防衛関係資料


「防衛力の在り方検討会議」のまとめ
(平成16年11月)
 
1 防衛力の在り方検討
 9・11テロなど国際テロなどの新たな脅威が安全保障上の重大な問題となるなど、安全保障環境の劇的な変化などを踏まえ、防衛力の在り方検討会議において、約3年間にわたり数多くの会議を開催し、今後の防衛力の在り方や業務全般の在り方などについて累次検討を重ねてきた。さらに、本年5月以降は、特に各自衛隊の将来体制を中心に、集中した検討を行い、基本的な方向性を確認したところである。

2 抑止の概念
 今後の防衛力の在り方の検討に当たり、現在の防衛力の整備等の基本的な考え方となっている基盤的防衛力構想が前提とする抑止の概念を整理することが必要である。
 (1)基本的な考え方
 「抑止とは何か」については、広い概念では、「費用と危険が敵対者の期待する結果を上回ると敵対者自身に思わせることで、自分の利益に反する行動を敵対者にとらせないようにする行為」をいう。
 抑止は二つに分類でき、一つは懲罰的抑止(敵対者に対して攻撃的行動を開始すれば耐えられないような制裁を加えるという威嚇を行うことによって、敵対者に恐怖心を起こさせ、攻撃的行動を自制させること)であり、他方は、拒否的抑止(敵対者の特定の攻撃的行動の目的達成を拒否する能力を備え、敵対者に目的達成のコストを認識させることによって、敵対者に攻撃的行動を自制させること)である。
 (2)抑止の限界
 抑止の限界としては、以下のことが考えられている。
 ・敵対者を特定できない場合には、抑止する側が威嚇として何が有効かを判断することが困難となり、抑止のための威嚇を準備することができない。
 ・抑止する側は敵対者の意図や反応の予想を行う上で、敵対者の考え方と行動様式に関する深い知識が必要であるが、敵対者を特定できない場合には、こうしたことは困難である。
 ・敵対者が抑止する側にとって合理的と考えられる判断をすることが常に期待できるとは限らない。
 (3)我が国防衛のための抑止力
 我が国は、基盤的防衛力構想に基づき整備される防衛力を拒否的抑止力として、米国の機動打撃力等を懲罰的抑止力とし、その平和と安全を確保してきた。また、核抑止については、我が国は非核三原則等により一切の核兵器を保有しないこととしている。
 このような我が国防衛のための抑止力の考え方が、今日でも実効性を持ちうるのか否か検討が必要であることから、我が国を取り巻く安全保障環境、基盤的防衛力構想の取扱い、我が国が保有すべき防衛力などについて、今回検討を行った。

3 安全保障環境
 (1)国際情勢
 1)全般
 冷戦終結後既に10年以上が経過し、国家間の相互依存関係が深化・拡大しつつあり、安全保障上の問題に関する国際協調・協力の進展などにより、冷戦時代に想定されていたような世界的な規模の武力紛争が生起する可能性は、一層遠のいている。
 他方、9・11テロのように、国家間の軍事的対立だけでなく、国際テロ組織などの特定困難な非国家主体による活動が安全保障上の重大な脅威として注目されている。また、大量破壊兵器や弾道ミサイル等の統治面などで問題のある国家への拡散・移転が進み、非国家主体が取得、使用するおそれも高まっている。
 さらに、領土、宗教等に起因する種々の対立が表面化、先鋭化する傾向にあり、複雑で多様な地域紛争が発生している。加えて、軍事的対立に止まらず、テロ活動、海賊行為等の各種不法行為や緊急事態などが安全保障上重要な問題となっている。これらの新たな脅威や平和と安全に影響を与える多様な事態(以下「新たな脅威や多様な事態」という。)への対応が各国及び国際社会にとって差し迫った課題となっている。
 こうした状況のもと、国家間紛争の防止には、抑止力の維持は引き続き重要であるが、国際テロ組織等非国家主体や統治面等で問題のある国家は、その行動に際して常に合理的な判断を期待できず、また、多様な事態については、冷戦時代に想定されていた本格的な侵略事態とはその形態等が異なるため、従来の抑止の考え方が必ずしも有効に機能し得ないものとなっている。
 2)各国の対応
 このような状況において、国際的な安全保障環境の安定を図ることは、各国の共通の利益となっており、各国は安全保障上の問題解決のため、軍事力を含む各種の手段を活用し、諸施策の連携と国際的な協調の下、幅広い努力を行っている。この中で、軍事力の役割は多様化し、抑止・対処との役割に加え、国内外の安全保障環境安定化のため、平素から多様な場面で積極的に活用されるに至っている。
 (2)我が国周辺地域の情勢
 我が国周辺地域では、二国間及び多国間の連携・協力関係の強化が図られてきており、引き続き、我が国の着実な防衛努力と日米安保体制の実効性が確保されれば、我が国への本格的な侵略事態が生起する可能性は低下している。
 他方、我が国周辺地域は、民族・宗教・政治体制などで多様性を有するとともに、複数の主要国が存在し、利害が錯綜する複雑な構造を有し、統一、領土問題や海洋権益をめぐる問題も存在している。また、この地域の多くの国々では、軍事力の拡充・近代化が行われてきている。
 このように我が国周辺地域の情勢は、NATO、EUの拡大等を通じて一層の安定化が進んでいる欧州の安全保障環境とは大きく異なることに留意する必要がある。
 (3)科学技術の飛躍的発展
 情報通信技術等科学技術の進歩は、戦闘力の飛躍的な向上といった軍事力の変革をもたらし、旧来の装備では戦闘に支障が生じる状況も現出しつつある。今後こうした傾向はますます加速する可能性があり、各国の防衛戦略にも大きな影響を与えるとともに、装備体系等の見直しを迫るものとなる。
 (4)我が国の特性
 我が国は、ユーラシア大陸の大国と近接しており、戦略上の要衝に位置している。また、細長い弧状の列島からなり、奥行きに乏しく、長大な海岸線と本土から遠く離れた多くの島嶼を有している。このような地理的な特性の下、狭隘な国土に多数の人口を抱え、特に都市部に産業・人口が集中、経済の発展に不可欠である重要施設が沿岸部に多数存在するなど、地勢面において安全保障上、特に配慮すべき脆弱性を抱えている。
