「朝雲」グラフ特集

PSI訓練詳報
高速ボートで容疑船へ
各国それぞれの乗船検査


「いかづち」の立ち入り検査チームを乗せて海上を疾走する高速ゴムボートRHIB(10月13日)

日本の2度目の主催となるPSI海上阻止訓練「パシフィック・シールド07」は10月13日から15日まで、日、米、英、豪、仏、シンガポール、ニュージーランドの7カ国が参加し、大量破壊兵器関連物資の拡散を海上阻止する要領をオブザーバー参加の35カ国の前で演練した。自衛隊は海自護衛艦「いかづち」の立ち入り検査チームが洋上での乗船から立ち入り検査要領までを2日間にわたって実施。また、陸自中央即応集団の101特殊武器防護隊が化学剤の検知、除染作業を行った。以下は3日間にわたった訓練の模様−−。

 高速ゴムボート「RHIB」で容疑船に接舷、そそり立つ舷側を縄ばしごで登る護衛艦「いかづち」立ち入り検査チーム(10月13日、伊豆大島東方沖で)

 容疑船の前甲板に乗船チームをリペリング降下させる英海軍のHM・Mk1哨戒ヘリ(10月13日)
 ◇1日目(10月13日)
初日の演練項目は「洋上での捜索、発見、追尾、及び乗船に関する訓練」。洋上で、参加艦艇がそれぞれ設定している状況に基づいて容疑船を捜索し、発見、追尾の後、乗船チームが高速のゴムボート(RHIB)で乗船するまでの要領を演練した。
訓練参加艦艇は米海軍のミサイル駆逐艦「マッキャンベル」、豪海軍のアンザック級フリゲート「パース」、海自の「いかづち」、英海軍のデューク級フリゲート「モンマス」、仏海軍のフローラル級フリゲート「ヴァンデミエール」。シンガポール海軍乗船チームは「マッキャンベル」に同乗。また、訓練統制艦として護衛艦「まきなみ」が参加したほか、多用途支援艦「すおう」が警戒に当たった。各国は米・豪、日・英、仏・シンガポールの3組に分かれ、容疑船を務める海自試験艦「あすか」、米輸送船「ハリー・L・マーティン」、海自掃海母艦「うらが」を相手に、それぞれ乗船までの一連の流れをオブザーバー国などに披露した。
横須賀新港などから出港し、訓練海域の伊豆大島東方沖に近づくにつれて、参加艦艇は訓練態勢に占位。目標海域に到着後の午前10時半、まず米、日、仏が訓練を開始した。
「いかづち」はニュージーランド空軍のP3K哨戒機、空自早期警戒管制機E767(AWACS)などから送られてくる位置情報などをもとに容疑船「ハリー・L・マーティン」を発見、追尾し、停船命令を伝えた。命令を受けた容疑船からは縄ばしごが下がっている。「いかづち」右舷からRHIBが海面に下ろされ、黒ずくめの立ち入り検査チーム隊員が次々に乗船。RHIBは海面を跳ねるように容疑船に接近し、右舷側の縄ばしご下に接舷すると、検査チームは1人ずつ、素早くはしごを上って乗船した。
次いで豪、英、シンガポールの組が訓練を開始。英海軍「モンマス」チームが艦載のHM・Mk1対潜哨戒ヘリとRHIBによる乗船要領を展示。海自のP3C哨戒機から情報を得て「モンマス」飛行甲板からHM・Mk1が発艦し、容疑船上に立ち入り検査チームメンバーをリペリング降下させるとともに、左舷側からもRHIBでチームを乗船させ、この日の訓練を終了した。

模擬拳銃手に船内へ 「いかづち」乗員


 容疑船役の「あすか」に乗船し、模擬拳銃を手に船内の異状の有無を確認する「いかづち」立ち入り検査チーム(10月14日)


 「あすか」前甲板で容疑船乗組員役の隊員に指示を出す米海軍の乗船チーム(10月14日、横須賀新港で)

