防衛関係資料


 

国民保護法案要綱(要旨)

2月24日、国民保護法制整備本部で了承された国民保護法案(武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律案)要綱の要旨は次の通り。

第1 総則
第2 避難に関する措置
第3 救援に関する措置
第4 武力攻撃災害への対処に関する措置
第5 国民生活の安定に関する措置
第6 復旧その他の措置
第7 財政上の措置等
第8 緊急対処事態に対処するための措置
第9 雑則
第10 罰則

第1 総則

 1 通則

(1)目的
・武力攻撃事態等における国、地方公共団体等の責務、国民の協力その他の必要な事項を定めることにより、武力攻撃事態対処法と相まって、国全体として万全な態勢を整備し、国民の保護のための措置を的確かつ迅速に実施することを目的とする。

(2)国、地方公共団体等の責務
・国は、国民の安全を確保するため、武力攻撃事態等に備えて、あらかじめ、国民の保護のための措置の実施に関する基本的な方針を定めるとともに、武力攻撃事態等においては、その組織及び機能のすべてを挙げて自ら国民の保護のための措置を的確かつ迅速に実施し、又は地方公共団体及び指定公共機関が実施する国民の保護のための措置を的確かつ迅速に支援し、並びに国民の保護のための措置に関し国費による適切な措置を講ずること等により、国全体として万全の体制を整備する責務を有する。
・地方公共団体は、国があらかじめ定める国民の保護のための措置の実施に関する基本的な方針に基づき、武力攻撃事態等においては、自ら国民の保護のための措置を的確かつ迅速に実施し、及び当該地方公共団体の区域において関係機関が実施する国民の保護のための措置を総合的に推進する責務を有する。
・国、地方公共団体並びに指定公共機関及び指定地方公共機関(以下「指定公共機関等」という。)は、相互に連携協力しなければならない。

(3)国民の協力
・国民は、国民の保護のための措置の実施に関し協力を要請されたときは、必要な協力をするよう努めるものとする。
・協力は国民の自発的な意思にゆだねられるものであって、いやしくもその要請に当たって強制されることがあってはならない。
・国及び地方公共団体は、自主防災組織やボランティアにより行われる国民の保護のための措置に資するための自発的活動に対し、必要な支援を行うよう努めなければならない。

(4)人権の尊重等
・国民の保護のための措置を実施するに当たっては、基本的人権が尊重されなければならず、この場合においては、国民を差別的に取り扱ってはならず、思想及び良心の自由並びに表現の自由を侵してはならない。
・国民の保護のための措置の実施に伴う損失補償、不服申立て又は訴訟その他の国民の権利利益の救済に係る手続について、できる限り迅速に処理するよう努めなければならない。
・国及び地方公共団体は、日本赤十字社が実施する国民の保護のための措置については、その特性にかんがみ、その自主性を尊重しなければならない。
・国及び地方公共団体は、放送事業者である指定公共機関等が実施する国民の保護のための措置については、その言論その他表現の自由に特に配慮しなければならない。
・国及び地方公共団体は、武力攻撃事態等においては、国民の保護のための措置に関し、国民に対し、正確な情報を、適時に、かつ、適切な方法で提供しなければならない。
・国民の保護のための措置を実施するに当たっては、高齢者、障害者その他特に配慮を要する者の保護について留意しなければならない。
・国民の保護のための措置を実施するに当たっては、国際的な武力紛争において適用される国際人道法の的確な実施を確保しなければならない。

(5)指定地方公共機関
・都道府県知事は、当該都道府県の区域において電気、ガス、輸送、通信、医療その他の公益的事業を営む法人、地方道路公社その他の公共的施設の管理者等の中から、指定地方公共機関を指定することができる。

 2 国民の保護のための措置

(1)国の国民の保護のための措置
・国は、武力攻撃事態等への対処に関する基本的な方針(以下「対処基本方針」という。)及び国民の保護に関する基本指針(以下「基本指針」という。)に基づき、次に掲げる国が行う国民の保護のための措置を総合的に推進するものとする。
1)警報の発令
2)都道府県知事に対する避難措置の指示
3)都道府県知事に対する救援の指示
4)都道府県知事に対する武力攻撃災害への対処に関する指示
5)放射性物質等による汚染への対処
6)危険物質等に関する危険の防止に係る措置命令など

(2)都道府県の国民の保護のための措置
・都道府県知事は、この法律その他法律の規定に基づき、国民の保護に関する計画の定めるところにより、次に掲げる国民の保護のための措置を実施するものとする。
1)避難の指示その他の住民の避難に関する措置
2)避難住民等の救援、安否情報の収集及び提供その他の救援に関する措置
3)武力攻撃災害の防除及び軽減、緊急通報の発令、退避の指示、警戒区域の設定、保健衛生の確保、被災情報の収集その他の武力攻撃災害への対処に関する措置
4)生活関連物資等の価格の安定その他の国民生活の安定に関する措置など
・都道府県の委員会又は委員は、都道府県知事の所轄の下に国民の保護のための措置を実施しなければならない。
・都道府県知事は、必要があるときは、指定行政機関の長又は指定地方行政機関の長に対し、国民の保護のための措置の実施を要請することができる。
・都道府県知事は、市町村がその全部又は大部分の事務を行うことができなくなったときは、当該市町村長が実施すべき国民の保護のための措置の全部又は一部を代行しなければならない。
・都道府県知事は、国民の保護のため必要があるときは、防衛庁長官に対し、自衛隊の部隊等の派遣を要請することができる。要請がない場合において緊急を要するときは、武力攻撃事態等対策本部長(以下「対策本部長」という。)は、防衛庁長官に対し、自衛隊の部隊等の派遣を求めることができる。