 また、市場主義、自由貿易体制などの経済システムに基盤を置く我が国の繁栄、発展のためには、国際的な安全保障環境の安定が不可欠である。
 (5)防衛庁・自衛隊を取り巻く環境
 近年、自衛隊に求められる任務は多様化し、拡大するとともに、武力攻撃事態等への対処に関する法制の整備等、緊急事態への対処に関する制度の整備が進められている。一方、防衛庁・自衛隊を取り巻く環境は、厳しい経済財政事情、自衛官の採用に適した若年人口の減少傾向など全般的に厳しく、この中で国内外の安全保障環境の安定化のため、いかにその役割を果たすかということがより問われるようになってきている。

4 基盤的防衛力構想の見直し
 基盤的防衛力構想については、我が国周辺地域の動向を踏まえると、我が国に対する侵略を未然に防止するため一定の有用性を有しているが、安全保障環境が大きく変化しており、今日の安全保障環境に適合するように見直すことが必要である。
 (1)事態への有効対処の重要性
 基盤的防衛力構想は、防衛上必要な各種の機能を備え、後方支援体制も含めてその組織及び配備において均衡のとれた態勢を保有することを主眼とし、存在することによる抑止効果を最も重視している。しかしながら、我が国に対する新たな脅威や多様な事態は、事前の兆候なく発生する可能性があり、従来の存在することによる抑止が必ずしも有効に機能しない。このため、我が国の防衛力は即応性や機動性をもって、各種事態に有効に対処し、被害を極小化することが最も求められており、新たな防衛構想については、事態に有効に対処する能力をより重視することが必要である。
 (2)国際社会の相互依存関係の進展
 基盤的防衛力構想は、国際情勢の対立的構造を前提とする「力の空白論」に依拠しているが、現在、国際社会では平和と安定に向けた協力を推進する動きが定着し、各国は安全保障面・経済面などで、多国間及び二国間の関係を深化させ、重層的で複雑な関係を持つに至っている。新たな防衛構想については、国際情勢の対立構造よりも、相互依存関係をより重視することが必要である。また、このような中、我が国もまた国際社会の平和と安定のために主体的かつ積極的に取り組むことが重要となっている。

5 日米安保体制を基調とする米国との協力関係並びに関係諸国・国際機関との協力
 日米安保体制については、新たな安全保障環境の下、新たな脅威や多様な事態への対応を含む我が国の安全保障の確保や我が国周辺地域における平和と安定の確保のための役割を果たし続ける。また、こうした役割のみならず、両国の協力関係は、自衛隊の海外での活動をみても明らかなように、よりグローバルな観点も踏まえた国際社会の平和と安定のための取り組みにも重要な役割を果たすこととなる。このような中、今後の防衛力は、我が国の果たすべき役割について、例えば、新たな脅威や多様な事態への対応に際しての我が国の対処能力の保持の在り方を含めて、日米間における適切な役割分担を明らかにすることにより、日米安保体制の実効性を高めることが重要である。
 さらに、我が国を含む国際社会の平和と安定のため、米国との協力関係とあいまって、ASEAN地域フォーラムなどの関係諸国との二国間・多国間の安全保障に関する対話・協力の推進や国連等の国際機関の諸活動における協力を推進する。

6 新たな防衛構想
 (1)防衛構想の前提となる今日の安全保障の考え方
 我が国の安全保障の目的は、我が国の平和と独立を確保し、その繁栄を維持、発展させることであり、新たな安全保障環境の下、我が国として、安全保障上の問題に的確に対応し、危機に強く、国民が安全に安心して暮らせる国家を実現する必要がある。
 また、今日の安全保障上の問題は一国のみでの解決が困難であり、同盟国をはじめとする国際社会における協調・協力がこれまで以上に必要とされていることを踏まえ、我が国の平和と独立の前提となる国際社会の平和と安定のため、我が国としても、主体的・積極的に取り組む必要がある。
 その際、今日の安全保障上の問題には抑止が困難なものもあり、総合的対応が必要であり、政府として、日米安保体制を基調とする米国との協力、関係諸国や国連等の国際機関との協力の下、外交努力の推進、防衛力の効果的な運用を含む諸施策の有機的な連携により、迅速かつ的確な対応を行うことが重要である。
 (2)多機能で実効的な防衛力の構築
 新たな防衛構想については、我が国に対する本格的な侵略事態が生起する可能性はほとんどないとはいえ、我が国に対する侵略事態を未然に防止するため、周辺地域の動向を踏まえ、抑止効果を目的とした防衛力を引き続き保有することは必要であるが、「より機能する自衛隊」として、今日の安全保障上の重大な課題である新たな脅威や多様な事態に対して有効に対応し得る防衛力を保有し、整備・維持・運用することをより重視すべきである。また、防衛力については、我が国の平和と安全をより確固たるものとするため、米国との協力、関係諸国や国連等の国際機関との協力の下、我が国の国益や特性を踏まえて、主体的かつ積極的に国際社会の平和と安定を確保するための活動(以下「国際活動」という。)に取り組むことも必要である。
 現在及び今後の安全保障環境の下では、このように防衛力が多様な段階・局面に機能することが求められ、実際に起こり得る各種事態に対して、即応し、機動的かつ柔軟に運用され、実効的に対応できることが必要である。すなわち、我が国としては、このような多機能で実効的な防衛力をもって、我が国の平和と安全を確保することが必要である。
 なお、基盤的防衛力構想では政治的なリスクがあるとされていたが、各種事態に実効的に対応するという多機能で実効的な防衛力の特質を踏まえれば、このような政治的なリスクを極力小さくすることが必要である。また、起こり得る事態に対する防衛力の対処能力について整理することにより、内閣が政治的リスクを把握し得るようにする。

7 国際活動の位置付け
 我が国としては、国際活動について、我が国の平和と安全をより確固たるものとするため、主体的かつ積極的に国際活動に取り組むという、能動的な位置づけを与えることが必要である。

8 防衛体制の基本