 ◇2日目(10月14日)
この日は横須賀新港に停泊した試験艦「あすか」を容疑船に見立て、洋上を想定した乗船、立ち入り検査訓練が行われた。
1番手は米海軍チーム。この日はRHIBを使わず、陸側から容疑船に乗船した米チームは、青い模擬小銃の銃口を下に構え、容疑船乗組員に扮した海自隊員4人のいる船首に向かい、自分たちが米海軍乗船チームであることを告げると、続いて船員証を確認し、乗組員が何人いるかなどを質問。身体検査などを行った後、後部格納庫に移動し、容疑物資を発見するまでを演練した。
続く英海軍はRHIBで乗船。「あすか」中央部に下ろされた縄ばしごを1人ずつ上った英チームは、左右両舷の船首、船尾の異状の有無を確認し、全員の乗船後、一部が艦橋に向かった。船員は船首に集められ、艦橋では船長役の隊員が航海スケジュール、積荷目録などを提出。この後、後部格納庫を捜索し、発見した容疑物資を写真撮影。このデータは艦橋の隊員にメール送信し、無線で指示を仰ぐまでを展示した。
豪チームは海軍と税関の混成で、格納庫で先端に鏡の付いた棒で不審物を捜索し、発見後は黄色いビニールテープで現場を封鎖し写真撮影。模擬拳銃を手にした仏チームは、不審物発見後、自分たちでは触れずに、船員を連れてきて選別させ、容疑物資を運ばせた。またシンガポール・チームは陸上から乗船。他チームと同様に船首に船員を並ばせ、艦橋の隊員と連絡を取りながら容疑物資発見までを演練した。
最後は「いかづち」チーム。最初の1人がRHIBから乗船後、素早く周囲の安全を確認し、「上甲板クリア、乗船支障なし」とRHIB上に伝えると、赤い模擬拳銃を手にした黒ずくめの隊員が次々に乗船。常に数人がはしごの両脇を固め、乗船する隊員を守っている。隊員はすばやく両舷、船首、船尾の安全を確認後、船員を確保し、艦橋、艦首、艦尾に散った。
格納庫の捜索では仏チームと同じように、不審物は船員に選別させ、発見後は無線で艦橋に報告。指示を待つ間、船員を取り囲みながらも「リラックス」と声を掛け、落ち着かせていた。それらの様子は常にビデオカメラに記録。そこで2日目の状況を終了した。

陸自101特殊武器防護隊
積荷から化学剤! 手際よく検知・除染

 除染作業を前に防護マスクやボンベなどの装備を点検する101特殊武器防護隊(10月15日、横浜港大さん橋で)

 化学物質が漏れ出したという想定で、積荷のドラム缶の周囲を除染する101特殊武器防護隊員

◇3日目(10月15日)
この日は横浜港大さん橋ターミナルで、陸自、警視庁・神奈川県警、横浜税関、海上保安庁の4機関と、シンガポール、米、豪の3カ国が参加して船舶の積荷のコンテナから化学物質が漏れ出したなどとの想定で訓練が行われた。
最初は化学防護衣と防護マスクを付けた4人のシンガポール軍の化学物質検出班が埠頭に置かれたコンテナに近づき、検知器を扉に当てるなどして外側から慎重に検査。コンテナ周辺で3人が検知器をモニターする中、1人が扉を開けてコンテナ内に進入し、不審物がないかをチェック。その後、後方で待機していた隊員が防護衣の上から一人ずつ検知器を使って汚染状況を確認した。
続いて、ドラム缶から有毒な化学物質がもれ出したとの想定で陸自中央即応集団の101特殊武器防護隊が訓練を展示。除染車とトラックなど計6両の車両が現場に到着すると、防護マスクと空気マスクを装着した偵察班の4人が周囲に展開し、携帯式化学物質識別装置を使用して汚染エリアを確定した。
次いで除染班の8人がドラム缶の周囲を噴霧器で除染。汚染された水の飛散を防ぐためドラム缶にシートを敷き、マウントで囲ったあと、最後に除染班の隊員をスプレーガンで洗浄して除染作業を終えた。
海上保安庁、税関、警視庁、神奈川県警の合同チームは、毒劇物シアン化ナトリウムの入ったコンテナを積んだ不審船が入港したとの想定で訓練を展示。不審船を接岸させて船内を検査し、船長に積荷のコンテナを開けさせたところ、中からシアン化ナトリウムの入った容器を発見。化学防護服をまとった警視庁NBCテロ捜査隊が迅速に処理した。
豪の税関チームは、日本の税関チームと協力してコンテナ内を外側からX線撮影して不審物がないかを調査。警戒線の確定から不審物を処理するまでの手順を展示して訓練を終了した。