米国防総省「06年QDR」
テロネットワークの打破など重視
特殊作戦能力を強化
同盟国と戦略的団結の意義強調
米国防総省はさる2月3日(日本時間4日)、「4年ごとの国防計画見直し」(QDR)を公表するとともに同6日、米議会に提出した。今回のQDR2006は、米国が現在、「長い戦いの下にある」との認識を示した上で、9・11以降のアフガニスタンやイラク、インド洋地震津波、ハリケーン災害など、これまでの4年間の経験を踏まえ、今後、米国が直面する課題のいずれにも対応できる能力・戦力構成などを示している。01年のQDRでは戦力構成を冷戦型の「脅威」対応から、テロなどの非対称型の事態にも対応できる能力重視に転換したが、今回はその能力をさらに具体化するとともに、前回の見直しで用いた「不安定の弧」や「四つの地域」といった特定の地域に焦点をあてず、伝統型、非正規型、壊滅型、混乱型の四つの課題を挙げ、いずれにも対応できるバランスのとれた能力の必要性を強調している。以下、06年QDRの特徴をまとめた。なお、本紙では近く06年QDR全訳の掲載を予定している。
中国の軍事力増強
地域均衡を危険にさらす
QDRはこれまで97年5月、01年9月に議会に提出されているが、今回から翌年の予算案が議会に提出されるまでに報告することとされたため、2月の公表となった。
06年QDRは昨年3月に公表された国防長官が示す指針「国家防衛戦略」と統参議長が示す軍事的指針「国家軍事戦略」に基づき、「戦略の実施」「能力及び戦力の再構成」「国防インフラの変革」「21世紀型『トータル・フォース』の構築」など序文を含め8章で構成されている。
今回のQDRで注目される点はいくつかあるが、防衛庁の分析によると、その一つは、01年QDRで戦力構成のアプローチを「脅威ベース」から「能力ベース」に転換したのに対し、今回は「能力ベース・アプローチ」をさらに具体化していること。
01年で使われていた「不安定の弧」や「四つの地域」といった特定の地域に焦点を当てず、四つの課題(伝統型、非正規型、壊滅型、混乱型)のいずれにも対応できるバランスのとれた能力へとシフトする必要性が強調されている。
その上で、伝統的な紛争抑止能力は十分保有しつつ、今後、焦点を当てるべき能力分野として(1)テロ・ネットワークの打破(2)本土防衛(3)戦略的岐路にある国家(ロシア、中国など)への関与強化(4)大量破壊兵器の阻止−−を指摘している。
「戦略的岐路にある国家の選択肢の形成」の中で、インド、ロシア、中国を含む潜在的大国の選択肢は今日の安全保障環境を決定する上で重要な要素としており、中国については次のように指摘している。
「中国は、米国と軍事的競争関係になり、対応策をとらなければ米国の軍事的優位を相殺して混乱を引き起こしかねない軍事技術を配備する潜在的能力が最も大きい」。
そして、戦略兵器に重点的に投資していることや、96年以来の国防費が03年を除き実質10%以上増加していること、意図や意思決定のほか、軍の近代化を支える主要な能力について不透明な点を指摘。「中国の軍備増強のペース・範囲は、既に地域の軍事バランスを危険にさらしている」と分析している。
注目点の二つ目は米国の戦力構成の見直しで、01年QDRのアプローチ戦略である(1)本土防衛(2)四つの重要地域(欧州、北東アジア、東アジア沿岸部、中東・南西アジア)における前方抑止(3)同時に二つの戦域での侵略者の迅速な打破と、うち一つの戦域で敵に決定的に勝利(4)限定的な小規模緊急事態への対処−−を、(1)本土防衛(2)テロとの闘い・非正規型戦闘(3)通常作戦−−という枠組みに変更した点だ。
防衛庁では、イラクのように戦いに勝っても戦後処理にてこずることを考えれば、迅速な勝利や決定的な勝利というのはテロとの戦いなどでは必ずしも有用な考え方ではなく、また、テロは世界のどの場所でも起きる可能性があることから、特定の場所を提示しなくなった、とみている。
主要な戦力構成の変化では、統合陸上戦力として陸軍部隊、司令部のモジュール化を継続。陸軍現役兵117個旅団(42個戦闘旅団+支援旅団75個)、陸軍州兵106個旅団(28個戦闘旅団+支援旅団78個)、陸軍予備役58個支援旅団の創設など、4000人規模の部隊に改編して有機性を持たせることを提案。これにより常時利用可能な戦闘力は46%向上するとしている。
特殊作戦能力の向上では、大隊数を33%増強するほか、心理戦・民生部隊を3500人増員、海兵隊の特殊作戦部隊(2600人)創設、UAV無人機部隊の創設などがある。
統合航空戦力では、空中給油可能な空母艦載型長距離無人機の開発や無人偵察機の調達加速など、航空戦力の無人化促進を提案。また、F22A戦闘機の生産拡大や86個の各種戦闘航空団を編成する一方、空軍定員の約4万人削減などが示されている。
統合海上戦力では、11個の空母打撃群を含む大規模な艦隊の整備と、戦闘艦艇の調達加速による沿岸地域の戦力投射能力の確保を挙げるとともに、太平洋地域に少なくとも空母6隻、潜水艦の6割を配備する、としている。
さらに統合機動力では兵站分野での再編、陸地に戦闘拠点を作れない場合の海上を利用した拠点作りの技術の追求などが挙げられている。
注目点の三つ目は「パートナーの重視」で、国防総省以外の国内関係省庁のほか、同盟国、パートナーとの協力が必須とする認識を示していること。
この中では、初めて日本についても記述、「過去4年間、NATOおよび豪州、日本、韓国などとの2国間同盟は、国際安全保障上の新たな脅威に直面する中、その活力と意義を維持するために順応してきた」とし、民主国家の戦略的団結や共通の価値観の促進、軍事・安全保障上の負担の分担を容易にすることなどの意義を強調している。