(3)市町村の国民の保護のための措置
・市町村長は、この法律その他法律の規定に基づき、国民の保護に関する計画の定めるところにより、次に掲げる国民の保護のための措置を実施するものとする。
1)警報の伝達、避難実施要領の策定、関係機関との調整その他の住民の避難に関する措置
2)避難住民等の救援(市町村が行うこととされた場合に限る。)、安否情報の収集及び提供その他の救援に関する措置
3)退避の指示、警戒区域の設定、消防、廃棄物の処理、被災情報の収集その他の武力攻撃災害への対処に関する措置など
・市町村の委員会又は委員は、市町村長の所轄の下に国民の保護のための措置を実施しなければならない。
・市町村長は、必要があるときは、都道府県知事に対し、国民の保護のための措置の実施を要請することができる。また、都道府県知事に対し、指定行政機関の長又は指定地方行政機関の長に国民の保護のための措置の実施を要請するよう求めることができる。
・市町村長は、国民の保護のため特に必要があるときは、都道府県知事に対し、自衛隊の部隊等の派遣を要請するよう求めることができる。当該求めができないときは、国民の保護のための措置を円滑に実施するため必要な事項を防衛庁長官に連絡することができる。この場合において、防衛庁長官は、速やかに、その内容を対策本部長に報告しなければならない。

(4)指定公共機関等の国民の保護のための措置
・指定公共機関等は、この法律その他法律の規定に基づき、国民の保護に関する計画の定めるところにより、国民の保護のための措置を実施しなければならない。
・指定公共機関等は、特に必要があるときは、指定行政機関の長若しくは指定地方行政機関の長又は地方公共団体の長に対し、応援を求めることができる。指定行政機関の長若しくは指定地方行政機関の長又は地方公共団体の長は、指定公共機関等に対し、国民の保護のための措置の実施を要請できる。

(5)武力攻撃等の状況等の公表
・対策本部長は、武力攻撃及び武力攻撃災害の状況並びに国民の保護のための措置の実施の状況の情報を適時にかつ適切な方法で国民に提供しなければならない。

 3 国民の保護のための措置の実施に係る体制

(1)対策本部の所掌事務
・武力攻撃事態等対策本部((1)において「対策本部」という。)は、指定行政機関、地方公共団体及び指定公共機関が実施する国民の保護のための措置を総合的に推進する。
・対策本部は、上記のほか、この法律に規定された対策本部長の権限に関する事務をつかさどる。

(2)都道府県対策本部及び市町村対策本部を設置すべき地方公共団体の指定
・内閣総理大臣は、都道府県国民保護対策本部(以下「都道府県対策本部」という。)を設置すべき都道府県及び市町村国民保護対策本部(以下「市町村対策本部」という。)を設置すべき市町村の指定につき、閣議の決定を求めなければならない。

(3)都道府県対策本部及び市町村対策本部の設置
・地方公共団体の長は、指定につき通知を受けたときは、直ちに、都道府県対策本部又は市町村対策本部を設置しなければならない。
・都道府県知事及び市町村長は、都道府県対策本部を設置すべき都道府県又は市町村対策本部を設置すべき市町村に指定することを内閣総理大臣に要請することができる。
・地方公共団体は、本部の設置の有無にかかわらず、この法律で定めるところにより、国民の保護のための措置を実施することができる。
・都道府県対策本部又は市町村対策本部の長は、都道府県国民保護対策本部長(以下「都道府県対策本部長」という。)又は市町村国民保護対策本部長(以下「市町村対策本部長」という。)とし、それぞれ都道府県知事又は市町村長をもって充てる。
・都道府県対策本部長又は市町村対策本部長は、必要があるときは、国の職員その他当該地方公共団体の職員以外の者を都道府県対策本部又は市町村対策本部の会議に出席させることができる。
・防衛庁長官は、都道府県対策本部長の求めがあった場合において、国民の保護のための措置の実施に関し連絡調整を行う必要があるときは、その指定する職員を都道府県対策本部の会議に出席させるものとする。

(4)都道府県対策本部及び市町村対策本部の所掌事務
・都道府県対策本部は、地方公共団体並びに指定公共機関等が実施する当該都道府県の地域に係る国民の保護のための措置を総合的に推進する。
・市町村対策本部は、当該市町村が実施する国民の保護のための措置を総合的に推進する。

(5)都道府県対策本部長及び市町村対策本部長の権限
・都道府県対策本部長は、当該都道府県、市町村及び指定公共機関等が実施する国民の保護のための措置に関する総合調整を行うことができる。
・都道府県対策本部長は、必要があるときは、指定地方行政機関の長(指定地方行政機関がないときは、指定行政機関の長)又は指定公共機関に対し、その指名する職員を派遣するよう求めることができる。
・都道府県対策本部長は、指定行政機関及び指定公共機関の国民の保護のための措置の実施に関し、調整を行う必要があるときは、対策本部長に対し、総合調整を行うことを要請することができる。対策本部長は、当該要請があったときは、所要の総合調整を行わなければならない。
・市町村対策本部長は、当該市町村が実施する国民の保護のための措置に関する総合調整を行うことができる。
・市町村対策本部長は、都道府県及び指定公共機関等の国民の保護のための措置の実施に関し、調整を行う必要があるときは、都道府県対策本部長に対し、総合調整を行うことを要請することができる。都道府県対策本部長は、当該要請があったときは、所要の総合調整を行わなければならない。また、市町村対策本部長は、指定行政機関及び指定公共機関の国民の保護のための措置の実施に関し、調整を行う必要があるときは、都道府県対策本部長に対し、対策本部長に対する総合調整の要請を行うよう求めることができる。
・都道府県対策本部長又は市町村対策本部長は、対策本部長又は都道府県対策本部長に対し、必要な情報の提供を求めることができる。
・都道府県対策本部長又は市町村対策本部長は、総合調整を行うため必要があるときは、関係機関に対し、国民の保護のための措置の実施状況に関して報告又は資料の提出を求めることができる。
・都道府県対策本部長は当該都道府県警察又は当該都道府県の教育委員会に対し、市町村対策本部長は当該市町村の教育委員会に対し、必要な限度において、必要な措置を講ずるよう求めることができる。

 4 基本指針

(1)政府は、武力攻撃事態等に備え、あらかじめ、国民の保護のための措置の実施に関し、基本指針を定めなければならない。
(2)基本指針に定める事項は、次のとおりとする。
・国民の保護のための措置の実施に関する基本的な方針
・想定される武力攻撃事態の類型
・警報の発令、避難の指示、被災者等の救援、武力攻撃災害への対処等国民の保護のための措置に関し国が実施する措置に関する事項
・指定行政機関、都道府県及び指定公共機関の国民の保護に関する計画又は業務計画の作成の基準となるべき事項
・国民の保護のための措置の実施に関する関係機関の連携の確保に関する事項その他必要な事項
(3)内閣総理大臣は、基本指針の案を作成し、閣議決定を求めなければならない。また、内閣総理大臣は、基本指針が定められたときは、国会に報告するとともに、その旨を公示しなければならない。

