や事故の発生により、ともすれば沈みがちな自衛隊の士気を喚起し、体制の整備に努め、もって国の安全を全うできる組織作りをせよとのご指示を受けております。反省すべき点を反省し、改善すべき点を改善しながら、誇りをもって元気に任務に邁進できる防衛省・自衛隊をつくっていきたいと考えます。
今後は、この総理指示と、石破前大臣の改革への強い意志・積極的な取り組みを引き継ぎ、報告書の内容を踏まえて、改革の実現に邁進してまいります。
次に、防衛省が取り組むべき主要課題について、私の所信を申し述べます。
現在、我が国は、大量破壊兵器等の拡散や国際テロなどの新たな脅威や多様な事態をはじめとして、様々な課題に直面しております。また、北朝鮮の核・ミサイル問題や、中国の軍事力の増大など、我が国周辺の安全保障環境は引き続き厳しいものがあります。
防衛省は、「専守防衛」「軍事大国とならない」等の防衛政策の基本を堅持しつつ、このような安全保障環境に適切に対処していかなければなりません。
そのためには、第一に、日米安全保障体制及びそれを基調とする米国との関係を、一層緊密にしてまいります。在日米軍の再編は、安全保障環境の変化に的確に対応し、抑止力を維持するとともに、関係地方公共団体や地元の方々の負担軽減を図るものであり、地元の声に真摯に耳を傾けながら、これを着実に進めていくことが必要です。米軍再編特措法に基づく措置を適切に講じつつ、関係大臣と連携して、関係自治体・住民の協力を得ながら、在日米軍の再編に万全を尽くす所存であります。
また、新たな安全保障環境において、日米両国が多様な課題に適切に対処し、抑止力を維持するため、日米同盟の実効性のさらなる向上に努めてまいります。
第二に、国際社会の責任ある一員として、今後とも国際平和協力活動に主体的・積極的に取り組んでまいります。自衛隊の国連平和維持活動は、その高い練度と規律をもって国際社会からも高い評価を受けています。
インド洋における海上自衛隊による補給支援活動、イラクにおける航空自衛隊による空輸活動は、我が国が平和国家として、国際社会共通の重要課題である「テロとの闘い」やイラクの復興に取り組む上で、重要な役割を果たしてきました。
とりわけインド洋における補給支援活動については、現行の補給支援特措法の期限を来年1月に控え、その後の扱いについては、今後国会等における主要な論点となると思われます。
さらに、イラク特措法についても来年7月に期限を迎えます。「テロとの闘い」、イラク復興支援のいずれについても、今後の取り組みについて、我が国として主体的に判断していく必要があります。今後とも、海外における自衛隊の活動について、国民の皆様のご理解をいただけるよう努めてまいります。
第三に、弾道ミサイル防衛システムの整備や運用の実効性の向上などをはじめとして、新たな脅威や多様な事態に実効的に対応できる防衛力を整備してまいる所存です。今後とも、この時代にふさわしい防衛力とはどのようなものかについて、この観点から適切に検討を進めてまいります。
第四に、テロや大規模災害などの様々な緊急事態に、より迅速かつ的確に対応できるよう、危機管理体制も一層強化してまいります。
本年6月14日に発生した岩手・宮城内陸地震をはじめとする各種の自然災害への自衛隊の迅速な対応に対して被災者の方々から感謝の声が寄せられました。自衛隊に対する国民の皆様の期待と信頼に応えられるよう、今後とも、国民の安全と安心を確保するため、より一層の取り組みを進めてまいります。
第五に、中国・韓国をはじめとした二国間の防衛交流や、防衛省による国際会議の主催など多国間の安全保障対話を進め、関係各国との間での信頼醸成を図ってまいります。
冒頭に申し上げたとおり、国民の安全と平和を守る我々の任務の重要性と責任の重さは、これからも決して変わることはありません。不祥事や事故が連続する中にあっても、士気の喚起、体制の整備に努め、国民の安全と平和を守るという本来の任務に邁進してほしいというのが、まさに今、国民の願うところであろうと考えます。
私は、ここに、我が国の防衛という崇高な任務に、隊員諸官とともに全身全霊で取り組むことを誓うとともに、隊員諸官が、各々に与えられた任務により一層精励されることを強く希望し、私の着任の訓示と致します。
林芳正(はやし・よしまさ)防衛相略歴
昭和36年1月、山口県生まれ。59年3月東京大学卒、平成6年6月ハーバード大学院卒。林義郎蔵相政務秘書官、同政策秘書を経て平成7年7月参院選に山口選挙区から立候補、初当選、現在3期目。議院運営委、商工委各委員、予算委理事、11年10月大蔵政務次官、財政金融委理事、予算委理事、16年10月外交防衛委員会委員長、18年1月議運委筆頭理事、同年9月内閣府副大臣。現在、参院予算委筆頭理事、同財政金融委委員、参院党政審会長代理、党政務調査会副会長。