 多機能で実効的な防衛力を実現する防衛体制の基本は、以下のとおりである。
 (1)統合運用の強化
 陸・海・空三自衛隊を有機的、一体的に運用し、自衛隊の任務を迅速かつ効果的に遂行するため、統合運用体制を強化する必要がある。多機能で実効的な防衛力は、このように陸・海・空各自衛隊の部隊が統合運用されることにより、その能力を発揮することができる。このため、防衛庁長官の指揮命令について新統合幕僚長を通じて一元的に実施する体制を構築するため、中央組織や人的・物的資源配分について抜本的に見直すこととする。具体的には、まず、平成17年度の統合幕僚監部(仮称)の創設、各幕の改編を嚆矢とする。また、統合幕僚監部は、各幕僚監部に対して、統合運用に関する防衛力整備「指針」を発する等してリーダーシップを発揮する体制を確立するものとする。また、統合運用の実効性を確保するため、統合幕僚監部は、長官直轄化され庁の中央情報機関となる情報本部とも密接に連携する。
 (2)情報機能の強化
 多機能で実効的な防衛力を機能させるためには、高度な情報能力の保有とその十分な活用が不可欠であり、情報能力は、単なる支援的要素ではなく、防衛体制の基本の一つとして位置づけることが適当である。このため、戦略環境や技術動向等を踏まえた高度で多様な情報収集能力や総合的な情報分析・評価・共有能力を充実させるなど、情報機能を抜本的に強化するものとする。
 (3)科学技術の飛躍的発展への対応
 情報・科学技術の進歩に伴う「軍事力の革命」につき、我が国の防衛力に的確に反映させることが必要であり、具体的には、作戦スピードの加速、統合・ネットワーク化による戦力発揮、戦場認識能力及び精密攻撃能力の強化、無人化、省人化、効率的な兵站管理などについて、積極的に導入し、自衛隊のRMA(軍事革命)を推進する。
 (4)人的資源の最大限の活用
 防衛力の整備・維持及び運用にあたっては、部隊における人員の養成・管理を徹底するとともに、将来体制移行にあたり、特定の部隊の合理化を図りつつ、強化する部隊に定数を充当する方策を追求し、体制・業務全般を見直し、貴重な人員を最大限活用する。
 (5)関係機関や地域社会との協力
 我が国の安全保障は、防衛庁・自衛隊のみで確保できるものではなく、我が国の総力をあげて確保していくべきものである。特に、新たな脅威や多様な事態に的確に対応するには、従来以上に、関係機関や地域社会を含む総合的な対応が必要となっている。

9 保有すべき防衛体制
 多機能で実効的な防衛力が構築する防衛体制は、以下のとおりである。
 (1)新たな脅威や多様な事態に実効的に対応する体制
 新たな脅威や多様な事態とは、例えば、大量破壊兵器や弾道ミサイルによる攻撃、テロ攻撃、ゲリラや特殊部隊による攻撃、島嶼部への侵略、サイバー攻撃、テロ活動や工作員・工作船活動などをはじめとする各種の不法行為、大規模・特殊な災害をはじめとするものである。これらに実効的に対応するため、部隊の即応性、機動性を一層高め、統合運用を基本として柔軟に運用できるものとするとともに、その部隊の特性に応じて集約又は分散した編成・配置とする。
 以上を踏まえた、各自衛隊の主要な体制は以下のとおりである。なお、各自衛隊の具体的な体制については、次項11において詳述する。
 陸上自衛隊については、普通科を中心に強化を図り、その際、戦車や火砲等を削減することとし、これにより、事態に実効的に対応し得る編成・装備となるような体制を確立する。また、各種事態が生起した場合に事態の拡大防止等を図るため、各地域に配備する作戦基本部隊(師団・旅団)が保持するには非効率である機動運用部隊や各種専門部隊等を中央で管理運用し、一元的な指揮の下、事態発生時には各地に部隊等を提供する中央即応集団(仮称)を創設する。
 海上自衛隊については、部隊の即応性・柔軟性を確保するため、固有の部隊編成を見直し、フォースユーザー・フォースプロバイダーの概念を徹底する。また、修理・補給等の基地支援機能(いわゆるフォースサポーター)を確保する。
 航空自衛隊については、警戒監視・情報収集能力の強化、機動運用のための輸送力の強化及び対地精密攻撃能力の向上を図るとともに、現在の安全保障環境を踏まえ、戦闘機部隊を適切に配置する。
 また、弾道ミサイル防衛については、統合運用の下、対処態勢の整備に努めることとし、政策、運用、技術面での日米協力の推進、将来構想の策定、法制面、武器輸出三原則等との関係の整理等を進めていく。
 さらに、無人偵察機については、陸・海・空三自衛隊における無人偵察機の在り方について、総合的な検討を行う。
 (2)国際活動に主体的・積極的に対応する体制
 我が国として、紛争の予防、平和維持、さらには、復興等の国づくりに至るまで、幅広い視観点から、安全保障を考えていくことが必要である。このため、平素から安全保障対話・協力、防衛交流の推進、軍備管理・軍縮分野の諸活動への協力等も行うことにより、我が国を含む国際社会の安全保障環境の安定化に努める必要がある。
 このような考え方の下、今後の防衛力については、国連をはじめとする国際的な協調の下に実施される、国連平和維持活動、国際的なテロリズムの防止と根絶や大量破壊兵器の拡散防止に向けた国際社会の取り組みへの協力、国際的な人道復興支援などの国際活動を的確に行うため、統合運用を基本として、輸送能力等の向上など、即応性、機動性、柔軟性を確保し、必要とされる地域に部隊を迅速に派遣し、継続的に活動を行い得る体制を確保する。
 以上を踏まえた、各自衛隊の主要な体制は、以下のとおりである。
 陸上自衛隊については、国際活動において、人的な支援活動の中心的な役割を果たすこととなるが、一定規模の部隊を迅速に派遣できる体制を新たに整備するとともに、教育部隊の創設を含め継続的に派遣できる体制を確立する。また、国際活動に一次派遣する要員については、各方面隊のローテーションにより待機するものとする。
 海上自衛隊については、国際活動に即応し、かつ持続的に対応し得る護衛艦をはじめとする部隊の体制を確立する。
 航空自衛隊については、C−Xの導入や空中給油・輸送機の機数を増やすことにより、輸送力を強化する。
