防衛関係資料


防衛力の人的側面についての抜本的改革報告書
(要点抜粋)
(平成19年6月28日)[2007.7.5付朝雲]


 防衛省の「防衛力の人的側面の抜本的改革に関する検討会」は6月28日、計39項目からなる「人的側面の抜本的改革報告書」を発表したが、このうち新しい階級の創設や俸給表の見直し、募集や援護関連などポイントとなる項目は次の通り。

I はじめに
 今日の国際社会では、国家間の相互依存関係が拡大する一方で、宗教・民族等に起因する地域紛争や国際テロの発生、大量破壊兵器や弾道ミサイルの拡散等への対応が各国の差し迫った課題となってきている。
 このような新たな安全保障環境の下で、防衛省・自衛隊は、任務の多様化・国際化並びに装備の高度化に対応することが求められており、これまで以上に質の高い人材の確保・育成が必要となっている。
 また、自衛官については、その職務の特性に鑑み、若年定年制を維持することが基本的に必要であるが、他方、若年で退職した後、安心して生活をしていくための施策の充実も非常に重要な課題である。
 こうした状況の中で、少子化・高学歴化の進行に伴う募集環境の厳しい見通し、シニア世代のライフサイクルの変化等の社会情勢を鑑みれば、有用な隊員を確保するとともに、隊員が安んじて職務に専念できる環境を醸成し、人的基盤の更なる拡充を図るためには、防衛力の人的側面についての抜本的改革が避けては通れない状況となっている。
 このため、防衛省では、防衛力の人的側面について幅広く検討を行うため、平成18年9月7日、「防衛力の人的側面についての抜本的改革に関する検討会」(以下、「検討会」という。)を設置した。
 「検討会」においては、これまで5回にわたって、自衛官の募集から退職後におよぶ広範囲な事項について検討を進めてきた。その際、7名の部外有識者の方々にも特別委員としてご参加いただき、さまざまな視点に立った有益なご意見をいただいたところである。
 また、「検討会」の下部組織として、「全般検討グループ」等、6つの検討グループを設置し、主として実務的な観点からの検討を行ってきた。
 こうした検討を踏まえ、「検討会」では、今般、これまでの検討結果を、以下に示す39項目に再整理し、「募集に関する事項」、「在職期間中における事項」、「援護・退職後の措置に関する事項」及び「その他の事項」に分類した上で、「検討会」の報告書として取りまとめたものである。

II 検討事項
第1 主要な検討項目
 1 募集に関する事項
 (1)非任期制自衛官の採用数の拡大
 1)問題意識
 自衛隊の精強さを保つため、多くの任期制自衛官を採用しているが、今後、募集対象人口が減少する中で、年間約1万人の任期制自衛官を採用し、年間約5〜6千人が任期満了等により退職するといった大量採用、大量退職を前提とした採用制度の下では、良質の人材確保が困難となるおそれがある。
 非任期制自衛官の数を拡大し、任期制自衛官の数を抑制することは、自衛官の身分を中長期的に保証することでより高い質を持った自衛官を確保し、複雑化する装備品の操作・整備等に関する技能習得途中での人材の流出防止の観点から有益である。
 また、任期制自衛官に関しては、有為な人材を組織として育成し、これを活用していくという観点から、曹への昇任率を適切に確保することは重要である。
 2)今後の検討事項
 募集環境が厳しくなる中で、隊員の新規採用に係る負担を軽減するという観点からも士の階級における非任期制自衛官の割合を高めることは重要である。
 このため、平成18年度においては、非任期制自衛官の主たる採用ソースである「曹候補学生及び曹候補士」(注)の採用計画数を約2,000名大幅に拡大したところであり、平成19年度においても、対前年度180名増の6,470名とし、また、次年度以降も非任期制自衛官の採用数拡大の取り組みを継続する。
 仮に、平成20年度以降、非任期制自衛官の採用数を対前年度100名増加させた場合には、平成23年度には、隊員の新規採用人数を平成18年度の約16,300名から約1,500名程度少なくする効果があるものと見積もることができる。
 他方、非任期制自衛官の採用数拡大に当たっては、曹士全体の年齢構成、任期制自衛官の昇任率、人件費などに影響を与えることから、これらの影響に配慮しつつ、適切に非任期制自衛官の採用数の拡大を行う必要がある。
