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アジア・太平洋方面の前方展開戦略の中核を担う米原子力空母「ジョージ・ワシントン(GW)」入港の朝、横須賀市内では配備に反対するデモなどに警察が厳しい警備態勢を敷いたのに対して、米基地内ではお祭りを前にしたような高揚感に包まれていた。
「GW」が接岸する12号バースでは早朝から乗員の家族らが手作りの横断幕や看板を準備、星条旗をイメージした青白赤の3色テープやリボンがなびき、港内に停泊する7艦隊旗艦「ブルーリッジ」は満艦飾。陸自武山駐屯地からは31普連「武山自衛太鼓」も参加し、隊員16人がそろいの法被を着て和太鼓の演奏準備に入るなど、岸壁は歓迎一色に包まれた。
港内を見下ろす丘には中国など近隣国を含む報道陣約140人、岸壁には中継車6台が並び「GW」の接岸を今や遅しと待ち構えていた。
午前10時すぎ、リボンに見立てた3色のもやい綱を艦首に付けた「GW」が巨体を現すと、バース先端で待ち受けた家族らから大歓声が上がった。全長330メートルの「GW」では、舷側に乗員が艦載機をバックにして登舷礼式で並び、飛行甲板上には「はじめまして」の人文字が描かれている。
タグボートの助けを借りて接岸を終えるまでの1時間ほどの間、家族らは艦上の夫や父親を見つけては終始声援を送り続けていた。

タグボートの誘導で横須賀の米海軍基地に入港する米原子力空母「ジョージ・ワシントン」。飛行甲板にはFA18戦闘攻撃機などの艦載機群とともに、乗員による「はじめまして」の人文字が描かれている(写真はいずれも9月25日、横須賀で)
ひと足先に来日し、手づくりのボードや横断幕を掲げて「ジョージ・ワシントン」を出迎える乗員の家族たち

「GW配備は日米両国の努力・忍耐・ビジョンの結果」と述べるシーファー米大使(中央)と、左は赤星海幕長
「GW」入港歓迎行事では日米関係者ら約5000人が横須賀の米海軍基地岸壁を埋めた
入港時、飛行甲板の舷側に登舷礼式で並ぶ「GW」乗員。下に見えるのは新型の対空ミサイルRAM
機首に漢字で「攻」の字が描かれた飛行甲板上のEA6電子戦機。「GW」には艦載機約75機の搭載が可能だ

格納庫内に展示されたFA18の搭載武器。左が滑空爆弾AGM154「JSOW」、右はレーザー誘導爆弾GBU24

接岸中のテロなどを警戒、「GW」の乗艦口付近でショットガンを構え、周囲に目を配る迷彩服姿の女性兵士

「GW」(中央)を西太平洋で出迎え、初の共同訓練を行うイージス艦「こんごう」など海自艦艇(9月24日)
最新ミサイルや誘導爆弾公開
午前10時40分すぎから始まった入港歓迎行事では、まず日米ネービー合同の音楽隊が両国国歌を演奏。最初にシーファー米大使が式台に立ち、「日米のどちらかが(他国から)脅威を感じれば、どちらの国も安心できない。われわれは日米同盟の恩恵をそれぞれの国民に対して守る用意がなければならない」とあいさつ。
大使は続けて「日米同盟は便宜上のものではなく、はっきりとした目的をもつ。それはわれわれが享受するようになった生活であり、共有する価値観を守ることだ。アメリカはGWが日本と世界の海での安全を担保するため、力の及ぶかぎりすべてのことを行う」と述べた。
続いてウィンター海軍長官が「米軍の極東におけるプレゼンスは日本に経済的・安全保障上の利益をもたらすと同時に、公海を共有し平時の共通利害を共有するパートナーとして日米両国相互に利益をもたらしている」と、GW配備の意義を強調した。
外務省の西宮北米局長は前日に就任した中曽根外務大臣のメッセージを代読、「わが国の外交は強固な日米同盟をその要とする。米建国の父の名を冠するGW号が西太平洋に前方展開することは強固な日米同盟を象徴するものであり、日本政府として心から歓迎する」と述べた。
赤星海幕長、7艦隊司令官のあいさつに続いて最後に「GW」のジョン・ヘイリー艦長が登壇。「本艦のモットーは“自由の精神”。日本に来られてたいへん光栄であり、とてもうれしい。GW号入港で会場や式を完ぺきにアレンジしてくれた皆さんに心から感謝したい」と述べた後、蒲谷横須賀市長に向かって「市長、これから乗員を降ろします。航海中に父親になった乗員が最初に降ります。初めて会う赤ん坊とのファーストキスを許してください」と言うと、大きな拍手と歓声が上がり、次々と乗員たちが艦から降りて岸壁で家族たちと抱き合った。
この後、「GW」の姉妹艦となった海自護衛艦「しらね」の中尾博孝艦長とヘイリー艦長が記念の盾を交換して、今後の交流を約した。
艦のモットーは“自由の精神”
式後に開かれた記者会見で、「GW」のネットワーク能力について聞かれたヘイリー艦長は、同艦が航空からの攻撃に対処するため、最新の広域ネットワーク型防空システム「CEC(共同交戦能力)」を装備し、イージス艦や空中警戒機などの各種ネットワークを連接した形で作戦を行っていると説明。
また、ウィンター海軍長官は「GW」が搭載する原子炉の安全性について「米国の原子力艦の安全記録を見てもらえば分かるように、原子力艦は厳しく管理され、乗員も高い訓練を受け、正しく操縦しているので安全には自信がある」と述べた。
「もし事故が起きたら」との質問にシーファー大使は、「日米は友好国であり、友人同士とは互いに隠しごとをしないもの。われわれはどのような事態が起きても、日本側に知っていることをきちんと伝え、パートナーとしてきちんと対処していく」と話した。
この日は「GW」の格納庫や飛行甲板に並べられた艦載機も報道陣に公開された。
格納庫ではFA18戦闘攻撃機と同機に搭載する最新ミサイルや爆弾を展示。このうち滑空用の翼が付いたAGM154「JSOW」は、高高度から投下された後に翼を開き、グライダーのように滑空、飛距離は70キロにも及ぶ長距離スタンド・オフ爆弾で、GPS/慣性誘導で最終誘導され目標を直撃する。ほかにレーザー誘導爆弾GBU24、長射程対地ミサイルAGM84Kなども展示された。
飛行甲板には多数のFA18のほかE2空中警戒機、EA6電子戦機、SH60哨戒ヘリなどが翼を折り畳んだ状態で駐機。ヘイリー艦長によると「GW」は短期の横須賀寄港後、すぐ出港するため、航空機を搭載したまま入港した。
原子力空母「ジョージ・ワシントン」(CVN73)諸元
世界最大の軍艦「ニミッツ」級空母の6番艦で1992年7月4日に就役。満載排水量9万7000トン。全長約330メートル、全幅約77メートル、喫水約11メートル。機関はA4原子炉2基、4軸。最大速力30ノット(約56キロ)以上。カタパルト数4基。乗員・航空要員は5500人以上。艦載機はFA18戦闘攻撃機、E2空中警戒機、EA6電子戦機、SH60哨戒ヘリなど約75機。
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