 5 指定行政機関の国民の保護に関する計画

(1)指定行政機関の長は、基本指針に基づき、その所掌事務に関し、国民の保護に関する計画を作成しなければならない。
(2)指定行政機関の国民の保護に関する計画に定める事項は、次のとおりとする。
・当該指定行政機関が実施する国民の保護のための措置の内容及び実施方法に関する事項
・国民の保護のための措置を実施するための体制に関する事項
・関係機関との連携に関する事項その他必要な事項
(3)指定行政機関の長は、国民の保護に関する計画を作成するときは、あらかじめ関係指定行政機関の長の意見を聴くとともに、内閣総理大臣に協議しなければならない。

 6 都道府県の国民の保護に関する計画

(1)都道府県知事は、基本指針に基づき、国民の保護に関する計画を作成し、議会に報告しなければならない。
(2)都道府県の国民の保護に関する計画に定める事項は、次のとおりとする。
・当該都道府県の地域に係る国民の保護のための措置の総合的な推進に関する事項
・当該都道府県の国民の保護のための措置に関する事項
・国民の保護のための措置を実施するための体制に関する事項
・関係地方公共団体及び関係機関との連携に関する事項その他必要な事項
・市町村及び指定地方公共機関が実施すべき国民の保護のための措置について重点を置くべき事項その他の国民の保護に関する計画又は業務計画の作成の基準となるべき事項
(3)都道府県知事は、国民の保護に関する計画を作成するときは、あらかじめ、内閣総理大臣に協議しなければならない。

 7 市町村の国民の保護に関する計画

(1)市町村長は、都道府県の国民の保護に関する計画に基づき、国民の保護に関する計画を作成し、議会に報告しなければならない。
(2)市町村の国民の保護に関する計画に定める事項は、次のとおりとする。
・当該市町村の地域に係る国民の保護のための措置の総合的な推進に関する事項
・当該市町村の国民の保護のための措置に関する事項
・国民の保護のための措置を実施するための体制に関する事項
・関係地方公共団体及び関係機関との連携に関する事項その他必要な事項
(3)市町村長は、国民の保護に関する計画を作成するときは、あらかじめ、都道府県知事に協議しなければならない。

 8 指定公共機関等の国民の保護に関する業務計画

(1)指定公共機関は基本指針に基づき、指定地方公共機関は都道府県の国民の保護に関する計画に基づき、その業務に関し、国民の保護に関する業務計画を作成しなければならない。
(2)指定公共機関等の国民の保護に関する業務計画に定める事項は、次のとおりとする。
・当該機関が実施する国民の保護のための措置の内容及び実施方法に関する事項
・国民の保護のための措置を実施するための体制に関する事項
・関係機関との連携に関する事項その他必要な事項
(3)指定公共機関等は、国民の保護に関する業務計画を作成したときは、速やかに、指定公共機関にあっては内閣総理大臣に、指定地方公共機関にあっては都道府県知事に、それぞれ報告しなければならない。この場合、内閣総理大臣は、指定公共機関に対し、都道府県知事は、指定地方公共機関に対し、必要な助言をすることができる。

 9 都道府県国民保護協議会

(1)都道府県に都道府県国民保護協議会を設置する。
(2)都道府県知事は、国民の保護に関する計画を作成し、又は変更するときは、都道府県国民保護協議会に諮問しなければならない。
(3)都道府県国民保護協議会は、会長(都道府県知事)及び委員(関係機関の代表者等のうちから都道府県知事が任命)をもって組織する。

 10  市町村国民保護協議会

(1)市町村に市町村国民保護協議会を設置する。
(2)市町村長は、国民の保護に関する計画を作成し、又は変更するときは、市町村国民保護協議会に諮問しなければならない。
(3)市町村国民保護協議会は、会長(市町村長)及び委員(関係機関の代表者等のうちから市町村長が任命)をもって組織する。

 11  組織の整備、訓練及び啓発

(1)指定行政機関の長、地方公共団体の長並びに指定公共機関等(以下「指定行政機関の長等」という。)は、国民の保護のための措置を的確かつ円滑に実施するための組織を整備しなければならない。
(2)指定行政機関の長等は、それぞれ又は共同して、国民の保護のための措置についての訓練を行うよう努めなければならない。
(3)政府は、武力攻撃から国民を保護するために実施する措置の重要性について、国民に対する啓発に努めなければならない。

第2 避難に関する措置

 1 警報の発令

(1)対策本部長は、基本指針及び対処基本方針で定めるところにより、警報を発令しなければならない。
(2)警報に定める事項は、次のとおりとする。
・武力攻撃事態等の現状及び予測
・武力攻撃が迫り、又は現に武力攻撃が発生したと認められる地域
・住民及び公私の団体に対し、周知させるべき事項
(3)対策本部長は、警報を発令したときは、指定行政機関の長に通知し、指定行政機関の長は指定地方行政機関の長及び指定公共機関に通知し、総務大臣は都道府県知事に通知しなければならない。また、都道府県知事は、警報の発令について通知を受けたときは、市町村長、指定地方公共機関等に通知し、市町村長は、防災行政無線等により警報の発令及び警報の内容を住民に伝達しなければならない。
(4)外務大臣は在外邦人に、国土交通大臣は航空機内に在る者に、海上保安庁長官は船舶内に在る者に警報を伝達するよう努めなければならない。
(5)放送事業者である指定公共機関等は、国民の保護に関する業務計画に基づき、警報の内容を放送しなければならない。

 2 避難措置の指示

(1)対策本部長は、基本指針で定めるところにより、総務大臣を経由し、避難元及び避難先(避難経路となる地域を含む。)の関係都道府県知事に対し、避難に係る措置を講ずるよう指示するものとする。
(2)避難措置の指示に示す事項は、次のとおりとする。
・住民の避難が必要な地域及び住民の避難先となる地域(避難経路となる地域を含む。)
・住民の避難に関して関係機関が講ずべき措置の概要
(3)対策本部長は、避難措置の指示をしたときは、指定行政機関の長に通知し、指定行政機関の長は指定地方行政機関の長及び指定公共機関に通知し、総務大臣は、他の都道府県知事に通知しなければならない。

