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防衛関係資料 |
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防衛省移行記念式典 |
| サンフランシスコ平和条約が発効し、わが国が主権を回復してから、55年の歳月が流れようとしています。本日、まさにこのとき、国防という国家主権と不可分な任務を担う組織たる防衛省を発足させることができたことを、私は時の内閣総理大臣として、誇りとするものであります。この歴史的な日に際し、全国の防衛省・自衛隊諸官に対し、所信の一端を申し述べます。 わが国が先の大戦の災禍から復興に向け、力強く歩み始めた昭和29年、保安庁を改組、防衛庁・自衛隊は、産声を上げました。旧軍とは全く異なる思想に立脚する民主国家の国防組織。それはまさにゼロからの出発でした。国防は、言うまでもなく、国民の生命、身体、財産を守る、国家の最も基本的な権能であります。しかしながら、防衛庁・自衛隊を巡る内外の諸情勢から、その後、長らく、「省」としてではなく、総理府の外局として位置づけられることとなったのです。 冷戦期、厳しい東西の対立構造は、国内政治にも少なからず影響を及ぼしました。一部には防衛庁・自衛隊の存立自体にすら異議申し立てのある時代。諸官の先輩たちは、多くの国民からの静かなる支持と信頼を胸に、国の守りを万全なものとすべく、黙々と、時には歯を食いしばり、時には涙し、日々の訓練に励み、また、災害派遣や民生協力に当たってこられました。 冷戦終結とともに、わが国を取り巻く安全保障環境は一変しました。われわれが直面する危機を正面から見据え、防衛力の役割を根本的に考え直す必要が生じたのです。 平成2年の湾岸危機以後、自衛隊には、PKOをはじめとするさまざまな海外任務が付与されました。こうした海外での活動、また、阪神・淡路大震災をはじめ国内で頻発した大規模自然災害、さらに、能登半島沖不審船事案における海上警備行動などの現場において、国民の生命、身体、そして、財産を守るため、諸官が一身を顧みず、懸命に汗を流す姿に、大多数の国民の共感と信頼が集まりました。 今般の省移行法は、衆参両院で9割以上の国会議員の賛成により成立しました。これは、すべからく隊員諸官や諸先輩の長期間にわたる国防という高貴な使命に捧げた努力のたまものであります。 「危険を顧みず、身をもって責務を完遂し、国民の負託にこたえること」。これこそが防衛省職員・自衛隊員の責務であります。しかしながら、発足以来、実に1700人を超える自衛隊員が職に殉じ、尊い命を失ったという事実をわれわれは決して忘れてはなりません。国家・国民のため、崇高な使命に殉じた御霊に対し、衷心より哀悼の誠を捧げます。 今、わが国は、まさに「新時代の黎明期」にあると言っても過言ではありません。 私は、これまで、「戦後レジームからの脱却」ということを繰り返し述べてきました。「美しい国、日本」を造っていくためには、「戦後体制は普遍不易」とのドグマから決別し、21世紀にふさわしい日本の姿、そして新たな理想を追求し、形にしていくことこそが求められています。 若き日のド・ゴールは、その著書「剣の刃」の中で、「難局に立ち向かう精神力の人は自分だけを頼みとする。このように自らの方針にのっとり、自己の責任において事を断行する態度は行動に強烈な刻印を押す。…それは決して、…忠告を踏みにじらんとするものではない。彼には、やむにやまれぬ気概と、断行せずにはおれない心の疼きがあるのである」と述べています。私も、これと全く同じ気構えで、「美しい国造り」に全力を挙げて取り組んでまいります。集団的自衛権の問題についても、国民の安全を第一義とし、いかなる場合が、憲法で禁止されている集団的自衛権の行使に該当するのか、個別具体的な事例に即して、清々と研究を進めてまいります。 今回の法改正により、防衛庁を、省に昇格させ、国防と安全保障の企画立案を担う政策官庁として位置付け、さらには、国防と国際社会の平和に取り組むわが国の姿勢を明確にすることができました。これは、とりもなおさず、戦後レジームから脱却し、新たな国造りを行うための基礎、大きな第一歩となるものであります。 一方、防衛省移行法の成立は、わが国の民主主義国家としての成熟、そしてシビリアン・コントロールへの自信、さらには国際社会の中で平和と安定のために責任ある役割を担っていくという国家・国民の意志を内外に示すこととなりました。 先日、フィリピンのアロヨ大統領と首脳会談を行った際、同大統領から「防衛庁の防衛省への昇格を歓迎する」との言葉をいただきました。これは、東アジア地域の安全保障において、今後、わが国がより積極的な役割を果たしていくことを希求するとともに、わが国のシビリアン・コントロールの成熟に対する絶大なる信頼を表明したものと言えると思います。 今、この瞬間、瞬間にも、イラクやゴラン高原の地で、インド洋の洋上で、あるいは隔絶の離島で、さらには自衛隊の基地や駐屯地で、厳しい現場の任務に従事している隊員たちがいます。 私は、彼ら、一人ひとりの姿を、確実に脳裏に像として結ぶことができます。私は、最高指揮官として、常に諸官とともにあります。同時に、諸官の活動を誇りとし、今後ますますの活躍に大いに期待するものであります。 今後も、わが国が平和と繁栄を享受できるよう、高い規律と士気を保持するとともに、この「美しい国」と国民の未来のために、世界の平和と安定という崇高な使命のために、さらに献身的な貢献をしていただくよう諸官に切望し、私の訓示といたします。 |