 また、隊員の新規採用人数の削減とともに任期制自衛官の人材育成・活用の観点から、任期制自衛官の曹への昇任率を適切に確保することも重要であり、このため、曹士定員の在り方、非任期制自衛官の士としての任用期間の延長等についても検討を行う。
 (注)非任期制自衛官の主たる採用ソースである「一般曹候補生」は、平成18年度においては、「一般曹候補学生及び曹候補士」として採用。
 (2)地方公共団体、ハローワーク等から、より一層の理解と協力を得るための方策(略)
 (3)防大学生の採用数の増加等(略)
 (4)貸費学生の拡充等、一般大学の学生の中から優秀な自衛官を確保する施策(略)
 2 在任期間中における事項
 (5)A・B幹部の拡大、C幹部の抑制
 1)問題意識
 陸・海・空自衛官の幹部の年齢構成は、各自衛隊により程度の差はあるが、40歳を超える高年齢層において、凸の部分ができている。
 より詳細に見ると、陸上自衛隊においては、初級幹部である尉官(1尉〜3尉)の約半数が40歳以上であり、特に、体力・気力が求められる普通科連隊でも尉官全体の4割を40歳以上が占めている部隊がある。また、海上自衛隊においても、陸上自衛隊と同様に年齢別の人員構成が高年齢層において凸型となっている。
 このような状況の主たる要因は、C幹部の存在によるところが大きい。
 また、年齢構成の問題に加えて、任務の多様化・国際化、装備の高度化に対応するためには、今後ますますA・B幹部を増加させることが必要となっている。
 (注)A幹部とは、防衛大学校を卒業し、又は一般大学等を卒業し、幹部候補生試験を経て入隊する者。B幹部とは、曹士として入隊した者が部内選抜の幹部候補生試験を経て幹部に昇任する者及び飛行幹部候補生として入隊した後に幹部に昇任する者。C幹部とは、准尉や曹長を経て概ね40歳代で幹部に昇任する者。
 2)今後の検討事項
 自衛官の年齢構成を改善していくためには、少なくも10年以上を要するが、上記問題意識を踏まえ、将来的には、A・B幹部を増加させ、C幹部を現行よりも大幅に抑制することを目指すこととし、平成20年度においては、A・B幹部のインプット数をそれぞれ対前年度で概ね30名、20名増加させ、C幹部を70名抑制する方向で検討する。
 (注)平成19年度におけるA・B・C幹部のインプット数は、それぞれ600名、880名、620名。
 また、幹部と曹士の俸給表を別建てとするためには、論理的にはC幹部のインプットはゼロになることが求められると考えられるが、それに伴いA・B幹部のインプット数は増加し、このことにより、A・B幹部の昇任スピードが現行よりも遅延するという影響が生じる。他方、早期退職制度を導入した場合には、適正な昇任スピードを確保することが可能となり、現行の昇任スピードを確保する場合を試算すれば、例えば、A幹部及びB幹部を、現行よりも、それぞれ140名、110名程度増加させたとしても、年間約400名が早期退職する場合には、現行の昇任スピードが確保できることとなる。
 これらの点を踏まえ、今後、A・B幹部の拡大、C幹部の抑制に係る検討に当たっては、幹部と曹士の俸給表別建てや早期退職制度についての検討と連携をとりつつ行う。
 (6)早期退職優遇制度等、40代での退職のための新たな制度の創設
 1)問題意識
 ア 自衛官は、精強性維持の観点から若年定年制及び任期制を採っているが、年齢構成を示すピラミッドは、米英軍と比較して高年齢層において凸型の部分ができているとの特徴を有している。これは、米英軍においては、在職期間を制限した退職制度や早期に支給される年金の存在等により、早期に退職する者が相当数存在すると考えられるのに対し、自衛隊においてはそのような制度等はなく、基本的に定年まで勤務する傾向にあることに加え、高年齢のC幹部が相当数存在することが原因であると考えられる。
 イ 自衛隊のような実力組織においては組織をより精強な状態に維持することが必要であることや、近年、国際平和協力活動などで実際に活動する機会が増加していることを踏まえれば、現状の年齢構成は望ましくない。
 ウ さらに、今後AB幹部を拡大し、C幹部を抑制することとしており、A幹部を140名、B幹部を110名増加させつつ、現行の昇任スピードを確保する場合の試算をすれば、年間約400名の中途退職が必要になってくる。