 3 避難の指示

(1)避難措置の指示を受けたときは、避難元の都道府県知事は、市町村長を経由し、住民に対し、避難を指示しなければならない。この場合において、特に必要があるときは、避難が必要な地域に近接する地域の住民に対し、避難を指示することができる。
(2)避難の指示には、避難措置の指示に示された事項のほか、主要な避難の経路、避難のための交通手段その他の避難の方法を示さなければならない。
(3)放送事業者である指定公共機関等は、国民の保護に関する業務計画に基づき、避難の指示の内容を放送しなければならない。
(4)内閣総理大臣は、都道府県知事が所要の避難の指示を行わないときは、所要の避難の指示を行うべきことを指示し、又は自ら当該措置を講ずることができる。

 4 都道府県の区域を越える住民の避難

(1)避難元及び避難先の関係都道府県知事は、避難住民の受入れについて、あらかじめ協議しなければならない。
(2)避難先の都道府県知事は、正当な理由がある場合を除き、避難住民を受け入れるものとする。
(3)避難先の都道府県知事は、避難住民を受け入れるべき地域を決定し、当該地域の市町村長に通知するとともに、避難元の都道府県知事に通知しなければならない。
(4)通知を受けた市町村長は、正当な理由がある場合を除き、避難住民を受け入れるものとする。
(5)総務大臣は、住民の避難に係る措置を円滑に行うため必要があるときは、関係都道府県知事に対し、必要な勧告をすることができる。
(6)内閣総理大臣は、都道府県知事が所要の避難住民の受入れのための措置を講じていないときは、所要の避難住民の受入れのための所要の措置を講ずべきことを指示し、又は自ら当該措置を講ずることができる。

 5 避難住民の誘導

(1)市町村長は、当該市町村の住民に対し避難の指示があったときは、関係機関の意見を聴いて、避難実施要領を定め、住民に伝達するとともに、消防長、警察署長及び海上保安部長等並びに自衛隊の部隊等の長に通知しなければならない。
(2)市町村長は、避難実施要領で定めるところにより、避難住民を誘導しなければならない。この場合において、市町村の職員並びに消防長及び消防団長を指揮し、避難住民の誘導を行わせることができる。
(3)市町村長は、警察署長、海上保安部長等又は国民の保護のための措置の実施を命ぜられた自衛隊の部隊等の長(以下「警察署長等」という。)に対し、避難住民の誘導を要請することができる。
(4)警察署長等は、避難住民の誘導に当たり、あらかじめ市町村長と協議し、避難実施要領に沿って避難住民の誘導が円滑に行われるよう必要な措置を講じなければならない。この場合において、市町村長は、警察署長等に対し、避難住民の誘導に関し、必要な情報の提供を求めるとともに、緊急の必要があるときは、必要な措置を講ずるよう要請することができる。
(5)病院等の施設の管理者は、当該施設に在る者の避難が円滑に行われるために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
(6)避難住民を誘導する者は、危険が発生するおそれがあるときは、危険を生じさせ、又は危害を受けるおそれのある者等に対し、必要な警告又は指示をすることができる。また、警察官又は海上保安官は、危険な場所への立入りを禁止し、若しくはその場所から退去させ、又は危険を生ずるおそれのある物件の除去等の措置を講ずることができる。警察官及び海上保安官がその場にいない場合に限り、消防吏員又は自衛官も措置を講ずることができる。
(7)都道府県知事は、避難住民の誘導を円滑に行うため、市町村の支援に努めなければならない。
(8)都道府県知事は、市町村長が避難住民の誘導を行っていないときは、避難住民の誘導を行うべきことを指示し、又はその職員を指揮し、避難住民の誘導を行わせることができる。
(9)内閣総理大臣は、都道府県知事が所要の避難住民の誘導に関する措置を講じていないときは、所要の避難住民の誘導に関する措置を講ずべきことを指示することができる。
(10)避難住民を誘導する者は、避難住民その他の者に対し、その援助について協力を要請することができる。

 6 避難住民の運送

(1)地方公共団体の長は、避難住民を誘導するため、運送事業者である指定公共機関等に対し、避難住民の運送を求めることができる。この場合において、当該指定公共機関等は、正当な理由がない限り、その求めに応じなければならない。
(2)地方公共団体の長は、当該指定公共機関等が正当な理由なく求めに応じないときは、指定公共機関にあっては対策本部長に対し、指定地方公共機関にあっては都道府県対策本部長に対し、その旨を通知することができる。
(3)内閣総理大臣又は都道府県知事は、指定公共機関等が所要の避難住民の運送を行わないときは、当該所要の避難住民の運送を行うべきことを指示することができる。内閣総理大臣及び都道府県知事は、運送事業者の安全が確保されている場合でなければ、指示を行ってはならない。

