防衛関係資料


 

総合取得改革PT報告書

防衛省「総合取得改革推進PT」が3月28日、防衛相に提出した報告書は次の通り(一部省略)

 I 序
 平成15年9月に防衛庁長官(当時)を委員長とする総合取得改革推進委員会が設置され、それまでの調達改革等の成果も踏まえつつ、調達効率化施策等を中心に総合取得改革の検討を進めてきた。同委員会は、検討した施策を着実に実施に移すとともに、検討の進捗状況等について、平成16年7月及び平成17年3月の2回にわたり中間報告を行っている。
 一方、最近においては、装備品取得をめぐる状況に変化が見られる。
 第一に、装備品の一層の高度化・複雑化に伴い、装備品の単価が上昇する傾向がある一方で、我が国の財政事情は一段と厳しさを増してきている。このような状況下、装備品取得単価の上昇が取得数量の減少につながり、さらなる取得単価の上昇につながる一種の悪循環ともいうべき状況が生起している。このため、各般のコスト抑制施策の一層の推進が喫緊の課題となってきており、装備品の構想から廃棄に至るライフサイクル管理の強化が必要になっている。
 第二に、透明性、公正性の一層の向上が従来にも増して求められるようになってきている。防衛装備品の調達については、製造能力を有する企業が限定されており、その結果、随意契約が多いことや秘密保全の必要があるなどの制約の中、当省としてはこれまでも装備品の取得に係る情報の開示に努めてきたが、今後、調達手続も含め一層の説明責任が求められている状況にある。
 より良質の装備品をより安く取得することが総合取得改革の一貫したテーマの一つであるが、上記のような状況の変化も踏まえ、総合取得改革の一層強力な推進を図ることが必要となり、平成19年10月18日に、石破防衛大臣により「総合取得改革の加速に関する大臣指示」がなされ、寺田防衛大臣政務官を長とする総合取得改革推進プロジェクトチームが設置されたところである。
 当チームにおいては、その設置後、輸入調達に係る過大請求等の事案が発覚したことから、輸入調達問題への対応も含め、大臣指示事項に基づく各議題について9回に及ぶ会合を開催し、議論を重ねてきた。本報告書は、これまで総合取得改革推進プロジェクトチーム会合の中で議論してきた施策等について取りまとめたものである。

 II 会合の概要(略)

 III 各施策の内容

 1 一般輸入調達問題への対応
 (1)最近の一般輸入調達に係る事案
 (ア)山田洋行等による過大請求
 1)昨年11月22日、(株)山田洋行が、防衛省に納入した輸入装備品2件の契約について、過大請求を行っていたことが判明した。
 2)これを受け、同社を取引停止とするとともに、同社との平成14年度以降の他のすべての契約についても、見積書等の真正性を外国製造メーカーに直接確認する調査を実施している。
 3)(株)山田洋行以外の商社等についても、抽出調査を実施している。当該抽出調査を通じて、極東貿易(株)との間の潜水艦搭載用通信アンテナに係る契約計6件について見積書の偽造が、また、そのうち5件について過大請求が判明し、本年1月7日に、同社を取引停止とするとともに、その旨を公表した。これを受け、同社との平成14年度以降の他のすべての契約についても、見積書の真正性を外国製造メーカーに直接確認する調査を実施しているところである。
 (イ)チャフ・フレア射出装置に係る変更契約
 1)平成12年度におけるチャフ・フレア射出装置の調達契約に関し、(株)山田洋行が米国の製造企業であるブリティッシュ・エアロスペース社(BAE)の見積書を偽造し過大請求を行った疑義があったものの、最終的に当時の防衛庁においては意図的、作為的な過大請求とまで断定するに至らず、当初契約の減額措置のみを行った。
 2)当時の関係資料の精査、職員からの聴取、BAEからの情報提供等により、(株)山田洋行の過大請求事案として処理せず、減額変更のみを行うことだけで処理された経緯等について調査を行っている。
 (ウ)C−Xエンジンの選定・調達
 1)航空自衛隊の次期輸送機(C−X)のエンジンについては、提案要求に応じた3社から寄せられた提案について選定手続きを実施し、平成15年8月の装備審査会議の審議を経て、米国ジェネラル・エレクトリック(GE)社のエンジンが選定された。
 2)平成16年度、平成17年度に当該エンジンの米国GE社の販売代理店である(株)山田洋行を契約相手方として、合計5台のC−X試作機用エンジンの調達を行った。本年度については、(株)山田洋行による過大請求が判明したこと等を踏まえ、6台目のエンジンの調達を取り止めた。
 (エ)暗視装置問題