 エ また、若年定年(50代)で退職するよりも40代の方が有効求人倍率は高いことや再就職するのであれば50代よりも若い年代の方が新たな職場への適応力が高いと考えられることも考慮すべきである。
 オ 以上のような状況を踏まえ、自衛隊の年齢構成是正等の観点から、40代での退職のための新たな中途退職制度について検討する必要がある。
 2)新たな制度の選択肢
 中途退職制度としては、「在職期間制限型の退職制度」「早期退職優遇制度」の2つが考えられる。これらの制度概要及び論点は以下の通りである。
 ア 在職期間制限型の退職制度
 (ア)制度の概要
 在職期間制限型の退職制度は、入隊からの期間又はある階級に昇任してからの期間に年数制限を設定し、それを超える者を退職させることにより、昇任が相対的に遅延している者を早期に退職させて年齢構成を適正化するという制度であり、以下の2タイプがある。
 a 米軍型(入隊してからの在職年数で制限)
 米軍では、大佐30年、中佐26年、少佐20年との在職期間の制限がある。
 例えば、1佐33年の制限年数を設定すると、A幹部として大卒23歳で入隊することを想定した場合、概ね現行定年制(56歳)と同様の新陳代謝効果となることから、基本的には32年以下の制限年数を設定することが必要となる。
 b 英軍型(特定階級に昇任してからの在職年数で制限)
 英軍では、少尉任官後佐官試験に合格しない場合16年との在職期間の制限がある。
 例えば、3佐になった者が18年かかって2佐に昇任できない場合、自動的に退職するという制限年数を設定すると、A幹部のごく一部の昇任遅延者のみ該当することになるが、これを15年や10年に設定すると該当者が大幅に増加することとなる。
 (イ)論点
 かかる制度を導入する場合、以下のような問題点を整理していくことが必要と考えられ、今後、引き続き本制度導入の可否につき検討することとする。
 米国や英国においては早期に軍人に年金が支給されることや軍人の再就職環境が良好であることなど、軍人の人事・給与面に係る環境が我が国とは異なる点を考慮する必要がある。
 a 制度的論点
 国家公務員の中で自衛官のみ相対的に昇任が遅延している者を早期に退職させる必要性、現行の階級別定年制との関係、制限年数設定の考え方等について整理することが必要である。
 b 人材確保・人件費に係る論点
 制限年数を短く設定すれば、それだけ対象者が増加するため、年齢構成の適正化には寄与するが、一方で退職者の増加に対応した新規隊員の採用が可能か、退職者の増加による一時的な人件費増加(退職手当の前倒し等)に対応できるかについて精査することが必要である。
 c 退職者の処遇等
 退職者の処遇(再就職支援の在り方、退職手当その他の経済的支給の在り方等)や、身分保障を弱くすることの当否、それにより募集へ悪影響が生じることを踏まえることが必要である。
 イ 早期退職優遇制度
 (ア)制度の概要
 早期退職優遇制度は、退職手当の割増等のインセンティブを付与することにより、本人の同意に基づき早期退職を促進する制度であり、民間企業や地方公共団体で導入の例がある。
 なお、自衛官に対するアンケート結果によれば、早期退職希望者が一定の規模(優遇措置がある場合の中途退職希望者5・2%)存在することを踏まえれば、本制度は退職する本人にとって多様なライフプランを選択しうるものとしてニーズがあると言える。また、早期退職させることにより、中長期的には人件費は抑制されることも考慮すべきことである。
 (イ)論点
 かかる制度を検討するに際しては、以下のような問題点を整理することが必要になる。
 a 必要な人材の流出防止
 強制型の退職制度とは異なり、本人の希望又は同意を前提とするため、組織として必要な人材の流出防止が必要であるが、そのためには早期退職を希望する者の中から早期退職優遇措置を適用させるべき者を指定していくなどの方法がある。
 b 対象者の年代
 この検討の趣旨に鑑みれば、主として40代の自衛官を対象とし、必要に応じ、50代前半の者も加える。
 c 対象者の規模
 本人の希望又は同意を前提としているので、予め人数を確定させることは困難であるため、上限を定め、その中で、各自衛隊の事情を勘案した上で運用する。
 d 優遇措置の内容