第3 救援に関する措置

 1 救援

(1)対策本部長は、避難措置の指示をしたとき、又は武力攻撃災害による被災者が発生したときは、基本指針で定めるところにより、都道府県知事に対し、救援を行うよう指示するものとする。
(2)都道府県知事は、救援の指示を受けたときは、避難住民等で救援を必要としているものに対し、次に掲げる救援のうち必要と認めるものを行わなければならない。ただし、緊急を要するときは、指示を待たないで救援を行うことができる。
・収容施設の供与・食品の給与及び飲料水の供給・寝具その他生活必需品の給与又は貸与・医療の提供及び助産・被災者の捜索及び救出・埋葬及び火葬・電話その他の通信設備の提供・その他政令で定めるもの
(3)都道府県知事は、救援を迅速に行うため必要があるときは、救援の事務の一部を市町村長に行わせることができる。この場合において、必要があるときは、市町村長に対し、所要の救援に関する措置を講ずるよう指示することができる。
(4)市町村長は、都道府県知事が行う救援を補助しなければならない。
(5)日本赤十字社は、国民の保護に関する業務計画に基づき、都道府県知事が行う救援に協力しなければならない。都道府県知事は、救援に関し必要な事項を日本赤十字社に委託することができる。
(6)電気通信事業者である指定公共機関等は、国民の保護に関する業務計画に基づき、避難施設における避難住民等のための電話その他の通信設備の臨時の設置について、必要な協力をするよう努めなければならない。
(7)指定行政機関の長又は地方公共団体の長は、運送事業者である指定公共機関等に対し、緊急物資の運送を求めることができる。
(8)都道府県知事又は都道府県の職員は、救援を必要とする者及びその近隣の者に対し、その援助について協力を要請することができる。
(9)都道府県知事は、救援を行うため必要があるときは、救援の実施に必要な医薬品、食品、寝具その他の物資で業者が取り扱うものについて、所有者に対し、当該物資の売渡しを要請することができる。この場合において、所有者が正当な理由なく応じないときは、特に必要があるときに限り、当該物資を収用することができる。
 都道府県知事は、物資を確保するため緊急の必要があるときは、業者に対し、取り扱う物資の保管を命ずることができる。
 指定行政機関の長は、緊急の必要があるとき、又は都道府県知事から要請があったときは、物資の収用又は保管命令を自ら行うことができる。
(10)都道府県知事は、避難住民等に収容施設を供与し、又は臨時の医療施設を開設するため必要があるときは、所有者及び占有者の同意を得て、土地、家屋又は物資を使用することができる。この場合において、所有者若しくは占有者が正当な理由なく同意しないとき、又は所有者若しくは占有者の所在が不明のときは、特に必要があるときに限り、同意を得ないで土地、家屋又は物資を使用することができる。
(11)都道府県知事は、大規模な武力攻撃災害が発生した場合において必要があるときは、医療関係者に対し、医療を行うよう要請することができる。この場合において、医療関係者が正当な理由なく要請に応じないときは、特に必要があるときに限り、医療を行うよう指示することができる。
(12)厚生労働大臣は、都道府県知事が行う救援につき、他の都道府県知事に対して、応援すべきことを指示することができる。
(13)指定行政機関の長は、都道府県知事が救援を行うに当たって支援を求めたときは、救援に係る物資の供給その他必要な支援を行うものとする。
(14)内閣総理大臣は、都道府県知事が所要の救援を行わないときは、当該所要の救援を行うべきことを指示し、又は自ら若しくは関係大臣を指揮し、当該措置を講ずることができる。
(15)厚生労働大臣は、避難住民等に対して十分な医療を提供するための医療関係者の確保が著しく困難である場合において、外国政府等から医療の提供の申出があったときは、外国医療関係者が医療を行うことを許可することができる。
(16)厚生労働大臣は、避難住民等に対する医療の提供のため緊急に使用されることが必要な医薬品等について、薬事法の規定による承認を受けていないものであっても、輸入を許可することができる。
(17)内閣は、著しく大規模な武力攻撃災害が発生し、法律の規定によっては、避難住民等の救援に係る海外からの支援を緊急かつ円滑に受け入れることができないときは、支援の受入れに必要な措置を講ずるため、政令を制定することができる。

 2 安否情報

(1)市町村長及び都道府県知事は、安否情報の収集、整理に努め、逐次総務大臣に報告しなければならない。安否情報を保有する関係機関は、安否情報の収集に協力するよう努めなければならない。
(2)総務大臣及び地方公共団体の長は、安否の照会に応じ情報を提供しなければならない。この場合において、個人の情報の保護に十分留意しなければならない。
(3)日本赤十字社は、国民の保護に関する業務計画に基づき、外国人に関する安否情報の収集及び整理に努め、安否の照会に応じ情報の提供を行うものとする。総務大臣及び地方公共団体の長は、日本赤十字社が行う外国人に関する安否情報の収集に協力しなければならない。


第4 武力攻撃災害への対処に関する措置

 1 武力攻撃災害への対処

(1)国は、武力攻撃災害の防除及び軽減のため、自ら必要な措置を講ずるとともに、地方公共団体と協力して、武力攻撃災害への対処に関する措置を的確かつ迅速に実施しなければならない。
(2)地方公共団体は、当該地方公共団体の区域の武力攻撃災害の防除及び軽減のため、必要な措置を講じなければならない。
(3)対策本部長は、武力攻撃災害の防除及び軽減
のため特に必要があるときは、都道府県知事に対し、所要の措置を講ずべきことを指示することができる。
(4)都道府県知事は、武力攻撃災害が著しく大規模であること、その性質が特殊であることその他の事情により、武力攻撃災害の防除及び軽減が困難であるときは、対策本部長に対し、国において必要な措置を講ずるよう要請することができる。
(5)内閣総理大臣は、都道府県知事からの要請があったときは、対策本部長の求めに応じ、武力攻撃災害の防除及び軽減のため、関係大臣を指揮し、必要な措置を講じさせなければならない。
(6)市町村長は、緊急の必要があるときは、都道府県知事に対し、武力攻撃災害の防除及び軽減のため、対策本部長に対する措置の要請を行うよう求めることができる。
(7)消防は、国民の生命、身体及び財産を武力攻撃による火災から保護するとともに、武力攻撃災害を防除し、及び軽減しなければならない。
(8)武力攻撃災害の兆候を発見した者は、遅滞なく、その旨を市町村長又は消防吏員、警察官若しくは海上保安官に通報しなければならない。
(9)都道府県知事は、武力攻撃災害が発生し、又はまさに発生しようとしている場合において、危険を防止するため緊急の必要があるときは、緊急通報を発令しなければならない。
(10)放送事業者である指定公共機関等は、国民の保護に関する業務計画に基づき、緊急通報の内容を放送しなければならない。

 2 生活関連等施設の安全確保

(1)指定行政機関の長又は都道府県知事は、関係機関の意見を聴いて、次のいずれかに該当する施設(以下「生活関連等施設」という。)の管理者に対し、施設の安全の確保のため必要な措置を講ずるよう要請することができる。この場合において、当該施設の管理者は、都道府県警察、消防機関その他の行政機関に対し、施設の安全の確保のため必要な支援を求めることができる。
・国民生活に関連を有する施設で、その安全を確保しなければ国民生活に著しい支障を及ぼすおそれがあると認められるもの
・その安全を確保しなければ周辺の地域に著しい被害を生じさせるおそれがあると認められる施設
(2)指定行政機関の長及び地方公共団体の長は、その管理する生活関連等施設について、警備の強化等必要な措置を講じなければならない。
(3)都道府県公安委員会又は海上保安部長等は、都道府県知事から要請があったとき、又は事態に照らして特に必要があるときは、生活関連等施設の周辺に立入制限区域を指定することができる。
(4)内閣総理大臣は、生活関連等施設の周辺の安全確保のため、関係大臣を指揮し、危険の防除、周辺住民の避難その他必要な措置を講じさせることができる。