 航空自衛隊基地警備用の暗視装置を平成18年3月に一般競争により輸入調達したところ、契約した暗視装置とは異なる製品が納入されたことが判明した。これを受け、本件契約を解除するとともに、取扱業者である(株)サイエンステクノロジートレーディングを取引停止とした。
 (2)対応
 (ア)チェック機能の強化
 1)海外製造メーカーへの見積書等の直接照会 一般輸入調達に係る水増しは、海外製造メーカー作成の見積書等の偽造によってなされていたことから、見積書等の真正性の確認については、海外製造メーカーに直接照会することが最も確実な方法である。このため、平成19年12月から、輸入品の売買契約に際し、直接海外製造メーカーに見積書等の真正性を確認する措置をとることとした。
 2)特約条項の新設 他方、上記の海外製造メーカーへの直接照会は、当該メーカーが防衛省との契約当事者ではなく、契約当事者である商社等との間にも特段の取極めがないことから、あくまでも任意の調査である。今後、この調査の実効性を高めるため、商社等との間で、海外製造メーカーからの見積書等の原本提出及びこれらを海外製造メーカーに直接照会を行うこと並びに海外の流通業者を介する場合においても海外製造メーカーの見積書等の提出を義務付ける等を記載した特約条項を新設するなどの施策を平成20年度から導入することとした。
 3)輸入調達調査の導入 国内製造メーカーについては、工数の把握等、原価計算の適正性の確認を目的とした制度調査を平成11年度より実施してきており、過大請求の摘発について一定の効果を発揮しているが、一般輸入調達においてはかかる調査は行ってきていない。このため、輸入調達の契約相手方となる商社等についても、商社等の有する経理会計システム上の記録と防衛省に提出した見積書の照合を行うとともに、社内不正防止、法令順守体制等について調査を行う輸入調達調査を、公認会計士等部外専門家を活用しつつ、平成20年度より導入することとする。
 4)品質証明書等の直接照会 防衛省においては、一般輸入調達について、随意契約の見直しを行い、原則として一般競争入札方式に移行してきているところであるが、他方で、前述の暗視装置の事案で真正でない物が納入される事案が発生したことを踏まえ、チェックの強化も必要である。このため、海外製造メーカーに対する品質証明書等の直接照会を行うことを明記した特約条項の新設を行うこととした。また、梱包された装備品については、全品開梱又はこれに準じた方法で確実にチェックすることとし、平成20年度から実施することとする。
 5)本体価格構成の明確化
 前述のチャフ・フレア事案においては、(株)山田洋行が輸入品売買契約の本体価格の中に役務(技術支援)費用が明示されずに含まれていたとして契約額の減額申請をしたことにより、結果的に減額の変更契約で措置された。このことから防衛省としても装備品等の本体価格の構成内訳について明確にする必要があり、このため、平成20年度から本体価格と役務に係る費用を別計上とすることを経理装備局長通知により省内の関係職員に徹底するとともに、企業に対しても説明し、見積書の内訳を明確にするよう求めることとした。
 6)輸入調達事務の専担部署の新設等 従来、装備施設本部(当時は調達実施本部)には一般輸入調達事務を一元的に所掌する課が存在したが、現在は、航空機等の装備品の種類に応じた組織編成をとっており、一般輸入調達事務の専任担当部署は存在しない。このため、今般の一般輸入調達事案に係る事実確認や対応策の立案・実施が必ずしも円滑に行われなかった面があったことも踏まえ、装備施設本部に輸入調達事務の専担部署を新設することとし、平成21年度概算要求を行うこととする。また、併せて、装備施設本部内において、一般輸入を所掌する装備施設本部副本部長以外の副本部長に当該事務の審査を所掌させることや監査課による輸入調達に係る部内監査強化も併せて図ることによって、重層的・相互牽制的なチェック体制の整備を図る。
 (イ)現地価格調査機能の強化
 1)輸入調達専門官の増員等 装備施設本部では輸入調達専門官(米国駐在3名)が海外製造メーカーを訪問し、価格妥当性の検証等の調査に従事している(現地価格調査)。しかし、現状では、全契約件数に占める当該調査件数の比率は概ね一割以下であり、機能強化を図ることが必要であるため、平成20年度に輸入調達専門官7名の増員を予定しているところである。また、装備施設本部FMS(有償援助調達)専門官を当該調査に活用する。
 2)各自衛隊調達関係連絡官の活用 海外製造メーカーが中央調達と重複するため、従来、現地価格調査を行ってきていない地方調達について、米国に駐在する各自衛隊の調達関係連絡官を活用し、一般輸入調達に係る現地価格調査の充実・強化を平成20年度から図ることとしている。