 (3)本格的な侵略事態に備える体制
 見通しうる将来において、我が国への本格的な侵略事態が生起する可能性はほとんどないと判断される一方、防衛力の整備が一朝一夕になし得ないものであることに鑑み、周辺諸国の軍備動向に配意するとともに、技術革新の成果を取り入れ、将来の予測し難い状況変化に備えるため、本格的な侵略事態に対処するための最も基盤的な体制を確保する。
 但し、前述の(1)及び(2)の体制と、(3)の体制については、一つの防衛力を多面的にとらえたものであることに留意することが必要である。

10  各自衛隊の具体的な体制
 各自衛隊の具体的な体制について詳述すれば、以下のとおりである。
 (1)陸上自衛隊の将来体制
 現大綱において、陸上自衛隊は、編成定数を18万人から16万人とし、師団・旅団に即応予備自衛官を導入することなどにより、平時に低充足であった部隊の充足と練度を高めるとともに、戦軍・特科装備を縮減する一方、機動力の向上に努めるといった体制移行を行うこととし、16年度までに概ね計画の6割程度を実施してきている。これは、諸情勢の変化等を踏まえ、我が国防衛(着上陸侵攻対処)のための戦力を合理化、効率化、コンパクト化するとの観点から行われてきたものである。
 現在、9・11テロにみられるとおり、我が国を含めた安全保障環境は更に大きく変化している。具体的には、これまで防衛力の設計上念頭においていた着上陸侵攻についてはその対処までに数ヶ月以上のウォーニングタイムがあると見込まれていたが、現在我が国が直面している新たな脅威や多様な事態(弾道ミサイル攻撃、サイバー攻撃、大規模・特殊な災害、ゲリラ・特殊部隊による攻撃、島嶼部への侵攻など)については、数分〜数日間といった時間で対処しなければならないほどの高い即応性が求められており、陸上自衛隊としてもこれら事態への対処に万全を期さなければならない。
 現大綱で想定していた我が国に対する本格的な侵略を専ら念頭においた防衛力の設計では、これらの高い即応性を求められる事態への対応は困難と考えられることから、これまでの陸上自衛隊の設計を見直し、新たな防衛力の設計に転換する必要がある。
 また、統合運用における実効的な陸上部隊の指揮階梯(方面管区制の是非、陸上総隊の導入の可否の検討)について、統合運用の成果を踏まえつつ、統合幕僚監部と連携して検討する。
 1)新たな脅威や多様な事態への対応
 ア 対機甲戦から対人戦闘への防衛力設計の重点のシフトと部隊の配備 新たな脅威や多様な事態においては様々な様相が考えられ、例えばゲリラや特殊部隊による攻撃事態の際には、普通科等の戦闘部隊を中心としつつ、情報収集のための偵察部隊や航空科部隊、NBC対応のための化学科部隊と一体となった対応が必要である。このため、これからの陸上自衛隊の作戦基本部隊である師団・旅団については、必要な各種機能を保持しつつ普通科部隊等に重点を置く低強度紛争に有効に対処し得る設計(LICタイプ=即応近代化作戦基本部隊)とすることを基本とし、LICタイプであっても、島嶼部が多く重装備の運用に適さない沖縄に配備する部隊においては戦車は保持しないなど島嶼部の防衛に適したものにするほか、政経中枢の防衛警備を担当する第1師団(練馬)・第3師団(千僧)については隷下の普通科部隊を更に強化するなど地域の特性等に応じた防衛力の設計を行う。
 こうした防衛力設計の重点のシフトに伴い、戦車の保有数を大幅に削減するとともに、火砲、対戦車ミサイル、地対艦誘導弾についても、その機種統合等により、保有数を大幅に削減する。他方、輸送ヘリコプターや指揮通信機能、個人装備の充実を図る。また、平成9年度より甲類装備品(火砲、戦車など)を抑制して、新たな脅威や多様な事態に実効的に対応するために不可欠な装備品である車両、無線機、戦闘装着セットなどの乙類装備品の充足の向上を図っているところであり、引き続きこの方向を推進する。さらに、防衛庁としての無人偵察機の在り方の検討の中において、陸上自衛隊の無人偵察機の体制について検討する。なお、米軍の供与品を含め古い装備品については、その更新を積極的に推進する。
 イ 機動運用能力、各種の事態に対処しうる専門能力の向上 各種事態が生起した場合に事態の拡大防止等を図るため、各地域に配備する作戦基本部隊(師団・旅団)が保持するには非効率である機動運用部隊や各種専門部隊等を中央で管理運用し、一元的な指揮の下、事態発生時には各地に迅速に戦力を提供する中央即応集団(仮称)(規模:4000人ないし5000人)を創設する。
 また、大量破壊兵器であるNBC兵器は、使用された場合、大量無差別の殺傷や汚染が急速に進展することが予想され、こうした事態が拡大することを迅速に防止することが必要であるため、第101化学防護隊を中央即応集団の隷下部隊として置くこととし、同部隊に現在欠落している生物兵器対処能力を補うことなどにより機能強化を図るほか、各地における事態拡大防止のための即応戦力として緊急即応連隊(仮称)を創設する。
 なお、初動対処の観点から、師団・旅団においても、現在欠落している生物兵器対処能力を補うなどして、NBC対処能力を強化する。
 また、(1)警備区域の地理的位置、(2)重要施設の分布状況、(3)首都圏等重要地域への進出の容易性等を考慮して、事態の拡大防止戦力として、地域配備部隊の一部は必要に応じて全国機動する。例えば、北部方面隊の部隊には、平素は地域警備任務を担わせつつ事態生起の際は必要に応じて転用する。
 ウ 先端技術への取り組み 飛躍的に進歩している軍事科学技術や戦闘様相の変化に的確に対応するためには、作戦基本部隊である師団・旅団の改革を不断に進める必要がある。このため、演習場の面などから良好な訓練環境を持つ第2師団(道北)においては各種指揮統制システムを活用して戦車や火砲等を総合的に用いた部隊実験や装備改善、戦技研究等を実施する。また、首都圏に接する第6師団(南東北)においては、政経中枢など都市部における戦闘や対人戦闘などに対し、各種指揮通信システムなどを活用しつつ有効に対処し得る未来型個人装備等を駆使し得るよう、首都圏への機動運用も念頭に置き、部隊実験や装備改善、戦技研究等を実施する。なお、部隊実験等の結果は他の部隊に普及させるとともに、今後の研究開発に反映させる。
