防衛関係資料


 

防衛省移行記念式典
防衛大臣訓示

  ここに多数のご来賓の方々をお迎えし、防衛省移行記念式典を執り行うにあたり、一言申し述べます。
 本日より防衛庁は「防衛省」になります。先ほど、防衛大臣を拝命し、今後私は、国の防衛に関する主任の大臣として、最高指揮官である安倍内閣総理大臣のもとに、自衛隊を統括していくことになります。これから、防衛省・自衛隊は、未来に向けた確かな安全保障のため、新しい歴史を切り拓いていきます。
 思い返せば、前回、防衛庁長官の職にあった平成9年、橋本総理の下の行革会議において、防衛庁の省移行が議論されましたが、当時の状況では、省に移行すべき、との結論は得られず、実現に至りませんでした。それが、10年を経た今、国会では、衆議院・参議院ともに、実に9割以上の賛成を得て、省の発足をみたことは誠に感慨深いものがあります。
 これは、隊員諸君らの長年にわたる地道な努力が実を結び、防衛省・自衛隊が国民各層に広く受け入れられるに至ったあかしであると考えています。近年、有事法制をはじめ、テロ対策特措法、イラク人道復興支援特措法、ミサイル防衛と統合運用に係る自衛隊法改正、そして省移行関連法と、毎年のように防衛関係の重要な法案が成立してきました。また、阪神・淡路大震災以降、ますます増加している国内での災害派遣、既に3万人以上の隊員が従事し、本日より自衛隊の本来任務として位置付けられる世界各国での国際平和のための活動など、自衛隊の活動は飛躍的に増えております。
 実際に任務に就いて現場で汗を流した諸君、仲間を送り出し黙々と訓練を行い支援にまわった諸君、また、米軍再編をはじめ地元調整などを行ってきた防衛施設庁職員をはじめとする諸君、さらに、法案の作成や政府決定、その後の国会での審議への対応など、わが国の安全保障政策の基本を成す業務に携わってきた諸君らの努力があったからこその、防衛省職員・自衛隊員、われわれ全員の努力が認められた上での省移行であると考えます。
 また、省移行は、多くの方々のご支援があって、初めて成し遂げられたものであります。本日もお越しいただいておりますが、政治の場でわが国の安全保障に携わられ、国民の理解と支持を得るべくさまざまな場でご努力してくださいました国会議員の方々、隊友会、父兄会、郷友連盟をはじめ暖かくご支援してくださった関係団体や地方自治体・地方議会の方々など、多くの皆さまから応援していただき、幅広い支持を受けて防衛省が発足できたことを忘れてはなりません。
 かつて、防衛庁・自衛隊は、昭和25年の警察予備隊、昭和27年の保安庁・保安隊を経て、昭和29年7月、江東区越中島の元水産講習所に本庁舎を置き、総数約16万5000人、装備品のほとんどは米国からの供与又は貸与という状況で発足しました。他省庁と異なり、過去と断絶した中での厳しい出発でした。
 当時、防衛庁・自衛隊に対して、国民の理解が十分に得られているとは言い難く、黎明期の隊員各位および関係者にとっては大変困難な船出であったことと思います。
 発足当初、自衛隊は侵略に対する抑止力として、存在すること自体に意義を認められ、防衛庁は専らその自衛隊を管理する組織と認識されていました。しかし、現在に至る52年余の間に、国際安全保障環境は大きく変化し、自衛隊の任務・役割もまた、先に述べたとおり、大きく変化してきました。
 今回の防衛庁の省移行は、現役・先輩隊員諸君が「国の防衛」という国として最も根源的な任務を立派に果たしてきたことに対する国民の信頼・評価と、今後の活動に対する期待の現れであります。私は、黎明期からの極めて厳しい状況の中で活躍された方々をはじめとする諸先輩方を誇りに思います。そして、私は、現役隊員諸君がかかる期待に応えていくであろうことを確信しています。その上で、隊員諸君に対し、2点述べたいと思います。
 まず第1は、省移行に伴い、真の政策官庁を目指し変えていかなければならないことであります。