 3)諸外国の調達動向の入手 米国を含む諸外国の調達動向に係る情報については、従来、必ずしも組織的に収集していなかったが、一般輸入、FMSを問わず、諸外国の調達数量は輸入品の調達価格に大きな影響を与える。このため、平成20年度より、装備施設本部在米連絡官(輸入調達専門官及びFMS専門官)及び米国に駐在する各自衛隊の調達関係連絡官を通じて関係情報を収集する。その際、米国防省のみならず、FPG(外国調達グループ、FMS購入国のワシントン駐在連絡官をメンバーとする会議体)メンバー国等からも入手できるよう努めることとする。
 4)FMS輸入監査の活用
 FMSの役務契約によって米国政府に米国製造メーカーの監査を依頼することが制度上可能とされていることから、一般輸入の価格妥当性の検証の一環として、かかる枠組の活用を検討する。
 (ウ)過大請求事案に対する制裁措置の強化
 過大請求事案に対する制裁措置について、現状においては、過払い額の返還に加えて、過払い額と同額の違約金を徴収することとしているが、過大請求事案に対する制裁措置の実効性を一層高めるために、違約金の増額(2倍)を行い、平成20年度から実施する予定である。
 また、早期かつ確実な違約金の金額確定・徴収を行うため、違約金の算定方式について、引き続き検討を行う。
 (エ)海外製造メーカーとの直接契約の推進
 1)現状 防衛省においては、随意契約の見直しを行い、現在、一般輸入調達においては、原則として一般競争入札方式に移行してきているところである。このため、調達手続において、商社の介在を前提としているものではなく、海外製造メーカーが直接参加することも現行制度上十分可能である。しかしながら、現状においては、海外製造メーカーの代理権を有する商社が応札するケースが大半を占めており、海外製造メーカーとの直接契約の可能性を拡げ、調達形態についてコストを比較しつつ最適な方法を選択できるようになることが望ましいものと考えられる。
 2)海外製造メーカーへのヒアリングの実施等 以上のような状況を踏まえ、防衛省としては、まず海外製造メーカーの日本法人から、直接契約の可能性、参入上の障害の有無等についてヒアリングを実施した(平成20年1月海外製造メーカー日本法人等7社)。その結果、商社(代理店)を介する方が、我が国の会計法令、商習慣に適した販売活動等が容易であり、かつ、コスト面でも有利であるため、防衛省と直接契約を行うメリットは見当たらないとの意見がある一方で、商社を介さない直接取引に意欲を示す企業もあった。また、現状よりも参入を容易にする観点から、英語環境の整備、前金払いや瑕疵担保期間等会計法令や商習慣の相違に起因する課題も指摘されたところである。また、上記ヒアリングと併行して、直接契約の方法について、日本の民間企業や外国の例について調査を行った。
 3)直接契約のための環境の整備 このような海外製造メーカー日本法人等に対するヒアリング等の結果を踏まえ、今後、海外製造メーカーの参入を容易にする環境整備を継続的に行っていくこととする。当面、英語による入札参加への案内、入札心得の英語版の作成や海外製造メーカー等への説明会の実施などを進める。また、参入上の課題とされる前金払い、瑕疵担保期間については、必要に応じ、前者は予算上の措置を行うこととし、後者は保険の活用を図る。さらに、直接契約を円滑に推進するため、組織改編(輸入調達事務専担部署の新設=既出)、人材の育成・確保を図るとともに、商社経験者等部外専門家の活用を図ることとする。
 4)直接契約の各種形態の検討 防衛省が海外製造メーカーとの直接契約を今後行う場合において、効率性の観点から、直接契約に伴い必要となる事務の一部をアウトソーシングすることも含め、直接契約方式の各種形態についてトータルコスト比較等を行うこととし、平成20年度に「一般輸入の直接契約方式等に係るコストベネフィット分析等に関する調査」を行うことを予定している。
 (オ)調達職員の人材育成等の強化
 複雑化する装備品の調達事務に対応するためには、調達関係職員の恒常的なレベルアップを図ることが不可欠である。また、公正性・透明性の確保の徹底のため、職員のコンプライアンス意識の強化を継続的に進める必要がある。このため、従来の装備施設本部の研修システムについて専門性に特に配意しつつ全般的に見直すとともに、平成20年6月から調達に係るコンプライアンス研修を導入することとする。
 更に、輸入調達に関しては、今後、海外製造メーカーと直接契約を進めていく上での必要な専門知識、輸入調達専門官として必要な語学を含む専門知識についての教育プログラムを策定し、所要の教育を施すこととする。