 3 危険物質等に係る武力攻撃災害の発生の防止

(1)指定行政機関の長又は地方公共団体の長は、武力攻撃事態等において、引火若しくは爆発又は空気中への飛散若しくは周辺地域への流出が生じ、人の生命又は身体に対する危険が生ずるおそれがある危険物質等に係る武力攻撃災害の発生を防止するため、法令の規定に基づいて適切な措
置を講じなければならない。
(2)指定行政機関の長又は地方公共団体の長は、危険物質等による被害を防止するため緊急の必要があるときは、危険物質等の取扱者に対し、危険物質等の取扱所の全部又は一部の使用の停止又は制限その他必要な措置を命ずることができる。

 4 石油コンビナート等に係る武力攻撃災害への対処
 武力攻撃に伴って発生した石油コンビナート等特別防災区域に係る災害への対処については、石油コンビナート等災害防止法の規定を適用する。

 5 武力攻撃原子力災害への対処

(1)原子力防災管理者は、武力攻撃事態等において、放射性物質又は放射線が放出されるおそれがあるときは、直ちに、関係指定行政機関の長及び地方公共団体の長に通報しなければならない。
(2)対策本部長は、放射性物質又は放射線が放出されることにより、人の生命、身体又は財産に対する危険が生ずるおそれがあるときは、直ちに、武力攻撃原子力災害の発生又はその拡大を防止するための応急の対策(以下「応急対策」という。)に係る事項の公示をしなければならない。
(3)原子力防災管理者は、放射性物質又は放射線が放出されるおそれがあるときは、武力攻撃原子力災害の発生又は拡大の防止のために必要な応急措置を行わなければならない。

 6 原子炉等に係る武力攻撃災害の発生等の防止
 指定行政機関の長は、武力攻撃事態等において、核燃料物質若しくは核燃料物質によって汚染された物又は原子炉に係る武力攻撃災害が発生し、又は発生するおそれがある場合において、当該武力攻撃災害の発生又はその拡大を防止するため緊急の必要があるときは、事業者等に対し、原子炉施設等の使用の停止、核燃料物質又は核燃料物質によって汚染された物の所在場所の変更その他必要な
措置を命ずることができる。

 7 放射性物質等による汚染への対処

(1)内閣総理大臣は、武力攻撃に伴って放射性物質、化学剤、生物剤、危険物質等による汚染が生じ、人の生命及び身体に対する危険が生ずるおそれがあるときは、関係大臣を指揮し、汚染の発生の原因となる物の撤去、汚染の除去その他当該汚染の拡大を防止するため必要な措置を講じさせるとともに、被災者の救難、救助等必要な措置を講じさせなければならない。
(2)内閣総理大臣は、緊急の必要があるときは、関係都道府県知事に対し、汚染の拡大を防止するため必要な協力を要請することができる。
(3)都道府県知事は、汚染の拡大を防止するため必要があるときは、関係市町村長又は都道府県警察に対し、必要な協力を要請することができる。
(4)指定行政機関の長又は都道府県知事は、汚染の拡大を防止するため特に必要があるときは、汚染された物の移動の制限、汚染された生活用水の給水の制限、交通の遮断又は建物への立入りの禁止等の措置を命ずることができる。

 8 応急措置等

(1)市町村長は、武力攻撃災害が発生するおそれがあるときは、それを拡大させるおそれがある設備等の管理者等に対し、当該設備等の除去その他必要な措置を講ずべきことを指示することができる。都道府県知事は、緊急の必要があるときは、自ら指示をすることができる。
 警察署長又は海上保安部長等は、市町村長又は都道府県知事から要請があったときは、指示をすることができる。
(2)市町村長は、武力攻撃災害が発生し、又は発生するおそれがある場合において、特に必要があるときは、住民に対し、退避(屋内への退避を含む。)を指示することができる。都道府県知事は、緊急の必要があるときは、自ら退避の指示をすることができる。
 警察官又は海上保安官は、市町村長から要請があったとき等は、退避の指示をすることができる。これらの者が退避の指示をすることができない場合に限り、自衛官も措置を講ずることができる。
(3)市町村長又は都道府県知事は、武力攻撃災害への対処に関する措置を講ずるため緊急の必要があるときは、他人の土地、建物その他の工作物を一時使用し、又は土石その他の物件を使用し、若しくは収用することができる。また、武力攻撃災害を受けた工作物等で武力攻撃災害への対処に関する措置の実施の支障となるものの除去その他必要な措置を講ずることができる。
 警察官又は海上保安官は、市町村長から要請があったとき等は、これらの措置を講ずることができる。これらの者がその場にい
ない場合に限り、自衛官も措置を講ずることができる。
(4)市町村長は、特に必要があるときは、警戒区域を設定し、当該区域への立入りを制限若しくは禁止し、又は当該区域から退去を命ずることができる。都道府県知事は、緊急の必要があるときは、自ら警戒区域を設定することができる。
 警察官又は海上保安官は、市町村長から要請があったとき等は、警戒区域を設定することができる。これらの者がその場にいない場合に限り、自衛官も措置を講ずることができる。
(5)市町村長若しくは都道府県知事、消防吏員、警察官、海上保安官又は自衛官は、消火、負傷者の搬送、被災者の救助その他の武力攻撃災害への対処に関する措置を講ずるため、住民に対し、その援助について協力を要請することができる。

 9 消防

(1)都道府県知事は、市町村長若しくは消防長又は水防管理者に対して、武力攻撃災害の防御に関する措置を講ずるよう指示することができる。消防庁長官は、特に必要があるときは、都道府県知事に対し(人命の救助等のために特に緊急を要するときは、自ら市町村長に対し)、武力攻撃災害を防御するための消防に関する措置について指示することができる。
(2)消防庁長官は、被災都道府県以外の都道府県の知事(人命の救助等のために特に緊急を要するときは、被災市町村以外の市町村の長)に対し、被災市町村の消防の応援等のため必要な措置を講ずるよう指示することができる。都道府県知事は、消防庁長官の指示に応じ、市町村長に対し、消防機関の職員の応援出動等の措置を講ずるよう指示することができる。