 2)国際活動への対応
 国際社会のニーズに応じて自衛隊の迅速な国際活動への派遣ができるような体制(安保理決議採択後30日(複雑な平和維持活動の場合は90日)以内での派遣)を構築する。
 国際活動に主体的かつ積極的に取組むため、人的支援活動の中核である陸自において、一定規模の部隊を迅速に派遣できる体制を整備する。
 ア 中央即応集団・教育専門部隊(国際活動教育隊=(仮称)) これまで4〜6ヶ月を要していた派遣準備期間を短縮し、ブラヒミレポートにおいて提言されている安保理決議採択後30日(複雑な平和維持活動の場合は90日)以内の迅速な派遣を可能とする体制とするため、現状では個々の派遣の都度、陸幕と各方面隊との間で個別に計画や訓練などを行ってきたものを、今後は中央即応集団司令部に国際活動の計画・訓練・指揮を一元的に担任させるとともに、派遣要員の平素の教育訓練やPKO対応装備品の管理、ノウハウの蓄積等を行う国際活動教育隊(仮称)を創設する。
 イ 派遣部隊の保持要領 今後の国際活動については、普通科部隊や施設科部隊などの派遣する要員をローテーションにより待機させるものとする。具体的には、各方面隊の特性等を踏まえ、北部方面隊を中心としたローテーションとする一方、政経中枢及び島嶼部の防衛警備を担当する部隊はローテーションの緩和を考慮する等、各種事態が生起した場合の対応にも配意したローテーションを構築する。
 3)従来陸上防衛力の希薄であった地域(南西諸島・日本海側)の態勢強化
 沖縄本島は九州から約500km離れ、沖縄本島から最南西端の与那国島までは約500kmに渡り多数の島嶼が広がっている。また、南西諸島は近傍に重要な海上交通路や海洋資源が所在する戦略上の要衝となっている。海上交通路を確保するためには、南西諸島の防衛態勢を強化し、島嶼部への侵略等の多様な事態に的確に対処できる体制を構築することが必要である。このため、統合運用の観点から3自衛隊の横断的な取り組みに留意しつつ、陸上自衛隊においても取り組みを行う。
 また、陸上防衛力が相対的に希薄な日本海側におけるゲリラや特殊部隊による攻撃等への迅速な対応を期すべく防衛態勢の強化を行う。
 ア 第1混成団の旅団への改編 南西諸島の防衛態勢強化の観点から、第1混成団を旅団に改編する。同時に、軽装甲機動車を増強するなどして機動力の向上を図る。また、島嶼部への侵略等の際に機動的に展開する部隊として西部方面普通科連隊を保持するとともに、島嶼部における情報収集・処理能力を向上させる。
 イ 日本海側の態勢の強化 日本海側に面して所在する旅団の普通科部隊の人員増強、狙撃銃の配備のほか、軽装甲機動車・高機動車の増強による機動力強化を図る。また、ヘリ部隊の配置などを行う。
 4)北部方面隊の新たな意義・位置付け
 新たな安全保障環境に対応し、北海道については、冷戦時代の北方重視構想から脱却する一方、他地域とは異なる良好な訓練環境等を踏まえて、青函以南の師団・旅団よりは規模の大きい部隊を配置し、多目的に活用することとする。具体的には、科学技術の進歩に対応してRMAを推進していくことが急務となっていることから、RMAを主導するための実験師団を配置する。次に、発生時期・場所の予測が困難であるゲリラや特殊部隊による攻撃、大規模災害等の新たな脅威・多様な事態への対処に際しては、防護すべき重要施設や人口密集地の分布等に鑑みれば青函以南の備えが重要であるため、必要な場合には北部方面隊の隷下部隊を青函以南に転用するなど、新たな脅威や多様な事態に北部方面隊を積極的に活用して対処する体制を構築する。さらに、我が国防衛と並ぶ重要な任務である国際活動についても、北部方面隊隷下部隊については、高練度の人員や充実した装備(例:96式装輪装甲車)を保有するなど、その特性を活用してイラク復興支援群における第一次・第二次派遣隊となっていたところであるが、今後、国際活動に派遣する部隊についてはこうした特性に鑑み、北部方面隊を中心としたローテーションにより、待機する体制を構築する。
 我が国に対する本格的な侵略事態生起の可能性が低下していることを踏まえ、戦車の数量については大幅に規模を縮小することとしているが、将来の予測し難い情勢変化に備えるため、高い機動力・火力等を生かして敵に打撃を与えるという機甲に関する各種戦闘機能に関する専門的知見や技能を最低限維持し得る基盤を保有することが必要である。また、諸外国、特に、米英独露中などでは、その規模は一様ではないが、3個連隊規模の運用を行う機甲師団を維持し、運用能力を保持していることにも着目することが必要である。このようなことから、第7師団については戦車の数量については削減するが引き続き師団として保持する。
 5)陸上自衛隊の編成定数
 陸上自衛隊の編成定数については、以下のような見直しを行い、編成定数を16・2万人とし、その内訳は常備自衛官を15・2万人、即応予備自衛官を1万人とする。
 ・主として着上陸侵攻対処を念頭に置いた戦車及び特科の装備を削減するとともに、対戦車火力、迫撃砲等についても装備の目標数を大幅に下方修正し、これらの装備に関連する人員の合理化を図る。
 ・新たな脅威や多様な事態への対処の中核となる普通科の組織編成を着上陸侵攻対処型から対人戦闘型に改編するとともに、国際活動への取り組みを強化するため所要の人員を確保する。
 ・即応予備自衛官については、新たな脅威や多様な事態のうち、比較的リードタイムのある事態などにおいては、常備自衛官を補完する戦力として引き続き有効であるが、今後の陸上防衛力の重点である新たな脅威や多様な事態に迅速に対処するには制約があることも踏まえ、その定数を5000人下げ、1万人とする。
 (2)海上自衛隊の将来体制
 1)護衛艦部隊