 2 装備品等のライフサイクルコスト管理の強化
 (1)現状の課題
 装備品は、相当の期間と費用をかけて、構想から開発を経て量産され、量産後は、長期間使用されるのが通例である。装備品の価格の高低は量産単価で比較される場合が多いが、装備品の構想、開発、量産、運用(維持・修理・改修を含む)、廃棄に至るライフサイクル全体に要するコストを適切に管理していくことで、開発や量産への着手等の結節点において、費用(LCC)対効果の判断を踏まえた意思決定が可能になるとともに、コスト面に係る説明責任を強化することが可能となる。
 これまでLCCについて、個別装備品毎に部分的な見積が行われてきたが、全省的な体制、統一的な算定基準等を早急に整備し、管理していく必要がある。
 (2)今後の取組
 (ア)体制整備
 1)LCC管理については、平成20年3月末に、次の事項を主な内容とする管理手続等を策定する。
 ・装備品取得(開発、量産着手)に係る意思決定時にLCC見積を審議対象とし、意思決定の資とする。
 ・毎年度、LCCの追跡(見積値の実績値による更新)を行うことで、事後検証を行うこととし、この結果などを年次報告として防衛大臣に報告するとともに、全省的に共有する。
 ・LCC管理の全省的な取組を推進するため、諸外国等で活用されているIPT(注)の手法を参考にし、組織横断的な枠組として、連絡調整会議(仮称)を設置する。なお、LCC管理状況、特にLCC見積に特に重大な差異が生じた場合には、部外有識者で構成される防衛調達審議会に報告する。
 ・さらに、連絡調整会議における参加機関の担当職員からなる作業チームを設ける。
 (注)IPT=Integrated Project Team。ある事業における特定の問題解決を効率的に図るため、関係する部門や利害関係者の間の情報共有と意見調整を図る組織横断型の合議体(チーム)。
 2)LCCに係る情報を一元的に収集・整理・蓄積し、LCCの追跡、分析、検証等を行う専門組織(コスト管理部署)を装備施設本部に整備することとし、平成21年度概算要求を行う。
 (イ)統一的なLCCの算定方法等の確立
 これまで、当省におけるLCC見積は、各機関毎に独自に行われてきており、斉一性に欠けているため、LCCの統一的な算定方法等の早急な確立が必要であることから、装備品のカテゴリー別に統一的なコスト構造を定め、これに基づき見積りを行う算定要領を平成20年3月末に整備する。
 (ウ)LCC管理の試行
 平成20年3月末から、主要な装備品を対象にLCC管理の試行に着手する。その上で、対象とする主要な装備品は漸次拡大していくこととする。このような試行を通じて、必要に応じて制度の見直し等を進め、平成21年度から本格実施の予定である。
 (エ)人材育成
 LCC管理は、契約や原価計算に係る知識の他、装備品に係る知識やリスク・マネージメント等のプロジェクト・マネージメントに係る広範な知識・能力が必要である。このような知識・能力を培っていくためには、単に教育研修のみを実施するだけでは十分ではなく、LCC管理について統一的かつ計画的な専門教育体系を整備し、関連知識やノウハウの蓄積を図っていく必要がある。
 LCC管理に係る知見を全省的に浸透させるため、平成19年度に、トヨタ自動車(株)を始めとする民間企業のコスト管理手法等の説明会等を実施した。
 平成20年度に、部外有識者の知見を活用して、研修体制を装備施設本部に整備し、平成21年度より、LCC管理に関する本格的な研修を開始するとともに、一定のLCC関連ポストにつく者に研修受講を義務づけるなどの措置をとることとしている。
 3 コスト抑制のための達成目標の設定
 (1)数値目標の設定
 中期防衛力整備計画(平成17年度〜平成21年度)においては、「調達価格の抑制を含む装備品等のライフサイクルコストの抑制に向け、具体的な達成目標を設定しつつ、取組を一層強化する」とされている。これを受け、各種の効率化施策により達成すべき経費抑制の数値目標を初めて設定した。
 具体的には、装備品関連事業(研究開発、量産及び維持・修理等の装備品のライフサイクルにわたる事業)を対象に、維持整備方法の見直し(整備項目・間隔の見直し等)、部品・器材の転活用、民生品・民生技術の活用、一括調達等(まとめ買い)、複数年度契約への移行、仕様の一部共有化・共通化、仕様の見直し等の各種の効率化施策により、18年度と比較して、中期防衛力整備計画最終年度の21年度までに9%、5年以内(23年度まで)に15%のコスト縮減を達成することを目標とした(現中期防期間末に実現可能性を検証)。
 (2)今後の取組