 10  感染症法の特例等

(1)厚生労働大臣は、国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあるときは、指定感染症を指定し、検疫を行うため感染症の種類を指定し、又は予防接種を行うためその対象となる疾病を指定することができる。
(2)厚生労働大臣は、緊急の必要があるときは、墓地、埋葬等に関する法律に規定する手続の特例を定めることができる。
(3)地方公共団体の長又はその職員は、住民の健康の保持又は環境衛生の確保のため必要があるときは、住民に対し、その援助について協力を要請することができる。

 11  廃棄物処理の特例

 環境大臣は、生活環境の保全のため特に必要があるときは、一定の期間を限って、特例地域を指定し、廃棄物処理法の規定にかか
わらず、特例地域における廃棄物の処理に関する基
準等を定めることができる。

 12  文化財保護の特例

(1)文化庁長官は、特に必要があるときは、重要文化財等の所有者等に対し、所在の場所又は管理方法の変更その他その保護に関し必要な措置を講ずべきことを命じ、又は勧告することができる。
(2)重要文化財等の所有者等は、文化庁長官に対し、当該重要文化財等の保護のため必要な支援を求めることができる。
(3)文化庁長官は、所有者等に国宝等の被害を防止するための措置を講じさせることが適当でないときは、自ら被害を防止するため必要な措置を講ずることができる。

 13  被災情報の収集等

(1)指定行政機関の長等は、被災情報を収集し、対策本部長に報告しなければならない。
(2)対策本部長は、報告された被災情報を内閣総理大臣に報告するとともに、国民に公表しなければならない。内閣総理大臣は、報告を受けたときは、速やかに国会に報告しなければならない。

第5 国民生活の安定に関する措置

 1 国民生活の安定

(1)指定行政機関の長及び地方公共団体の長は、それぞれの国民の保護に関する計画に基づき、国民生活と関連性が高い物資若しくは役務等の価格の高騰又は供給不足が生じ、又は生じるおそれがあるときは、関係法令の規定に基づく措置その他適切な措置を講じなければならない。
(2)内閣は、著しく大規模な武力攻撃災害が発生し、緊急の必要があるときは、金銭債務の支払の延期及び権利の保存期間の延長について必要な措置を講ずるため、政令を制定することができる。
(3)著しく大規模な武力攻撃災害が発生したときは、特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律の規定を準用する。
(4)政府関係金融機関は、大規模な武力攻撃災害が発生したときは、武力攻撃災害に関する特別な金融措置その他適切な措置を講ずるよう努めなければならない。
(5)日本銀行は、国民の保護に関する業務計画に基づき、銀行券の発行、通貨及び金融の調節を行うとともに、資金決済の円滑の確保を通じ信用秩序の維持に資するため必要な措置を講じなければならない。

 2 生活基盤の確保

(1)電気事業者又はガス事業者である指定公共機関等は、国民の保護に関する業務計画に基づき、電気又はガスを安定的かつ適切に供給するため、水道事業者である地方公共団体及び指定地方公共機関は、国民の保護に関する計画又は業務計画に基づき、水を安定的かつ適切に供給するため、必要な措置を講じなければならない。
(2)運送事業者である指定公共機関等は旅客、貨物の運送を確保するため、電気通信事業者である指定公共機関等は、通信を確保し、国民の保護のための措置の実施に必要な通信を優先的に取り扱うため、日本郵政公社又は一般信書便事業者である指定公共機関等は郵便又は信書便を確保するため、医療機関である指定公共機関等は医療を確保するため、国民の保護に関する業務計画に基づき、必要な措置を講じなければならない。
(3)河川管理施設、道路、港湾又は空港の管理者である指定公共機関等は、国民の保護に関する業務計画に基づき、河川管理施設、道路、港湾又は空港を適切に管理しなければならない。また、災害に関する研究を業務として行う指定公共機関は、国民の保護に関する業務計画に基づき、武力攻撃災害の予防、被害の軽減等に関する指導、助言その他の援助を行うよう努めなければならない。

 3 応急の復旧

(1)指定行政機関の長等は、その管理する施設及び設備について武力攻撃災害による被害が発生したときは、応急の復旧のため必要な措置を講じなければならない。
(2)都道府県知事等又は指定公共機関は指定行政機関の長に対し、市町村長等又は指定地方公共機関は都道府県知事等に対し、応急の復旧のため必要な措置に関し支援を求めることができる。

第6 復旧その他の措置

 1 武力攻撃災害の復旧

 指定行政機関の長等は、武力攻撃災害の復旧を行わなければならない。

 2 物資及び資材の備蓄

(1)指定行政機関の長及び地方公共団体の長は、住民の避難及び避難住民等の救援に必要な物資及び資材を備蓄しなければならない。
(2)都道府県知事及び市町村長は、他の都道府県及び市町村から避難住民等を受け入れたときは、救援のため、その備蓄する物資又は資材を必要に応じ供給しなければならない。
(3)救援に当たって、備蓄する物資及び資材が不足するときは、都道府県知事は指定行政機関の長に、市町村長は都道府県知事に、その供給について必要な措置を要請することができる。
(4)指定行政機関の長等は、国民の保護のための措置の実施に必要な物資及び資材を備蓄しなければならない。
(5)これらの備蓄と災害対策基本法の備蓄とは、相互に兼ねることができる。

 3 避難施設の指定

 都道府県知事は、住民を避難させ、又は救援を行うため、政令の基準を満たす施設を、あらかじめ施設の管理者の同意を得て、避難施設として指定しなければならない。

 4 職員の派遣

(1)地方公共団体の長は、指定行政機関の長又は指定公共機関に対し、職員の派遣を要請することができる。
(2)地方公共団体の長は、総務大臣又は都道府県知事に対し、職員の派遣についてあっせんを求めることができる。
(3)指定行政機関の長、地方公共団体の長及び指定公共機関は、要請又はあっせんがあったときは、事務の遂行に著しい支障のない限り、適任と認める職員を派遣しなければならない。

 5 交通の規制等

(1)都道府県公安委員会は、区域又は道路の区間を指定して、緊急通行車両以外の車両の道路における通行を禁止し、又は制限することができる。
(2)警察官は、通行禁止区域等において、車両その他の物件を付近の道路外の場所へ移動する等の措置をとることができる。警察官がその場にいない場合に限り、消防吏員又は自衛官もそれぞれの緊急通行車両の通行を確保するため措置をとることができる。
(3)国家公安委員会は、特に必要があるときは、都道府県公安委員会に対し、通行禁止等に関する事項について指示することができる。