 現行の国家公務員退職手当法の早期退職割増(定年前1年につき2%、最大10年で20%の割増)を踏まえつつ、現行制度よりも優遇する場合には、他の事例も参考にすれば、例えば最大30%の割増といった案が考えられるが、その優遇の必要性、率の設定の考え方等について整理する必要がある。
 さらに、現在、若年定年で退職する自衛官に対しては若年定年退職者給付金制度があるところ、早期退職優遇制度に基づき退職する自衛官に対して、このような経済的給付をとることが可能か否か、合理性があるか否かについて検討する。
 また、現行でも若年定年で退職した自衛官や任期満了により退職した自衛官に対する就職援護は行っているものの、40代での退職者を想定した場合、再就職のための教育訓練など、それらと同様の支援で良いか否か、再就職準備のため休暇制度などをどうするかなど民間企業等の例も踏まえながら、検討する必要がある。
 3)今後の方向性
 今後、「在職期間制限型の退職制度」及び「早期退職優遇制度」について、それぞれのメリット・デメリットを勘案しながら、それらのいずれかを導入するか、併用するか等について検討を行っていくこととする。
 かかる検討に当たっては、AB幹部の拡大・C幹部の抑制、俸給表の別建て等の関連施策に係る検討と連携をとりつつ行う。
 (7)再任用ポストの拡大や新たな再任用制度の創設等による再任用の積極的な活用、職域別定年延長の見直し等(略)
 (8)幹部と曹士自衛官の別建て俸給表の構築等
 1)別建て俸給表の趣旨
 ゲリラ・特殊部隊対処、大規模災害派遣における小部隊での行動の増加、服務面の規律維持の徹底の観点から、曹クラスにおけるリーダーの重要性が増大している。
 本来、幹部とは異なる役割を有する准曹に対し、自衛隊の任務の多様化に当たり、求められる役割の重要性を自覚させ、勤務意欲を向上させていくためには、曹士自衛官の目標となる階級を新設することに加え、幹部と准曹士を分けた別建て俸給表とし、昇任インセンティブが働きやすい俸給表を構築することが必要である。
 2)現行の自衛官俸給表の問題点
 現行の自衛官俸給表には、解決が必要な以下の問題点がある。
 ア 本来、幹部と准曹の役割は異なり、別の任用体系となっているにもかかわらず、C幹部の存在により、准曹から幹部に昇任する前提で一つの俸給表により管理しているため、俸給表上、幹部と准曹の役割の相違等が明確化されていない。
 イ 現行の自衛官俸給表は職務内容の比較的類似する行政職俸給表(一)と公安職俸給表(一)を基準とし、俸給表の水準を決定している。
 自衛官の階級が将から3士までの17区分に対し、行政職俸給表(一)の職務の級では10区分、公安職俸給表(一)の職務の級では11区分と異なっており、一般職の俸給表の一つの職務の級に対応する複数の階級が混在し、特に公安職俸給表(一)3級には2尉から2曹の6階級が対応する構造である。
 さらに、上記アで述べた理由により、准曹の俸給水準を3尉より高い水準に設定することができない。
 これらの要因により、昇任しても僅かな俸給額の増加に留まり、上位階級への昇任のインセンティブが働きにくい状況にある。
 ウ 将補及び1佐は、編成上それぞれ一つの階級として捉えているにもかかわらず、自衛官俸給表においては将補(一)(二)・1佐(一)(二)(三)といった職務給の考え方による区分が設けられており、その結果、階級内に階級があるような取扱いとなっている。
 3)問題解決の具体策
 上記問題点を解決するために、以下の具体策が必要である。
 ア 幹部と准曹を別建てとした俸給表を構築する。
 イ 各階級の職階差に見合う給与格差のある俸給表とする。
 ウ 上級曹長(仮称)等の高位号俸の者には、上位階級の最高号俸の者を上回る額の俸給を支給する。
 エ 上級曹長等の特定の者には、特例的な俸給月額を支給する。
 オ 将補(一)(二)及び1佐(一)(二)(三)の区分を廃止し、階級俸の考え方に統一する。
 4)具体化に当たっての留意点
 別建て俸給表の具体化に当たって、上記問題点の一因と考えられる一般職の俸給表を基準としている点については、一般職の俸給表に立脚しないとの観点で検討するとともに、本検討会で検討されている階級新設、A・B幹部の拡大など他の関連施策と連携しつつ検討を行っていく必要がある。具体化に当たっての留意点は以下のとおりである。