 この数値目標の達成のため、具体的な施策を着実に実施していく。特に、陸海空自衛隊間の一括調達や短期集中的な調達は、コスト縮減のための有効な施策であり、既存の陸・海・空の枠組に捉われることなく、積極的にこれを推進していく。また、必要に応じて、効率化施策(企業に効率化努力のインセンティブを与え得る施策を含む)を追加していく。
 こうした取組により経費抑制を進める一方、新たなニーズに対応するための装備品取得に係る経費等を確保し、全体として効果的かつ効率的な装備品取得を推進する。
 4 インセンティブ契約の拡充
 (1)現状の課題
 防衛省が契約時に行う原価計算においては、契約別の工数等に関する資料が十分に得られないなどの場合に、契約の履行に基づく実績額の監査を行った後に支払代金を確定する契約方法をとることが少なくない。この場合、企業の契約履行過程における効率化努力によりコストダウンしても、減額変更されるためコストダウンの成果が企業側に還元されず、さらに、次回契約以後の契約額、利益額の減少となるため、企業側にコストダウンに取り組む意欲が生じにくい。他方、費用超過であっても契約額は増えないことから企業の不満も大きい。
 インセンティブ契約制度は、企業に対し、利益の増大を動機付けとしてコストダウン活動に積極的に取り組ませ、装備品の調達価格低減を図ろうとするものである。企業のコストダウン活動は、生産性の向上、低コスト体質の強化・促進にも資するものであり、ひいては防衛生産技術基盤の強化にも繋がるものと考えられる。欧米諸国では、発生コストを補償した上でコストダウン等が実現した場合に利益を追加的に付与するコスト補償型契約や企業の自助努力を期待する確定契約を活用している。
 防衛省においても、平成11年に減価提案制度を導入し、平成14年に制度を拡充してインセンティブ契約制度として改正し運用している。しかしながら、これまでの約9年間で2件の適用にとどまっており(注)、調達価格の低減が達成されたとは言いがたい状況にあり、現行制度を見直し、実効力ある新たな枠組の構築を目指してきたところである。
 (注)1)現行インセンティブ契約制度
 ・企業の有する技術または製造ノウハウを活用し、価格の低減が達成できるもの
 ・技術提案料として、5年間、低減額の1/2相当額を付与
 ・技術提案を外部委員会の意見も踏まえ、確認試験等を行い審査
 2)現行のインセンティブ契約制度がほとんど活用されなかった理由として、企業より、要件が技術提案に限定され日々の企業努力を反映することが困難、技術の適用は量産段階からでは困難、審査手続きが煩雑で基準が不明確、利益の保障や付与方法でメリットが少ないことなどが挙げられている。
 (2)今後の取組
 (ア)新たなインセンティブ制度の導入
 1)新たなインセンティブ契約制度としては、提案要件、適用範囲、インセンティブの大きさ、審査手続きの面から改善を図ることとする。
 2)提案要件については、技術提案に限定せず、新たな生産体制や新規設備の導入など減価が直ちに期待しうるもの、あるいは、生産現場での効率化活動など減価が段階的に期待しうるものなど、多様なコスト低減努力を対象とする。
 3)適用範囲としては、ライフサイクルを通じたコストダウンが実現しうるよう制度を構築する。量産段階のような反復継続契約では企業の効率化計画に沿って早期の確定契約化を行うこととし、研究開発や量産初期のようなリスクの高い段階の契約では企業の創意工夫によるコストダウンにインセンティブを付与することとし、量産移行時に適用可能な技術や製造ノウハウを確立した場合には、現行の技術提案制度を適用し量産初期段階からコストダウンが実現しうるようにする。
 4)インセンティブの大きさについては、より魅力あるものにするため、5年間の期間内での各年度のインセンティブ比率を柔軟化する等の工夫を行う。
 5)審査手続きについて、防衛省側の各部局による重複的な審査の排除、生産現場における審査・確認、書類審査の充実等、手続きを簡素化するとともに、要領を定めて手続きの明確化を行うこととする。
 6)新たなインセンティブ契約制度を導入するに当たり、インセンティブ契約の企業提案の適正性を検証することが必要であり、原価構造に関する官民の情報共有を行うための統一的な基準を策定していくこととする。開発、量産初期段階での製造工程やコストを管理するための仕組みや量産段階での企業のコストダウン計画を審査するため原価計算の精緻化を行うためのガイドラインを逐次整備していくこととする。
 (イ)今後の予定
 上記の方針に従い、20年度より新たな制度を導入することとする。新制度の運用に当たっては、企業側の取り組み状況や防衛調達審議会の意見も踏まえつつ、フォローアップしていくこととする。
 5 民間委託の拡充
 (1)現状の課題
