砂浜に乗り上げたLCAC上で、搭載車両の固定用チェーンを外して揚陸の準備を行う
(1月29日、宮城県岩沼市・二ノ倉海岸で)
海自1輸隊の大型輸送艦「くにさき」(8900トン、艦長・米田直人1佐以下約130人)による国際緊急援助活動等のための準備訓練が1月28、29の両日、宮城県石巻港などで行われた。訓練は陸自東北方の震災対処訓練と連動して行われ、緊急物資や陸自車両の搭載、CH47J大型輸送ヘリの発着艦訓練、エアクッション艇「LCAC」による揚陸訓練を実施、被災地への展開、物資輸送能力を見せつけた。訓練は報道陣に公開されたが、海自輸送艦はイラク人道復興支援のための人員・装備の輸送任務が目前に迫っていることから、2日間で延べ20数社約60人が取材に訪れた。
2月に就役1周年を迎える「くにさき」(定係港・呉)は、東北地方への寄港も国緊隊等の準備訓練も今回が初めて。派遣部隊を乗せて被災国に向かい、装備、人員を現地に降ろすという活動は国内の災害派遣にも有効なほか、東北方が今年1月から国緊隊の待機部隊となっていること、陸・海自の協同訓練は震災対処訓練にリアリティーを持たせるなど、双方のニーズが合致することから実施された。
震災対処訓練は宮城県沖地震を想定、図上・実動訓練で行われ、奥村快也東北方総監を統裁官に隊員約1100人が参加。宮城県、同県警、仙台市、石巻市などからも88人が参加した。「1月28日午前6時、宮城県沖を震源とするマグニチュード7・5、震度6強の地震が発生。宮城県内全域で強い揺れが発生」との想定で、9後支連長の桜木正朋1佐以下約80人、車両18両が初動対処部隊として石巻港雲雀野ふ頭に進出した。
ふ頭には「くにさき」が接岸。ここで緊急物資、車両搭載訓練が行われた。「くにさき」は右舷側のサイドランプを降ろし、浄水セットなどを積んだ車両を次々と収容。車両甲板後方のLCAC2隻には大・中型トラック計4台、航空電源車、小型トラック計4台がそれぞれ搭載され、固定用のタイダウンチェーンでカーゴデッキに固定された。
車両の搭載訓練は午前中2回行われ、この間、大久保博一6師団長、加藤誠22普連長、菊池敏明石巻海保署長(石巻港長)らが視察した。
午後はCH47Jヘリの発着艦訓練で、霞目駐屯地まで前進していたヘリ団(木更津)のCH47J1機が、北北西に艦首を向けた「くにさき」前方から時計回りに後方のヘリ甲板左側へ回り込み、右側から風を受けてのアプローチ。1回目は着艦せず、2回目に、両手に旗を持った「くにさき」信号員の合図に従って、ゆっくり甲板上に着艦した。
海自の信号員は甲板の動揺を計算に入れて、最適のタイミングで着艦を合図。陸自パイロットにとっては着陸地点が動揺すること自体が未経験のため、こうした合図に従って着艦するのは案外難しいという。CH47Jはこの後3回発着艦を繰り返し、霞目に戻った。
「くにさき」は翌日午前8時、石巻を出港。巨大な防舷物(岸壁と舷側の間のクッション材)の収容を陸自隊員も手伝う。この日は岩沼市・二ノ倉海岸で、LCACの揚陸訓練を予定。「くにさき」は仙台沖を過ぎ、岩沼市沖約6キロの洋上で停止した。
LCACには報道陣22人が2隻に分かれて体験搭乗。左舷前部コンパートメントに乗り込み、シートベルトを締める。中は狭く、各機器の冷却のため極端に寒い。ドア上部の丸窓を見上げても搭載車両の一部しか見えない。この日は波がなかったことから、大きな揺れを感じないまま二ノ倉海岸に到着した。LCACのスカートから空気が抜かれ、バウランプが下りと、まず大型トラック、続いて中型トラック3両が次々に揚陸した。
2隻目のLCACは後方洋上で待機。1隻目は車両を降ろすと、エンジンを始動。バウランプを上げ、スカートに空気が入り、バウスラスターの吹き出し口が左側を向くと、艇が左に滑り、砂ぼこりを巻き上げてそのまま海面に着水。洋上の「くにさき」に向かい、一気に滑走していった。
この日は午前と午後で2回ずつ揚陸訓練を実施。午後は一般公開され、付近の住民なども多数見学に訪れて迫力満点の上陸シーンに見入っていた。訓練は最後のLCACの揚陸、帰艦で無事終了した。
|