 ア 一般職の俸給表を基準としないこととするメリットとして、一般的には、
 (ア)自衛官の特殊性を反映した独自のメリハリのある俸給表の構築が可能
 (イ)一般職の職務段階区分によらないことにより、現行の将補・1佐のような階級内の職務給区分を解消することも可能
 (ウ)一般職公務員給与についての勧告によることなく主体的な施策が可能となることが挙げられるが、その場合の具体的な俸給表の決定方法については、更に検討を進める必要がある。
 イ 具体的な俸給水準の設定に当たっては、各階級の職階差に見合う給与格差を設けることに配意しつつ、各階級の職務・職責の整理を行った上でこれに相応しい処遇とする。
 ウ 新たな「ワン・スター・ジェネラル」と「上級曹長(仮称)」の階級創設については、その職務・職責を適切に評価した俸給水準を設定するための検討を進めていく。
 特に「上級曹長」については、別建て俸給表における上位階級の最高号俸を上回る額の俸給水準の検討と併せ、更に検討を深化させる。
 エ 任務の多様化・国際化、装備の高度化に対応するためA・B幹部の拡大とC幹部の抑制を検討しているが、これと連携しつつ、その人事管理に見合った適切な俸給表への反映を行うことが必要となる。
 オ 将補(一)(二)・1佐(一)(二)(三)の区分については、将補と1佐の職責の幅が広い現状の考え方を整理し、これらを廃止した場合の影響を踏まえつつ、階級俸の考え方に統一することの検討を深化させる。
 上記の点に留意することに加え、一般職の俸給を基準としない場合には、自衛官俸給表の合理性等につき、国民の理解・納得を得る新たな手段が必要となることや独自調査の人員・経費に係る予算等の必要性などを踏まえ、更に具体化への検討を進める。
 5)検討スケジュール
 各階級の職階差に見合う給与格差のある別建て俸給表への移行時期については、俸給表に関連する各種検討と連携するとともに、平成22年度まで逐次実施が図られている給与構造改革の進捗状況も念頭に置きつつ具体化するものとする。
 また、平成20年度より、人事教育局に新たな自衛官俸給表の構築に係る検討を本格化させるための組織を立ち上げる等の方向で検討する。
 (9) 自衛官の諸手当の再整理(略)
 (10)新たな階級の創設
 1)問題意識
 新たな安全保障環境の下、防衛省・自衛隊には、任務の多様化への対応や更なる高い即応性等が求められており、これらに見合った適正な階級構成とすることが必要である。
 2)検討の方向性
 ア ワン・スタ−・ジェネラルの創設
 国際平和協力活動及び防衛交流の拡大に伴い、諸外国と協同して任務を遂行する機会が増加しているが、自衛隊には「ワン・スタ−・ジェネラル」がないように、必ずしも諸外国の軍隊と階級上の均衡がとれていない面がある。
 ワン・スタ−・ジェネラルの創設検討に当たっては、まず諸外国軍隊における将官階級の調査研究を詳細に実施するとともに、我が国自衛隊における将官及び1佐の職務・職責を整理する。その上で、我が国の編制上の特殊性等を考慮しつつ、今後付与すべき職務・職責、階級呼称等を検討し、ワン・スター・ジェネラルを創設する必要がある。
 イ 上級曹長の創設等
 ゲリラ・特殊部隊対処、大規模災害派遣等において、小部隊における行動の必要性が増し、また、服務面における規律維持のより一層の徹底という観点からも、曹クラスのリーダーの重要性が増大していることから、曹士自衛官の更なる活性化を図るための明確な目標となり得る階級、「上級曹長(仮称)」を創設する必要がある。
 上級曹長の創設に当たっては、以下の2つの論点を整理することが必要となる。
 (ア)准尉の位置付けの整理
 現行の曹士における目標階級の一つとなっている准尉は、「高い専門性を有する技術職配置」と「准曹士最高位としての総括的配置」という二面性を有しており、その性格が不明確なことから、上級曹長創設の検討に併せてその位置付けを整理することが必要となる。
 具体的には、海上自衛隊における准尉は全て専門的技術職であり、幹部を補佐する準幹部として配置されているが、陸上自衛隊にあっては専門的技術職の配置にある者は約1/3、航空自衛隊にあっては約4割であり、これら三自衛隊の実態を勘案した上で、その整理を行う必要がある。
 (イ)上級曹長の職務・職責の整理
