創刊70年を迎える『朝雲』は自衛隊の活動、安全保障問題全般を伝える
安保・防衛問題の専門紙です
会社情報
防衛省・自衛隊の専門紙『朝雲』は昭和27(1952)年6月1日、当時の警察予備隊共済組合(現・防衛庁共済組合)機関紙として第1号が発刊されました。
前年、発足直後の共済組合が福利厚生事業を進めるに当たって隊員の要望をアンケート調査した結果、部内紙の発行を求める声が最も多かったことから、年度重点施策として発行が決まったもので、国家地方警察本部(現・警察庁)の支援・協力で既に『日本公安時報・予備隊版』を発行していた株式会社日本保安時報社(朝雲新聞社の前身、1957年に社名変更)が、『朝雲』の取材・編集・制作を委託されました。
『朝雲』という題字は初代総隊総監(幕僚長)の林敬三氏(のち日本赤十字社社長、故人)が、「朝雲わけて 昇る陽に 平和の山河 今晴れて…」という警察予備隊隊歌「若鳩」の一節をとって命名しました。現在も使われている新聞の題字は初代の予備隊本部長官、増原惠吉氏の揮毫によるものです。当初はタブロイド判4ページで、月2回発行、5人に1部の割合で全部隊に配布されていましたが、機関紙に寄せる隊員の期待は大きく、間もなく旬刊を経て翌年には現在と同じ毎週木曜日発行の週刊化が実現、さらに昭和29(1954)年の防衛庁と陸・海・空三自衛隊体制の発足に伴い、紙面の一層の充実を図るため一般紙と同じ大判(ブランケット判)に変更、以後『朝雲』は防衛庁・三自衛隊の機関紙として順調に発展を続けました。
しかし、当時の政治・社会情勢は反自衛隊的な空気が強く、自衛官が制服で町に出ると「税金泥棒」などと罵声を浴びるような世相が続いていました。このため共済組合では、『朝雲』の使命を部内の福利厚生にとどめず、一般にも販路を拡大し、広く自衛隊を知ってもらうための有効な広報媒体として活用すべきとの観点から、編集に一般紙的な弾力性を持たせ、新聞らしく広告も掲載することを運営審議会で決定。それにふさわしい発行形態として昭和37(1962)年3月30日付で『朝雲』の発行権が防衛庁共済組合本部から株式会社朝雲新聞社に譲渡されました。
発行権譲渡と同時に、「『朝雲』編集連絡会議の設置及び運営に関する覚書」が両者の間で交わされ、紙面編集に当たって「相互の意思の疎通を図り、その適正を期するため」内局・各幕の広報、厚生関係者と朝雲新聞社の代表らによる会議が設置されました。しかし、実際の紙面制作は朝雲新聞社が主体的に行っていることから、昭和62(1987)年、同会議を解散、以後は、『朝雲賞』(部隊あるいは隊員・家族・OBから朝雲新聞社に寄せられた投稿記事・写真・所感文などの年間賞)選考のための会議に改め、年1回程度開催されています。
以上の経緯から、『朝雲』は発行主体が民間企業でありながら、主たる読者対象を防衛省・三自衛隊とする特異な活字媒体となっています。
編集の基本姿勢は、主たる読者層である隊員に力点をおいた事実の正確な報道・データの提供で、防衛行政の動きをはじめ、自衛隊の各種訓練、式典や行事、部隊の新改編・新装備など防衛力整備の状況、国際貢献活動、災害派遣や各種の民生協力、人事異動、自衛隊あるいは隊員の様々なトピックス、隊員・家族・OB・関係諸団体・一般読者からの所感文まで、一般の自衛隊報道・論評からは得られない多彩な防衛関連ニュースを読者に提供しています。さらに部外有識者の主張や論評などによって、安全保障問題に関する隊員の理解を助け、あるいは士気を高めるといった役割を果たしています。
近年、PKOなどの国際貢献活動をはじめ日米防衛協力での新たな役割など、自衛隊の任務は一段と多様化し、内外の期待と関心がますます高まっていますが、『朝雲』もまた、三自衛隊をつなぐ絆、隊員の新聞であると同時に、こうした社会的な関心にも応えうる専門紙としての役割が一層求められてきています。
●朝雲新聞社プロフィール | |
1950年3月 | 株式会社日本保安時報社(旧社名)設立 |
1950年7月 | 警察予備隊発足 |
1951年11月 | 警察予備隊共済組合発足、福利厚生事業として部隊内売店の経営や機関紙発行などを決める |
1952年6月 | 警察予備隊共済組合機関紙『朝雲』(旬刊、タブロイド判4ページ)創刊、編集・制作を委託される |
1954年7月 | 陸海空自衛隊体制が発足、これを機に大判・週刊化 |
1957年8月 | 株式会社朝雲新聞社に社名変更 |
1958年1月 | 防衛問題理論誌『国防』創刊(1994,4休刊) |
1962年3月 | 防衛庁共済組合から朝雲新聞社に『朝雲』発行権を譲渡 |
1963年3月 | 『自衛隊装備年鑑』創刊 |
1964年6月 | 隊員教養誌『月刊朝雲』創刊(1996,4休刊) |
1966年8月 | 防衛研修所(当時)戦史部による戦史叢書『大東亜戦争公刊戦史』の刊行開始、1980,1全102巻が完結 |
1975年3月 | 『防衛ハンドブック』創刊 |
1979年11月 | 英国際戦略研究所の『戦略概観』『ミリタリー・バランス』の版権取得、日本語版を刊行(1990版権譲渡) |
1979年12月 | 平和・安全保障研究所の『アジアの安全保障』を刊行 |
1991年12月 | 『湾岸の夜明け作戦全記録-海上自衛隊ペルシャ湾掃海派遣部隊の188日』刊行 |
1992年8月 | 月刊紙『自衛隊スポーツ』(ブランケット判4ページ)創刊 |
1995年3月 | 総理府の『ルワンダ難民救援国際平和協力業務記録写真集』委託制作 |
1996年11月 | CD-ROM版『自衛隊装備年鑑』刊行開始 |
1998年2月 | 東京都港区芝公園から東京都新宿区坂町に本社移転 |
2000年9月 | 陸上自衛隊創設50周年記念写真集『波乱の半世紀-陸上自衛隊の50年』刊行 |
2003年4月 | 『海上自衛隊創設50周年』刊行 |
2004年12月 | 『国際軍事データ2005-数字で読む明日の世界』刊行 |
2005年2月 | 航空自衛隊創設50周年記念写真集『FOR THE BLUE SKY-航空自衛隊の50年』刊行 |
2007年3月 | 『「朝雲」縮刷版2006』刊行 |
2013年4月 | 会員制サイト『朝雲アーカイブ』スタート |
2013年12月 | 『別冊「自衛隊装備年鑑」自衛隊総合戦力ガイド』刊行 |
2015年10月 | 『わかる平和安全法制-日本と世界の平和のために果たす自衛隊の役割』刊行 |