 防衛省においては、従来から業務の効率化のため自衛隊の任務遂行上支障を生じない範囲で民間委託を実施してきている。また、現在、総人件費改革への対応として部外への委託の範囲を拡充(陸自において給食業務、海自において補給・整備業務等、空自において文書管理等補助及び出入門管理等の拡充に取り組むことを計画)しつつあり、同改革に着実に取り組んでいるところである。
 他方、今後、装備品の高度化、任務の多様化に対応するためには、個別業務ごとに部外への委託の検討を行っていく従来型の民間委託だけでは限界があり、総合取得改革の観点から、トータルコストの把握を含む費用対効果を分析しつつ、更なる民間委託の拡充のための新たな手法の活用等が必要である。
 (2)今後の取組
 今後の民間委託の拡充への取組としては、上記に加え、民間の資金、経営能力及び技術力を施設整備等に活用するPFI(Private Finance Initiative)の一層の推進や、民間に自主的な改善・効率化活動を促し、装備品の可動率向上や長期的なコスト低減を図ることを目的とするPBL(Performance Based Logistics)の手法の活用可能性の検討が考えられる。
 1)PFI手法の活用については、これまで年度ごとに事業を選定し、検討してきたが、今後、より一層の推進を図るため、「規制改革推進のための第2次答申」(規制改革会議)を踏まえた取組の中で、平成20年中に防衛施設全体を対象とした民間開放の指針及び中長期的な計画を策定し、爾後計画に従い、逐次実施することとしている。
 2)PBLは、装備品の補給・維持に係る業務について、個々に工数に応じた契約を結ぶのではなく、民間業者が包括的に信頼性や可動率を保証する契約を結ぶものであり、当該業務の効率化・合理化が大いに期待されるものの、複数年度契約や予算費目の柔軟性が求められるなど、我が国の契約制度等に馴染まない面も見受けられる。したがって、その実態を把握するため諸外国の事業ごとの調査研究を行う必要がある。今後、PBLの我が国への適用が可能であれば、平成21年度以降に制度設計を行うことを予定している。
 6 統合運用の視点に立った装備品取得
 (1)これまでの取組
 自衛隊の装備品については、これまでも、統合運用を前提に、1)護衛艦に陸・空自衛隊のヘリコプターを搭載可能とする等の装備品間の仕様の整合化、2)コスト低減も図りつつ、部品の相互融通等により相互運用性等を向上するための装備品の共通化、3)各自衛隊の指揮システムや業務系システムの統合化等による統合運用基盤の強化、4)上記1)〜3)を考慮した研究開発の推進等の取組を行ってきた。
 (2)今後の取組
 統合運用における三自衛隊の役割分担と装備の在り方を踏まえた上で、類似装備品の仕様共通化や計画的な各自衛隊間の一括調達等によるコスト低減効果を検証しつつ、救難・衛生、輸送、警戒監視等の分野において、統合運用に資する適切な装備品整備について、今後検討を促進する。
 また、統合幕僚監部及び陸上・海上・航空幕僚監部等の関係者により装備品に関する運用構想、共通化・ファミリー化、統合運用ニーズ等について包括的な検討及び調整を行うため新たに設置する枠組の具体化、統合運用の視点を踏まえた研究開発事業の評価、研究開発における車両・誘導弾のファミリー化の検討、各自衛隊間で装備品・部品の在庫情報や仕様書情報などを共有するシステムの構築(平成22年度からのシステム運用開始を目指す)、等を推進する。
 7 FMSの一層の改善
 (1)現状の課題
 FMS調達は、米国政府が武器輸出管理法に基づき、武器輸出適格国に対し装備品等を有償で提供するものであり、価格及び履行時期は米国の見積りとされ、支払いは前払いとする等の条件が各国共通に適用されている。このような基本的な仕組を背景に、装備品等の納入が目標時期より遅れる場合や、前払金の精算までに長期間を要する場合がある、価格内訳の開示が十分でないなどの問題点があり、従来からその改善に向けて種々の取組を行ってきている。
 (2)これまでの取組
 (ア)新精算方式(ACCP)の導入(平成9年)
 FMSケース(契約)の価格は見積であり、納入完了後、米国が精算を行って、代金が確定する。一般的に多くの品目が含まれる大型ケース、米軍や他の多くのFMS購入国が同時に注文をしているケース等については、精算に長期間を要する場合がある。
 新精算方式は、納入完了後2年以内を目途にみなし精算をすることにより、早期価格確定、早期ケースクローズ(契約完了)を図る制度であり、我が国は平成9年に参加した。この結果、納入完了後2年以上経過しているケースで精算が完了していないものの未精算金額は、最近の5年度間で、平成14年度末の約407億円から平成18年度末の約204億円へ大幅に減少した。