 上級曹長の創設検討に当たっては、諸外国軍隊における准・下士官階級の調査研究を詳細に実施するとともに、各自衛隊における曹士の活性化施策である陸自上級曹長制度(検証中)、海自先任伍長制度及び空自准曹士先任制度(試行中)の職務・職責を詳細に分析した上で、上級曹長の職務・職責を整理することが必要となる。
 ウ 階級新設の時期等
 新設する階級については、今後付与すべき職務・職責を適切に評価し、これに見合う処遇を確保した俸給水準を設定する必要があることから、その創設は現在検討を進めている「幹部と曹士自衛官の別建て俸給表」の導入に併せて行う。
 また、新設階級に係る定年年齢、相応しい叙位・叙勲等についても併せて検討を進める。
 3)当面の措置
 階級新設等の検討を本格化させるため、平成20年度より、人事教育局に当該検討を専属的に担う組織を立ち上げるとともに、諸外国軍隊の階級制度等の調査を行う方向で検討する。
 (11)女性自衛官に関する施策(略)
 3 援護・退職後の措置に関する事項
 (12)受験対策講座の拡充、他省庁への協力要請等、退職後に他の公的部門を希望する任期制自衛官に対する支援策(略)
 (13)自衛官のライフサイクルに対応したライフプラン支援、退職後における医療面・生活面の支援の拡充
 1)問題意識
 ア ライフプラン支援
若年定年制により未だ出費のかさむ時期に退職する自衛官は早い段階から積極的にライフプランの設計を行うことが必要である。
 イ 健康面・生活面の支援
 (ア)自衛官は、若年定年制により50歳代後半から収入の水準が低下する。
 (イ)医療面では、現役にとっては、
 a 防衛省独自の自衛隊病院があるほか各駐屯地・基地には医務室が設けられているなど健康管理における環境が充実している。
 b また、日常の訓練により一般以上に体力が維持されるため、医療費は一般より20%程度少ない状況にある。(平成16年度実績)
 しかしながら、退職後は、生活習慣病等の増加による医療費の個人負担の増大が推測され、医療面での不安をかかえている状況にある。
 (ウ)生活面においては、高齢化社会に伴う介護などの問題やローン返済などの各種経済的問題等についての不安も推測される中、現役時のような充実した生活支援サービスが受けられなくなる状況にある。
 2)問題解決のための検討課題
 ア ライフプラン支援
 (ア)ファイナンシャルプランナー等によるライフプランの講義について充実を図る。
 (イ)国または共済組合等が既存のホームページの活用等により、若年定年制の下で退職する自衛官に対応したライフプランシミュレーションソフトを提供することについて検討する。
 (ウ)個別のライフプランの設計について、必要に応じて個人面談を行うための体制整備を検討する。
 イ 健康面・生活面の支援
 (ア)若年定年制の下で退職し再就職すること、退職後に何割かが予備自衛官等になることを見据え、現役時代からの健康増進策として、駐屯地等の健康増進器材の整備、食生活指導の充実について検討する。
 (イ)退職後の自衛官について、医療面・生活面の不安を抱かずに暮らすための施策を検討する。
 (ウ)退職後でも利用できる生活支援サービスの充実や退職後も少ない負担で保障をうけることができる団体保険の提供について検討する。
 3)今後の措置
 ア ライフプラン支援
 民間企業のノウハウを活用した上で、以下のように自衛官のライフプラン設計について支援を行う。
 (ア)ライフプラン作成の動機付けを図るため、年代に応じたテーマにそい民間講師等を活用したライフプランセミナーを年に数回開催することや教育課程の中にライフプランの講義を組み込むことを検討する。
 (イ)ライフプランの自衛官向けシミュレーションソフトを共済組合のホームページに掲載し、セミナー等で得た基礎知識を持って、自衛官個人ごとにシミュレーションを作成することを促進する。
 (ウ)シミュレーションにより得られた結果等について、希望する自衛官が個別相談会等でファイナンシャルプランナーによる個別相談を受けられるようにする等、相談体制の充実を図る。
 イ 健康面・生活面の支援
 (ア)健康増進器材については、整備のより一層の促進を図るよう努める。
また、食生活指導については、各駐屯地等に配置されている