 ア 機動運用部隊 護衛艦部隊については、修理・個艦練成段階↓部隊練成段階↓即応段階B↓即応段階Aの練度管理サイクルを基本として編成する。機動運用部隊の基本単位については、新たな脅威や多様な事態にも対応可能な艦種の組み合わせを念頭におき、事態が長期化した際のローテーション等にも考慮して、柔軟に部隊を編成することを基本とし、ヘリ運用を重視したDDHを中心とするグループ(DDH×1、DDG×1、DD×2)とBMD対応を含む防空を重視したDDGを中心とするグループ(DDG×1、DD×3)を基本単位とする。
 長期化した任務を持続的に実施するため、即応段階Aと即応段階Bに4個基本単位(計16隻)をおくことにより、国内任務と国際任務をそれぞれローテーションにより対応することが必要。これに練度管理サイクルを勘案すると、機動運用部隊所要として32隻が必要(内訳は、DDH×4、DDG×8、DD×20)。
 イ 地域派出部隊 機動運用部隊は担当地域を持たない部隊であるため、沿岸海域において常続的な警戒監視を実施し、突発的事態が生起した場合には初動対処し得る護衛艦部隊が必要である。このため、地域特性を十分に把握した地方総監が、護衛艦隊司令官から派出される護衛艦部隊を運用する。
 武装不審船事案等の突発的事態に即応し、効率的に対応するためには少なくとも高練度艦2隻が必要であり、各地域への派出は高練度艦2隻を基本とすることが適当である。ただし、現在の安全保障環境を踏まえれば、太平洋側に面した2警備区においては、東シナ海、日本海側の警備区に比して突発的な事態が生起する蓋然性は低いと考えられるため、日本海・東シナ海側に面した3個警備区(佐世保、舞鶴、大湊)には常時高練度艦を各2隻、太平洋側の2個警備区(横須賀、呉)には可動艦を常時2隻ずつ(うち1隻は高練度艦1隻)を派出し得る体制とする。練度管理サイクルを踏まえると、各警備区への派出には護衛艦計18隻が必要。
 2)潜水艦部隊
 潜水艦は、隠密性、長期行動能力を有し、万一の我が国への侵攻に極めて有効に対処し得る装備であり、その特性を生かした情報収集手段としても有効である。今後は、現在の安全保障環境を踏まえ、我が国周辺海域における新たな脅威や多様な事態に係る兆候をいち早く察知し得るような情報収集等を実施できるようにするため、必要な場合に、我が国周辺の東シナ海、日本海における海上交通の要衝や重要港湾、基地周辺等の6正面に常時潜水艦1隻を配備し得るよう、往返所要日数、作戦可動率等を考慮し、16隻が必要。
 また、島嶼部への侵攻を阻止するため、又、島嶼部が占領された場合には奪回部隊に対する敵水上艦艇及び潜水艦の接近を阻止するとともに、事態の地理的拡大を防止するため、主として列島線に沿って必要な潜水艦を配備し得るための所要として、少なくとも16隻が必要。
 3)掃海部隊
 機雷は安価でありながら破壊力が大きく費用対効果が高いこと、また、専用艦艇を使用しなくても敷設が可能であることから、今後テロリストによる非対称戦に使用される可能性も十分に考えられるほか、引き続き国際的な武力紛争等に使用される可能性が考えられる。このため、対機雷戦能力については、現下の安全保障環境においても依然として重要。
 現行の掃海部隊は、我が国の生存に不可欠な海上交通の安全を確保するために最低限必要な体制であること、91年にペルシャ湾に派遣したように今後も国際活動への掃海部隊の派遣が考えられることから、引き続き機動運用部隊(3個隊9隻)と地域配備部隊(6個隊18隻)による現体制(掃海艦艇27隻)を維持することが必要。
 4)補給艦部隊
 常時即応態勢にある2個護衛隊群に対する補給支援、又は常時即応態勢にある1個護衛隊群及び常時即応態勢にある掃海隊群の1個掃海隊に随伴する掃海母艦1隻に対する補給支援に対応し得る体制とする。このため、補給艦5隻体制を維持する。
 5)輸送艦部隊
 国内における大規模災害派遣等の任務及び国際平和協力業務、国際緊急援助活動等への協力等に対応するため、常時輸送艦2隻を可動状態(うち1隻は即応態勢)で維持し得るよう、おおすみ型輸送艦3隻体制を維持する。
 6)固定翼哨戒機部隊
 平時において我が国周辺の警戒監視態勢や、周辺事態及び島嶼部への侵略事態への対処をも想定し、所要機数を算定。〔次期固定翼哨戒機の導入による能力向上を加味〕
 ア 平時(警戒監視) 警戒監視、国際活動(PSI等)、即応待機、要務(救難・災派・調査観測等)、訓練に必要な可動機数に、可動率・在隊率を勘案し、58機
 イ 周辺事態(船舶検査活動) 警戒監視、常時オンステーション、即応待機、要務、訓練に必要な可動機数に、可動率等を勘案し、62機
 ウ 局地・限定侵攻事態(島嶼部への侵略対処) 警戒監視、常時オンステーション、即応待機、要務、訓練(最低限の規模で実施)に可動率等を勘案し、65機
 また、教育所要については、従来の実用機課程による新人教育に加え、練習機により実施していた基礎教育を実用機によって実施する。このため、教育所要として10機が必要。以上の各種事態における所要機数を勘案した結果、作戦用65機、教育用10機の計75機が必要。
 7)回転翼哨戒機部隊
 今後、地域派出の護衛艦にヘリ搭載可能なDDの派出が進行すること、哨戒ヘリを護衛艦に搭載することにより、多様な事態に多目的に活用し得ることを踏まえ、陸上配備部隊(5個隊)と艦載部隊(4個隊)を5個航空隊に統合し、各定係港近傍の航空基地に配備する。1個護衛隊群の所要(可動機6機)と地方隊の所要機数(地域派出護衛艦の隻数に対応し、可動機3機又は4機。)を前提に、搭載可能率(哨戒ヘリを所要時に護衛艦に搭載することが可能である確率)及び在隊率を考慮して、所要として80機が必要である。(このほか、教育所要として9機を保有。)
 8)回転翼掃海・輸送機部隊
 掃海所要については、現状と同じく可動機3機が必要。輸送所要については、護衛艦部隊の即応態勢の強化及び国際活動への対応の所要の増加を踏まえ、機動水上艦艇部隊に対する輸送支援として2機(1機増)、掃海母艦に対する輸送支援、固定翼機の離発着不可能な陸上基地間の輸送支援については現状と同じく各1機ずつ、計4機の可動機が必要。計7機の可動機を確保するため、新機種による可動率の向上を勘案し、11機が必要。
 (3)航空自衛隊の将来体制