 (イ)利子付口座の開設(平成17年)
 FMSの支払いは前払いが原則であり、前払い金は、米連邦準備銀行に入金される。従来、我が国の支払った前払い金は、無利子口座(トラストファンド)に入金されていたが、調整を経て、平成17年3月に利子付口座の開設に至った。その結果、平成17年度は約21億円、平成18年度は約58億円の利子を国庫に収納した。
 (ウ)価格の透明性の拡大
 FMSの価格の透明性の拡大を図るため、平成14年度及び平成15年度のイージス装置等の見積りについて、コンポーネント(主要構成品)ごとの価格内訳を入手し、内訳を精査して価格低減を実現した。また、平成17年度より、一部のケースの引合書(契約書の原案)の作成に参加することにより価格内訳を入手しており、平成18年度より、役務ケースについて、工数や旅費を記載した工数旅費データシートの提供を受けている。
 (エ)修理物品の早期納入
 装備品等の修理については、基本的に同一物品を修理して返納することとされているが、平成15年から、一部の修理品について、米軍が保有する同一製品の修理完了物品の返納等を認める方式を採用し、早期納入が可能となった。
 (3)今後の取組
 引き続き納入遅延及び精算遅延の低減、価格内訳の入手拡大等、FMSの各般の制度改善を求めていくこととする。特に、価格内訳の入手については、現在、役務ケースが大半であるが、今後、物品についても、価格内訳の入手を拡大する点を中心に取り組んでいく。
 8 技術研究開発の評価の強化等
 (1)現状の課題
 1)防衛省においては、研究開発が効果的・効率的に行われるよう、事業の各段階(事前・中間・事後・追跡)で評価を実施している。この評価については、開発経費や量産コストの抑制等総合取得改革の観点からの評価が必ずしも十分でないことや、政治任用者を含めて省内で評価内容を共有する時期が必ずしも適切ではなく、予算要求などの意思決定プロセスへの反映が十分でないことが課題となっている。
 2)また、近年、諸外国では装備品の国際共同研究・開発が活発化しており、防衛省としても、米国との間で国際共同事業を進めてきているところである。国際共同事業が欧州を中心に活発化している背景としては、NATO諸国間の協力の深化や欧州統合の流れとともに、冷戦終結等を背景とした防衛産業の多国籍化の進行等が挙げられる。国際共同事業には、資金分担による開発経費の低減、技術リスクの低減、量産効果による調達経費の低減等の利点がある一方、参加国間での要求性能の調整や経費・生産分担の交渉が困難であること、他国の計画変更によるリスク等の問題点がある。
 (2)今後の取組
 (ア)研究開発評価体制の確立
 研究開発評価に係る課題に対応するため、平成20年度より、防衛大臣政務官を委員長とする技術評価委員会を設置し、新たに実効性のある効率的な評価体制を構築する。技術評価委員会では、予算要求を検討している開発事業及び主要研究事業について、予算要求に関する省内検討・調整の早期の段階において、統合運用の視点も踏まえつつ、個々の事業で達成しようとしている目標及びその目標を達成するための手段として適用技術、事業経費、事業期間等が適正かどうかを評価する。開発経費や量産コストの抑制等総合取得改革の観点を重視して優劣を評価することとする。技術評価委員会での評価を踏まえ、経費の見直しなど必要な事業の適正化を行った上で、研究開発の効率化を図ることとする。
 (イ)技術交流の推進
 1)効率的・効果的な研究開発に資する国際協力を推進するため、各国との技術交流をより活性化する。米国との間においては、さらなる交流の深化(新規研究開発案件の調査、技術者交換計画の活発化等)を図るとともに、デュアル・ユース技術分野を足掛かりに米国以外の各国との技術交流(相互比較試験の実施、職員の派遣、情報交換等)を推進する。また、各国の技術及び研究開発の方向性に関する技術調査等を実施する。
 2)また、防衛省として効果的・効率的な研究開発に資する国際協力を推進するためには、活発化しているこうした国際共同研究・開発に係る背景や利点・問題点等について、一層検討を深める必要がある。
 9 中央調達・地方調達の見直し
 (1)現状の課題
 防衛省では、装備施設本部において主に艦艇、航空機、武器、車両等の主要な装備品や各部隊で共通的に使用するものを調達し、各自衛隊やその他の機関において主に部隊等の任務遂行に密着したものを中心に調達しており、前者を中央調達、後者を地方調達と呼んでいる。