 栄養士(防衛省職員)の活用も含め、自衛官等を対象とした食生活に関するセミナー等の開催を検討する。なお、現在、共済組合が中心となり「高齢者の医療の確保に関する法律」に基づく特定健康診断・特定保健指導(平成20年度より施行)の具体的内容を検討中であり、この内容を踏まえて実施するものとする。
 (イ)(ア)を実施することにより医療面の不安の軽減を図ることとするが、大部分が退職自衛官である予備自衛官等については、平素から健康管理に国が関与することにより、確実に任務につくことができるよう、例えば、健康診断を実施する等の自衛隊病院等の活用の可能性をニーズに応じて検討していく。
 (ウ)退職後に利用可能な生活支援サービスとして、退職者用の各種相談等の福利厚生サービスを導入することを検討するとともに、団体生命保険の退職者継続制度について、ニーズに応じて検討していく。
 以上のようなサービスの提供主体については、次のようなものが考えられる。
 ・総合的なサービスを行う会社等を活用
 ・仲介窓口のようなコンサルティング会社等を活用
 ・個別の会社等を直接活用
 ・国、又は共済組合の活用
 (14)退職自衛官に関する業務を体系的に実施する組織・ネットワークの構築
 1)問題解決のための検討課題
 ア 現在、退職自衛官に対する若年定年退職者給付金(一時金として退職の翌月以降の4月又は10月と退職の翌々年の8月の2回に分けて支給)の支給に関する業務については、国が自ら実施している。
 また、退職自衛官に関連する業務として、退職予定自衛官に対する無料職業紹介等については、(財)自衛隊援護協会(本部と7支部をもち、昭和62年に設立された公益法人)が厚生労働大臣の許可を得て実施している。
 なお、自衛隊退職者等の親睦と相互扶助を図り、その福祉を増進することを目的とする(社)隊友会(本部及び各都道府県に51個の県隊友会をもち、昭和35年に設立された公益法人)が存在する。
 イ 今後の退職自衛官に対する施策の充実のためには、退職後の自衛官に関する情報の一元管理等、退職自衛官に関する業務を体系的に実施する組織及びネットワークが必要であると考えられ、防衛省内における必要な体制の整備、業務の一部民間委託、新たな組織の設立等さまざまな可能性について検討する。
 その際、膨大な個人情報の取扱いには細心の注意が必要である点に留意する。
 2)今後の措置
 退職自衛官に関連する業務を体系的に実施する組織にいかなる業務を実施させることが可能か引き続き調査するとともに、どのような組織体で行うことが適当か引き続き検討していく。
 一案として、
 ・国において新たな体制を整備する場合
 ・国以外の公的性格をもった新たな組織を設立する場合
 ・民間業者に委託する場合
等、様々な可能性が考えられるが、その際、公務員制度改革の流れとの整合性について留意する必要がある。
 当面の対応としては、これらについての検討を本格化するため人事教育局に新たな体制を構築する。
 (15)市区町村レベルでの危機管理ポストの求人開拓の強化(略)
 (16)年金保険商品の改善等、退職と年金支給開始との間を所得面でつなぐための方策(略)
 4 その他の事項
 (17)予備自衛官制度の充実
 1)問題意識
 自衛隊が事態の推移に応じ、必要な自衛官の所要を早急に満たさなければならない。この所要を急速かつ計画的に確保するため、我が国では即応予備自衛官、予備自衛官及び予備自衛官補の3つの制度を設けているが、その人員規模は、諸外国と比べ必ずしも多いとは言えない。
 防衛計画の大綱では、大量破壊兵器や弾道ミサイルの拡散の進展、国際テロ組織の活動などにより大きく変化した安全保障環境を踏まえ、新たな脅威や多様な事態への実効的な対応を防衛力の第一の役割として位置づけており、また、本年1月には国際平和協力活動が自衛隊の本来任務とされたことを踏まえ、自衛隊は国際平和協力活動に主体的・積極的に取り組むことが求められている。
 このように自衛隊の任務・権限が拡大している一方、それに対処する要員は、政府全体で実施されている総人件費改革に基づき現在自衛官が行っている一部業務を民間委託化するなど、より自衛官の人的規模を絞り込む状況にある。
 また、今後、募集対象人口の減少により、任期制士の人員確保の環境が厳しくなることに伴い、即応予備自衛官や予備自衛官の所要数確保にも困難が予想されることから、いざという時に常備自衛官を補完する役割を有する即応予備自衛官や予備自衛官を将来にわたり所要数確保し、また有効に活用する施策を講じることがより重要となっている。