 航空自衛隊は、現大綱策定時に、東西冷戦の終結という国際環境の変化及び我が国周辺の航空活動の変化を踏まえ、それまでの冷戦を前提とした体制を見直し、既に冷戦後を踏まえた体制への移行を完了している。こうした状況下、戦闘機部隊については、現大綱策定以降の緊急発進状況や、新たな脅威や多様な事態へ対応していくことを踏まえると、現体制を維持する必要がある。
 他方、自衛隊に対する国際社会のニーズや期待に的確に応えるとともに、主体的・積極的に国際活動に取り組むための航空輸送体制の充実を図る必要がある。さらに、近年の科学技術の発展はめざましく、こうした状況も踏まえつつ、航空防衛力の見直しを推進していく必要がある。
 1)戦闘機部隊
 ア 戦闘機の配置等 島嶼部への侵略等新たな脅威や多様な事態に迅速に対処するとともに、周辺諸国の状況の変化も踏まえて、質的・機能的な偏りを是正する。
 イ 空対地攻撃機能の重視 空対地攻撃能力については、ゲリラや特殊部隊による攻撃、島嶼部への侵略といった新たな脅威や多様な事態に適切に対処するため、その高度化を図る。他方、航空機搭載弾薬については、適切な質的水準を保持するが、その備蓄基準については下方修正する。
 ウ 作戦用航空機数の削減等 戦闘機については、現行の飛行隊定数(原則1個飛行隊18機)を維持するが、安全保障環境の変化を考慮し、18機を削減する。
 エ F−2の取得機数の削減 F−2の取得については、総取得機数の130機を約100機に見直すこととする。
 2)偵察機部隊
 航空偵察部隊に関しては、地対空兵器技術、無人機技術及び偵察関連技術が進歩している状況も踏まえ、効率的な部隊への移行を図る。
 偵察機については、偵察専任部隊を維持しつつも、その規模を縮小し、有人偵察機を14機保有する。ただし、取得情報のリアルタイム伝送化を図るとともに、無人機を積極的に活用することとする。また、今後、現有F−15を偵察機に転用し、その活用を図る。
 3)輸送機(空中給油・輸送機を含む)部隊
 ア 我が国防衛のための所要 局地的、限定的な侵略事態において、必要な弾薬、整備器材等を短時間で空輸するためには、現有C−130×13機に加え、C−X×24機が必要である。また、空中給油・輸送機については、島嶼防衛などの事態を想定した場合、2個CAPポイントを常続的に維持するために、KC767×8機が必要である。
 イ 国際活動等のための所要 国際活動等のための所要に的確に対応するためには、我が国防衛のための所要により積み上げられるC−130×13機及びC−X×24機に加えて、KC767×8機が必要である。
 4)航空警戒管制部隊
 ア レーダーサイト 弾道ミサイル探知能力を強化するため、FPS−XXを整備する。また、効率性のみならず、残存性確保にも資する可搬型レーダーについても整備する。
 イ 移動レーダー、空中レーダー 移動警戒隊については、現在の体制を段階的に縮小する。
 空中レーダー(E−767、E−2C)については、引き続き探知能力等の向上を図るとともに、警戒管制機能を有する部隊(E−767)と警戒監視機能を有する部隊(E−2C)とに改編(2個飛行隊化)する。
 ウ 指揮統制・通信機能 バッジ・システムを中核とする指揮統制・通信機能は、サイバー攻撃からの非脆弱性を確保することも含めて、優先して、その充実を図る。
 5)その他
 ア ペトリオットへの弾道ミサイル迎撃機能の付与 空自ペトリオット(地対空誘導弾部隊)に弾道ミサイル対処機能を付与する。また、機動運用能力の強化を図る。
 イ 情報収集能力の強化 情報収集能力を強化するため、地上電波測定所の整備を推進する。また、現有YS−11EBの後継としての新型電波測定機を整備することが必要である。
 ウ 基地防衛機能の強化 テロ、ゲリラ・特殊部隊による攻撃から航空基地等を防衛するための要領等について、研究、教導、評価するとともに、脅威が顕在化した場合における各基地の基地防衛能力の補完として機動的に運用する部隊(基地防衛教導隊(仮称))を新設する。また、テロ、ゲリラ・特殊部隊による攻撃や巡航ミサイル攻撃に対応した装備品(軽装甲機動車等)を取得する。
 また、えん体については、仕様と整備計画を見直す。
 エ 各種の効率化 F−15等の定期整備実施間隔を延伸し、在場予備機の一部を他用途に転用する。
 オ 陳腐化による用途廃止 一部の航空機等については、耐用命数等による用途廃止時期が来る前に、機能の陳腐化を理由とする早期の用途廃止を追求する。
 (4)予備自衛官等の在り方
 様々な事態に対して有効に対応するためには、その所要を急速に満たせるように日頃から予備の自衛官を保持することは重要である。とりわけ、大規模災害の際の対処や武力攻撃事態等の際における国民の保護のための措置の実施にあたっては人的戦力が必要であると考えられ、責任感・気力・体力・規律心などを自衛隊で培った予備自衛官等が、これらの任務にあたることが期待される。このため、以下の施策により、必要な人員の予備自衛官等を確保するための実効的な制度を構築し、「より機能する自衛隊」の基盤を確保するものとする。
 ア 即応予備自衛官、予備自衛官、予備自衛官補は、平素はそれぞれの職業などに就いており、必要な練度を維持するため、毎年仕事などのスケジュールなどを調整し、休暇などを利用して訓練などに応じている。即応予備自衛官、予備自衛官、予備自衛官補の勤続を促進するため、仕事等の都合に配意し、訓練参加できる機会を増やす工夫を講ずる。
 イ 予備自衛官等の制度趣旨や訓練の状況に関する広報を行い、雇用企業等の理解が得られるように努める。
 ウ 自衛官退職予定者、元自衛官に対する募集活動を積極的に推進する。
 エ 防衛基盤の育成・確保を図るとの観点から、将来にわたり、予備自衛官の勢力を安定的に確保し、民間の優れた専門技術を有効に活用するため、予備自衛官補の採用を推進する。

11  防衛力整備に係る方針
 近年の防衛力の情報化・ネットワーク化の進行などを背景に、正面・後方の事業区分は境界が曖昧となってきており、むしろ事業区分を厳格に適用することによる弊害が生じているほか、C4ISR関連事業など正面・後方を一体化して推進することが重要な事業が増加しており、限られた予算で効果的な防衛力整備を行うため、予算における正面・後方の2区分を廃止するとともに、予算編成過程の効率化を図る。