 6 赤十字標章等の交付等

(1)指定行政機関の長又は都道府県知事は、医療関係者を識別するための赤十字標章等を交付し、又は使用を許可することができる。
(2)指定行政機関の長又は都道府県知事は、国民の保護のための措置を行う者を識別するための国際的な特殊標章等を交付し、又は使用を許可することができる。

第7 財政上の措置等

 1 損失補償、損害補償等

(1)国及び地方公共団体は、それぞれの権限の行使に当たり、法律の規定による収用その他の処分が行われたときは、当該処分により通常生ずべき損失を補償しなければならない。
(2)国は、総合調整又は内閣総理大臣の指示に基づく措置の実施に当たって、都道府県又は指定公共機関が損失を受けたときは、政令で定めるところにより、当該損失を補てんしなければならない。
(3)都道府県は、総合調整又は都道府県知事の指示(避難住民の誘導及び運送に係るものに限る。)に基づく措置の実施に当たって、市町村又は指定公共機関等が損失を受けたときは、政令で定めるところにより、当該損失を補てんしなければならない。
(4)国及び地方公共団体は、その要請を受け、国民の保護のための措置に協力した者が、そのために死亡、負傷等したときは、損害を補償しなければならない。
(5)都道府県は、要請に応じ、又は指示に従って医療を行う医療関係者が、そのために死亡、負傷等したときは、損害を補償しなければならない。

 2 費用の支弁及び負担等

(1)法令に特別の定めがある場合を除き、国民の保護のための措置その他国民保護法制の規定に基づいて実施する措置に要する費用は、その実施について責任を有する者が支弁する。
(2)地方公共団体が支弁した費用のうち次に掲げるものについては、政令で定めるところにより、国が負担する。ただし、当該費用中、地方公共団体の職員の人件費、地方公共団体の管理及び行政事務の執行に要する費用並びに地方公共団体が施設の管理者として行う事務に要する費用で政令で定めるものについては、この限りでない。
・住民の避難に関する措置に要する費用
・避難住民等の救援に関する措置に要する費用
・武力攻撃災害への対処に関する措置に要する費用
・地方公共団体が行う損失補償、損失補てん若しくは実費弁償又は損害補償に要する費用(地方公共団体に故意又は重大な過失がある場合を除く。)
(3)武力攻撃災害の復旧に関する措置に係る財政上の措置については、別に法律で定めるところにより、国費による必要な財政上
の措置を講ずるものとする。

第8 緊急対処事態に対処するための措置

 1 責務等

(1)国、地方公共団体等の責務
・国は、国民の安全を確保するため、緊急対処事態(武力攻撃の手段に準ずる手段を用いて多数の人を殺傷する行為が発生した事態又は当該行為が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態で、内閣総理大臣が認定したものをいう。以下同じ。)においては、緊急対処事態に関する対処方針を定めるとともに、その組織及び機能のすべてを挙げて自ら緊急対処保護措置を的確かつ迅速に実施し、又は地方公共団体及び指定公共機関が実施する緊急対処保護措置を的確かつ迅速に支援し、並びに緊急対処保護措置に関し国費による適切な措置を講ずること等により、国全体として万全の態勢を整備する責務を有する。
・地方公共団体は、緊急対処事態においては、国が定める緊急対処事態に関する対処方針に基づき、自ら緊急対処保護措置を的確かつ迅速に実施し、及び当該地方公共団体の区域において関係機関が実施する緊急対処保護措置を総合的に推進する責務を有する。
・指定公共機関及び指定地方公共機関は、緊急対処事態においては、その業務について、緊急対処保護措
置を実施する責務を有する。
・国、地方公共団体並びに指定公共機関及び指定地方公共機関は、緊急対処保護措置を実施するに当たっては、相互に連携協力し、その的確かつ迅速な実施に万全を期さなければならない。
(2)指定行政機関の長等は、緊急対処事態の認定について閣議の決定があったときは、国民の保護に関する計画で定めるところにより、その所掌事務に係る緊急対処保護措置を実施しなければならない。

 2 緊急対処事態の認定

(1)内閣総理大臣は、緊急対処事態に至ったと認めるときは、その認定について、閣議の決定を求めなければならない。この場合において、内閣総理大臣は、併せて緊急対処事態対処方針の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。
(2)緊急対処事態対処方針には、当該緊急対処事態における住民の避難に関する措置、避難住民等の救援に関する措置、緊急対処事態における災害への対処に関する措置その他の緊急対処保護措置に関する全般的な方針を定めるものとする。

 3 緊急対処事態対策本部
 内閣総理大臣は、緊急対処事態の認定について閣議の決定があったときは、閣議にかけて、緊急対処事態対策本部を設置するものとする。

 4 準用
 避難、救援、武力攻撃災害への対処、財政上の措置等に関する規定は、原則として緊急対処事態及び緊急対処保護措置について準用する。

第9 雑則

 1 大都市の特例
 救援(安否情報の収集及び提供を除く。)及び避難施設の指定に関する事務は、指定都市においては、指定都市が処理する。

 2 事務の区分
 地方公共団体が処理することとされている事務は、原則として第一号法定受託事務とする。

第10  罰則

 次に掲げる者には、刑罰を科する(緊急対処事態において準用する場合を含む。)。
(1)危険物質等に係る武力攻撃災害の発生の防止
又は防除及び軽減のため
の措置命令に従わなかった者
(2)原子炉等に係る武力攻撃災害の発生又はその拡大の防止のための措置命令に従わなかった者
(3)物資の保管命令に従わなかった者
(4)国際的な特殊標章等をみだりに使用した者
(5)通行の禁止又は制限に従わなかった車両の運転者
(6)放射性物質等による汚染の拡大を防止するための措置命令に従わなかった者
(7)土地若しくは家屋の使用又は物資の収用に関し、立入検査を拒み、妨げ、又は忌避した者
(8)物資の保管に関し、必要な報告をせず、又は虚偽の報告をした者
(9)武力攻撃原子力災害について通報をしなかった原子力防災管理者
(10)国宝等の被害を防止するため必要な措置の実施を拒み、又は妨げた者
(11)警戒区域又は立入制限区域への立入りの制限若しくは禁止又は退去命令に従わなかった者