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2001年9月11日は、21世紀の世界において文明社会の安全保障を担う全ての者にとって、決して忘れることのできない日であります。煙を上げて崩れ落ちる世界貿易センターと逃げ惑う人々の映像を、あれから私たちは、何度、目にしたことでしょう。
あの日から7年が経過しました。私は今日この日に、あのテロの悲惨さを思い起こし、隊員諸官とともに、日本が21世紀における安全のために「テロとの闘い」を継続するという強い決意を改めて共有すべく、訓示を行います。
テロは、我々が培ってきた文化、価値観、人権、そして大事な人々との生活を破壊するものです。9・11テロの被害者は、3000人にのぼります。アメリカの人々だけではなく、ヨーロッパ、アジア、中東、中南米など、実に60カ国以上の国の人々の貴重な命が失われました。我々日本人同胞も、24人が犠牲となりました。これは、アメリカ、イギリスに次ぐ大きな犠牲です。犠牲となられた全ての方々の御冥福と、御遺族への深い哀悼の意をここに表明したいと思います。
9・11テロの惨禍を眼にしたとき、21世紀は、このようなテロが頻発する凄惨な世界になるのではないかと危惧を抱いた方も少なくないでしょう。その後の7年間をみれば、各国が自国の警備を強化し、テロとの闘いに力を合わせることにより、かなりの程度でテロ活動を抑えることに成功しているといえましょう。しかし、依然として、世界中でテロ事件は後を絶ちません。ウサマ・ビン・ラーディンなどのアルカイダの指導者や残党は、今もアフガニスタンとパキスタンの国境地域に潜伏していると言われています。テロリストは、抑止の効かない相手であり、国家が軍事力のみならず、様々な手段を組み合わせて、地に足の着いた努力を粘り強く行う必要があり、決して妥協は許されないということを、隊員諸官におかれては、改めて認識して頂きたいと思います。
9・11テロの翌12日、国連安全保障理事会は、決議第1368号を全会一致で採択し、国際社会に対して、テロ行為を防止・抑止するための努力を呼びかけました。当時、アフガニスタンは、アルカイダの本拠地となっていました。その拠点に対し、多国籍軍による「不朽の自由」作戦が敢行され、続いて、国際治安支援部隊(ISAF)による治安の維持や復興支援が実施されてきました。こうした国際社会の取組みは、今この時点においても休むことなく続けられています。国際社会は、アフガニスタンにおいて900名を超える犠牲者を出しながらも、むしろ、派遣兵士を増派しています。イラク戦争に反対したドイツ・フランスもその例外ではありません。アフガニスタンは、「テロとの闘い」の中核であり、アフガニスタンを二度とテロの温床としないためにも、今、国際社会が連帯してその努力を結集させているのです。
では、こうした国際社会における努力の中で、我が国は何をなすべきでしょうか。これまで我が国は、アフガニスタン復興のため、既に14億ドルを超える支援を実施しています。しかし、我が国の協力の在り方として、お金を出すだけでよいとは、私は思いません。かつて湾岸戦争に際して、130億ドルもの資金を拠出していながら、国際社会の共感を得ることができなかったことを忘れるべきではありません。ともに汗をかくことによって初めて、国際社会の連帯を示すことができるのです。その連帯に空白ができれば、テロはそこに付け入ってくるでしょう。
「テロとの闘い」は、インド洋上においても行われています。インド洋で行われている海上阻止活動は、フランス、ドイツ、イギリス、アメリカ、カナダやイスラム国であるパキスタンなどが参加し、テロリストが海を渉って世界各国に活動の場を広げるのを防いでいます。そして、世界のアヘンの9割以上を生産するアフガニスタンから麻薬が輸出され、それが資金源となって、不法に武器がアフガニスタンへと流入するのも阻止しているのです。各国の艦船は、日本全土が全て収まるほどの広域な海域で活動しています。このため、洋上で燃料を補給しなければ、作戦効率が下がってしまいます。海上自衛隊の給油活動が、各国から高く評価され、感謝される所以です。洋上での補給は、過酷な環境の下、高い集中力と忍耐を要する活動です。我が国は、こうした活動を安定的に継続できる数少ない国の一つです。だからこそ、自衛隊がそこから離脱することは、あってはならないのです。
一方で、もしも、海上阻止活動が行なわれなくなり、インド洋がテロリストの海になったらどうなるでしょうか。我が国は、その石油輸入の約9割を中東に依存しています。1日往復約90隻ものタンカーがインド洋を渡り、中東と日本の間を航行しています。更に、今年に入り、インド洋において海賊事案が増加しています。4月には、日本船籍の船もアデン湾で海賊に襲われました。この時、救援に駆けつけたのは、日本が給油したことのあるドイツの船でした。このように、海上阻止活動は、中東と我が国を結ぶ海域の平和と安全に大きく貢献すると同時に、日本の安全は、日本一国で確保できるものではなく、世界の安定のための国際的な取組の中でこそ実現されるものです。
国際テロに立ち向かうには、国家が、その持てるあらゆる手段を用いて粘り強く地道に努力する必要があることは、先ほど述べたとおりです。防衛省・自衛隊においても、海上自衛隊による補給支援活動だけがこの「テロとの闘い」を支えているのではありません。陸海空各自衛隊が平素から行っている情報収集や警戒監視のための活動に加え、いざというときに備えた日々の訓練にも、遺漏なく取り組まねばなりません。テロは、いつどこで発生するか予測できないものであるからこそ、陸海空自衛隊全体で、常日頃から、テロへの備えに万全を期す必要があります。
今日、9月11日は、国際社会にとって「テロとの闘い」の原点とも言うべき日です。我が国は、国際社会の責任ある一員として、引き続きテロと闘っていかなければなりません。これは、我々の忍耐力が試される苦しい闘いです。だからこそ、我々は、強い決意の下で、テロとの闘いを自らの問題として、不断の努力を続けていかなければなりません。隊員諸官の一層の精励と研鑽に期待し、9月11日の私の訓示といたします。 |