12  防衛力を支える諸施策の方向性
 これまで、防衛力の在り方検討会議等の場を通じて、情報、情報通信、部隊運用、防衛生産・技術基盤、研究開発、人事教育、広報活動といった、防衛力を支える諸施策について、抜本的な変革を行うべく、今後のあるべき姿について検討を行ってきた。このような検討に基づく、具体的な方向性は以下のとおりである。
 (1)防衛力の中核的要素である情報機能の強化
 情報機能はもはや支援的要素ではなく、防衛力の中核的要素の一つとして位置付けることが適当である。防衛庁としては、高度な政策判断に資するとともに、統合運用の強化に資する情報収集・分析能力の充実などにより、情報機能を抜本的に強化していくことが重要であることから、以下の施策を講ずる。
 ・空間情報、電波情報等の多様な収集体制の強化
 ・従来型の脅威に加え、新たな脅威や多様な事態等への分析・評価体制の強化
 ・配布、保全体制の強化、能力の高い情報専門家確保のための措置
 (2)統合運用の強化、国際活動等の新たなニーズに対応した情報通信基盤の整備
 自衛隊における情報通信は、指揮中枢と各自衛隊の各級司令部、末端部隊に至る指揮統制のための基盤である。統合運用の強化、国際活動等への対応といった新たなニーズに対応することが極めて重要であるため、従来の陸海空自衛隊別の体制から、庁全体の、より広範・機動的な情報通信態勢へのシフトを図る必要がある。
 このため、今後5ヵ年の「今後の情報通信政策(アクションプラン)」を策定し、以下の政策目標5本柱に従い、具体的事業を重点的かつ計画的に実現する。
 ・指揮命令ライン(縦方向)の情報集約・伝達の充実
 ・陸海空部隊レベル(横方向)の情報共有の推進
 ・サイバー攻撃対処態勢の構築
 ・国内関係機関(警察・海保等)、国外(米軍等)外部との情報共有の推進
 ・衛星通信等各種通信インフラの充実
 (3)真に実効的な研究開発体制の確立
 今後の研究開発体制を考えた場合、重点化する分野を選定するとともに、日本の優れた民生技術にも配慮する必要があるほか、技術戦略を提示する必要がある。
 更に、研究・開発・配備の各段階において、最新の技術を取り込むとともに、同時に今後の防衛力の重視すべき事項を踏まえた運用側の要求を適切に取り入れていくため、新たな研究開発手法などの実現可能性を検討する必要がある。同時に、仮に研究開発に技術的な問題が生じた場合に事業を中止できる実効的な枠組みを整備する必要もある。
 なお、研究開発した装備品を自動的に装備化することなく、研究開発終了時点で厳格な姿勢で臨むことが必要である。
 このようなことから、現在の庁内の研究開発体制の問題点を洗い出し、研究開発の実施体制を見直す必要が生じており、以下の施策を遂行する。
 ・重点投資の実施(研究開発における「選択と集中」)
 ・防衛構想と研究開発の整合
 ・研究開発に当たっての官と民の役割分担の明確化
 ・研究開発に関する評価システムの検討
 ・技術研究本部の体制の在り方
 (4)装備品等取得の合理化・効率化、真に必要な防衛生産・技術基盤の確立
 我が国の防衛生産・技術基盤について、その位置付け、重要性及び必要性について明確に説明を行い、将来の我が国防衛にとって真に何が必要であるか考え方を整理し、限られた資源をその分野に重点的に配分していくこと(「選択と集中」)が必要である。また、装備品等の調達・補給・ライフサイクル管理の抜本的な合理化・効率化を図る必要があるとともに、調達の透明性について担保しつつ、効率的に業務が行えるような調達機関のあり方についての検討が必要となっている。以上を踏まえ、以下の措置を講ずる。
 ・総合取得改革の推進
 ・装備品等の取得管理組織体制の検討
 (5)より機能する自衛隊に必要な人材の確保
 1)自衛官に関する施策
 「より機能する自衛隊」に転換し、統合運用を基本とする体制の下、新たな脅威や多様な事態、国際的な任務及び装備の高度化等に実効的に対応するため、従来にも増して、様々な状況に対応できる質の高い人材を確保・育成する必要性が高まっている。
 また、厳しい雇用情勢の下、若年定年制及び任期制の隊員に対する再就職支援をさらに充実し、職業としての魅力化を図ることにより、質の高い人材を確保する必要性が増大しているところであり、このような点を踏まえ以下の施策を講ずる。
 ア 様々な状況に対応できる人材を確保するための任用・退職管理の在り方
 ・広い視野と柔軟な判断力等を有する若手幹部の部隊等への積極的配置
 ・専門家集団たる准曹の活性化
 ・質の高い士の確保に係る検討
 イ 統合運用や国際活動を踏まえた教育内容の充実、手法の改善
 ウ 職業の魅力化の観点も踏まえた再就職支援
 2)事務官等に関する施策
 自衛隊の隊務運営上の問題、人事管理上の問題を踏まえ、「より機能する自衛隊」の構築のためには、事務官等の在り方について抜本的な検討が必要な状況が生じている。今後の事務官等については、「高い専門性を備え意欲を持って効率的に行政事務分野について遺漏なきを期す」必要があり、以下の3項目の課題を設定し、各種施策の具体化に向けた作業に順次着手している。
 ・事務官等の位置づけと役割の整理・確立
 ・行政事務処理体制の効率化/既存の人材の効率的活用
 ・個々の事務官等の行政事務処理能力の向上
 (6)新たな安全保障環境を踏まえた積極的広報体制の確立
 国の平和と安全は、広く国民的基盤に立ち、国民各層の理解と支持があって成り立つものであり、国民各層の理解と支持を得るための広報活動が必要である。
 自衛隊の任務の多様化等に伴う国民の防衛に対する関心が高まり、情報伝達手段の進展、多様化等の変化を踏まえ、広報の在り方についても見直す必要が生じてきているところであり、以下の施策を講ずる。
 ・積極的な広報体制の構築のための施策
 ・自衛隊と国民生活との接点の拡大のための施策
 ・広報活動における手段、対象の重点化
 ・自衛隊の活動の国際化に対応する広報