 2)今後の検討課題
 ア 予備自衛官補制度の海上自衛隊及び航空自衛隊への導入
 予備自衛官補制度は、防衛基盤の育成・拡大を図り、予備自衛官を安定的に確保し、民間の優れた専門技術を有効に活用することを目的とし、自衛官未経験者の志願に基づき採用されている。
 現在、この制度は陸上自衛隊でのみ導入されているが、特に、医療、語学、情報通信など特殊技能を有する者については、緊急の際に部隊で即座に人材を養成できるものではなく、部隊のニーズは高いことから、海上自衛隊及び航空自衛隊にも予備自衛官補制度を導入するための検討を行う。
 イ 登録のみの予備自衛官制度の創設
 即応予備自衛官、予備自衛官、予備自衛官補は、平素はそれぞれの職業などに就いている。しかし、必要な練度を維持するため、毎年仕事のスケジュールを調整し、休暇などを利用して訓練招集や教育訓練招集に応じている。また、平素これらの隊員を雇用している企業にもこれら隊員の不在時の業務調整や休暇取得の配慮などの協力を頂いている。
 このような制度の下では、防衛招集などに応じる意思はあるものの、会社の都合等で訓練招集に応じられない者は、即応予備自衛官、予備自衛官、予備自衛官補になれないが、このような者を有事において速やかに募集できる人的基盤として確保する施策としては、訓練招集義務や教育訓練招集義務を課さず、登録のみ行う制度が考えられる。
 今後は、当該制度において募集された者の位置づけ、現行の予備自衛官等との関係、登録のみで訓練等に参加しない者の処遇や、自衛官未経験者の取扱い等の観点から、検討を進める。
 ウ 予備自衛官等の応招義務の付加
 現行の即応予備自衛官は、防衛招集、国民保護招集、治安招集、災害等招集、訓練招集について応招義務があるが、予備自衛官については、防衛招集、国民保護招集、災害招集及び訓練招集について応招義務があるものの治安招集については応招義務がない。
 しかしながら、自衛隊の即応性が強く求められる中で、治安招集が必要な事態になった際に、予備自衛官が、駐屯地警備や後方支援を行い、常備自衛官及び即応予備自衛官を補完する役割を担うことができれば、これらの事態への即応性の向上が見込まれる。
 また、国際平和協力活動等の本来任務化により、今後、医官や通訳等の要員の不足や国際活動の規模及び頻度の拡大による隊員への負担の増大が見込まれるが、予備自衛官等には、これらの不足する技能を保有する者がいる。
 上記を踏まえ、防衛構想全体の中で、限られた予備自衛官等をどのように活用するか、予備自衛官等の応招義務にどのような任務を付加するのかについて、今後とも検討を継続する。
 エ 業務の部外委託における予備自衛官の活用
 業務の民間委託は、いざというときに委託したサービスが提供される保証がなく、部隊の即応性に影響を及ぼす可能性がある。例えば、車両整備や支援船業務は、部隊を即時に運用する上で不可欠な業務であり、このような業務を予備自衛官が行うのであれば、緊急時における業務の確実性や即応性が向上するとともに、常備自衛官の負担軽減が図られるといった効果が考えられる。
 予備自衛官を活用できる業務形態としては、企業側から職員又は派遣職員が部隊等に派遣されて行う業務等が主たる対象となると考えられるが、その形態としては、企業側の職員又は派遣職員に予備自衛官になってもらう場合と、予備自衛官を擁する企業にのみ契約を委託する場合が考えられる。前者においては、派遣される本人の同意が必要となる点、後者においては、そのような委託先の限定が関係法令上可能かといった問題点が考えられる。今後、どのような応招義務を付加するのかといった点を含め、どのような委託形態が適切なのかについて引き続き検討する。
 オ 予備自衛官の階級上限の引き上げ
 予備自衛官の階級は、制度上の制限はないが、現行では陸上自衛隊においては2佐を上限とし、海上・航空自衛隊においては1尉を上限として運用されている。武力攻撃事態における国民保護、捕虜等取扱等有事における自衛隊の活動が増加することに伴い、予備自衛官に求められる階級もより幅が広がる可能性もあることから、予備自衛官の階級上限を引き上げることについて、外国の状況の調査などを通じて、具体的な措置を検討する。
第2 その他の検討項目1(略)
第2 その他の検討項目2(略)