 中央調達、地方調達では、その性格から、取扱う品目や手続に相違があるが、近年、調達に関する手続等のより一層の透明化、多様な事態や海外での自衛隊の活動への迅速な対応が求められており、その観点から、中央調達、地方調達に関する手続等の見直しを行う必要がある。
 (2)今後の取組
 (ア)調達の透明性の一層の向上
 1)地方調達に係る第三者監視の実施 装備品等の調達に関する第三者監視機関として、本省に防衛調達審議会が設置されているが、昨年11月、公共調達の適正化に関する関係省庁連絡会議において、本省のみならず、相応の発注規模の地方支分部局にも第三者監視機関を原則として設置することとされた。これを受け、従前、地方防衛局の発注する建設工事について契約の監視を行っていた各地方防衛局に設置している入札監視委員会(部外有識者で構成される第三者監視機関)を見直し、全ての契約の監視を行うこととした。
 2)高額な随意契約の大臣承認等 平成20年度から、地方調達においても、業務の効率に配意しつつ、現行の中央調達と同じ基準(主要な装備品は1・5億円以上)で、高額な随意契約に関する大臣の承認を得ることとする。
 3)調達に関するデータの一元管理 地方調達を含めて調達に関するデータを一元的に管理する体制を整備することとし、平成21年度予算要求を行う(平成20年度からマニュアルで実施し、21年度にシステム設計、22年度予算要求によりシステムを整備する)。これにより、調達に関するデータを必要に応じて迅速に取得できること、調達に関する各種分析が容易となること、同様の調達を検索し、まとめ買いを行うための検討の資を得ることが容易となること等、調達の透明性向上、効率化に大きな効果が期待できる。
 (イ)多様な事態や海外での自衛隊の活動への迅速な対応
 部隊運用上の要求への即応性及び柔軟性を確保するため、緊急の必要がある場合に地方調達とすることができる基準に、現行の災害派遣等の他、緊急の海外派遣、緊急の故障修理、緊急性の高い安全対策を平成20年度に追加する。
 10  装備品選定についての計画段階・調達段階の業務分担の在り方
 (1)現状の課題
 現状においては、装備品の選定・調達について、その種類、取得形態によって、防衛政策局と経理装備局との業務分担が異なっており、それに伴って、対外説明、価格低減、競争性拡大等に関する責任にも差異がある。また、装備品選定等について、意思決定の透明性をより高くする必要がある。他方で、装備品選定については、付加的な機能・性能の評価等といった細部事項に、相当の労力が費やされる面がある。
 (2)今後の取組
 1)個別の装備品選定・取得における責任を明確にし、その透明性を向上させるとの観点から、装備品選定手続の競争性、透明性及び効率性向上のための方策について具体的に検討する。検討に際しては、防衛政策局、経理装備局、各幕僚監部、技術研究本部、装備施設本部から人員を選出し、組織横断的な作業チームを設置する(作業チームは、関係者の連携強化を目的とするものであり、意思決定が必要な際には、作業結果を適宜大臣等の幹部や関係部局に報告し、判断を仰ぐ)。
 2)より透明で効率的な装備品選定手続を具体的に検討の上、機能・性能や選定手続についての検討が今後本格化する次期救難ヘリコプター(UH−X、海自・空自の救難ヘリコプター(UH−60J)の後継機)又はその他の適当な装備品について、防衛政策局が必要な機能・性能の検討、経理装備局が機種・取得方式の検討等を担当する形で、業務分担に関する試行を実施する。この際にも、組織横断的な作業チームを設置する。
 3)以上の措置等と並行して、航空機の機種選定について、参加者募集の公示等の制度化、選定理由の説明内容の拡充等の手続の見直しを図り、さらには競争入札方式の適用拡大を検討する。
 4)個別装備品についての試行等の状況、航空機の機種選定についての検討の状況等を踏まえて、爾後の計画段階・調達段階の業務分担の在り方及び透明性の高い、かつ合理的な装備品選定手続の在り方について検討する。

 IV 終わりに
 改革のための施策の推進については、施策の立案もさることながら、その着実な実施への道筋を明確にすることが極めて重要である。このため、総合取得改革推進プロジェクトチームにおける検討においては、迅速かつ具体的な施策の実施に特に留意してきたところであり、各施策の分野ごとに極力、実施のためのスケジュールについて具体的に記述している。
 今後、このようなスケジュールを踏まえ、予算措置を伴うものや、段階を追った施策の実施等が不可欠なものもあることから、主要結節毎に施策の進捗状況等について必要なレビューを行うこととする。このような取り組みにより、本プロジェクトチームの報告内容の実現を通じて、後戻りや足踏みのない総合取得改革の推進に努めていくこととしている。