 北朝鮮による弾道ミサイル発射事案や核実験実施の発表など、わが国周辺の安全保障環境は引き続き厳しいものがあります。また、平和と安定のための国際社会の取り組みに、わが国としても、より積極的に対応していく必要があります。米軍再編に関する合意の実現という極めて難しい課題にも取り組んでいかねばなりません。
 このような状況の中で、国民の期待と信頼に応えていくためには、防衛省は、名実ともに政策官庁として脱皮していく必要があります。
 防衛省は、国家の未来を戦略的に考え、わが国の安全保障のみならず、国際社会からの期待に十分応え得るような政策機能の強化を図る必要があります。このため、昨年実施した組織改編に加え、来年度も、本省の内部部局や地方組織など全般にわたる組織改編を行い、政策機能の充実・強化と地域との接点の拡充を図ってまいります。
 組織のみではなく、人材の育成に向けても、幅広い努力が必要であり、本日、事務次官に命じて教育の充実をしていくための通達を発出しました。隊員としての資質をさらに向上させ、他の政府施策との連携を図り、国際性を持って、あるいは地域住民との十分な対話を通じて、隊員個々が民主主義国家における「国の防衛」の責務を十分自覚し、創造性を発揮していくことが必要であります。
 一方で、組織の規律は重要です。昨年、施設庁入札談合事案をはじめとする数多くの不祥事が発生したことは誠に遺憾であります。国民の信頼と支持により成り立っている自衛隊が、その信頼を裏切るようなことはあってはなりません。国民の信頼を保ち得るように、さらに一層厳格な規律の保持を図っていく必要があります。
 第2は、防衛政策の基本など、省移行後も変えてはならないことであります。
 私は、省移行法案の説明に当たり、これまで国内や国外に対して、専守防衛や軍事大国にならないことなどの防衛政策の基本は変わらないと明言してまいりました。自衛隊の最高指揮官は国会で選ばれた内閣総理大臣であり、その指揮監督のもと、私が自衛隊を統括していきます。隊員諸君には、こうしたシビリアン・コントロールの仕組みを通じて、諸君の任務は国民の負託に基づいており、諸君の行動については国民に対して責任を負っているのだということを十分認識していただきたいと思います。
 自衛隊の良き伝統は維持していかなければなりません。服務の宣誓にある「一致団結、厳正な規律を保持し、常に徳操を養い、人格を尊重し、心身を鍛え、技能を磨き、政治的活動に関与せず、強い責任感をもって専心職務の遂行に当たり、事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に努め、もって国民の負託にこたえる」という精神の下、これまで同様、高い技能と統制のとれた実行力に裏付けられた優れたプロフェッショナリズムを発揮してほしいと思います。
 隊員諸君には、防衛省の発足にあたり、一層気を引き締めて、中央において、現場において、あるいは世界各地において、さらに一丸となって職務にまい進していただきたい。
 以上、2点を申し上げました。隊員諸君の中には、正月を返上し、困難な任務に従事している者がいることでしょう。祖国を離れ、遠く異国の地で、わが国を背負い、国民を代表して任務の完遂に努めている隊員のことを思うと、私は胸が熱くなります。
 われわれの行く道の前途は険しく、困難なものであります。われわれは、今後はさらに困難な任務を求められることも覚悟せねばなりません。しかも、それは限りなき道でもあります。われわれはその困難に立ち向かい、乗り越えていかなければなりません。防衛省の誕生は、決してゴールではなく、新たなる政策課題へのスタートであります。困難を乗り越えた先には、わが国の繁栄と国民の明るい未来があります。
 隊員諸君においては、わが国および国民の未来のため、世界の未来のため、私とともに努力していくことを本日誓っていただきたいと思います。
 最後となりますが、防衛省の今日ある姿を築いていただいた諸先輩のご努力と、志半ばにして殉職された御霊、ならびにそのご遺族に対し、心より敬意を表し、私の訓示と致します。